第10話 シチャク【ASMR】/大切な人が喜んでくれるなら

○商業施設・コスプレ衣装専門店(昼)

   #紗江、主人公と一緒に試着室に入る。

   SE カーテンを閉める音


紗江

「えっと、それじゃ……私は後ろを向いてますので。」

「先輩は着替え終わったら声をかけてくださいね」


   SE 衣擦れ音

   #紗江、主人公の背中側に立って顔を背けるが、目の前の姿見で着替える主人公をちゃっかり見ている。

   #紗江、小声で呟く。


紗江

「わっ……先輩の背中、綺麗……。」

「それに、意外とたくましいんだ……。」

「あわわ……下着が見えて……。」


「あっ……なんだかカワいいデザイン……」

「先輩、ああいうパンツが好きなのかな……」


   SEの衣擦れ音、止まる。

   #主人公、紗江が見ていることに気づき無言の抗議。


紗江

「ひゃっ! ご、ごめんなさい!」

「先輩の姿、鏡に映ってたから、つい……!」

「もうズルしません! ちゃんと目をつぶってますから!」


   #衣擦れ音、再び鳴り出す。

   #紗江、小さな声でぶつぶつと呟いている。


紗江

「……でも、目をつぶってると……。」

「これはこれでなんだかドキドキしちゃうかも……。」

「わ、私ったら何言ってるんだろ!」


「先輩は真剣に着替えてくれてるのに……。」

「私も、先輩のコスプレと真剣に向き合わなくちゃ……!」


   #衣擦れ音、止まる。


紗江

「もう、目を開けて大丈夫ですか?」

「わかりました……じゃあ、開けますね……。」

「……わぁ! フォーチュンルビーがいる!」


「背が高い先輩がコスしてくれたから、」

「ふたりの背丈の差がアニメと同じになってます……!」

「私たち、本当にフォーチュンペアになったみたい……!」


紗江

「先輩、とっても似合ってますよ!」

「レディースサイズなのに、ちゃんと着れたんですね。」

「あ……背中のチャックが閉まってない……。」


「それに、ミニスカートの丈が合ってないから……」

「ふふっ……お、お尻が……見えて……ふふふっ!」


   #紗江、手で口を抑え、笑いを必死に堪える。


紗江

「ご、ごめんなさい……つい笑ってしまって……。」

「でも、正面から見れば完璧なフォーチュンルビーです!」

「先輩……私の夢を叶えてくれてありがとうございました♪」


「それじゃ、着替えましょうか。」

「あまり長居してると、怪しまれちゃうかもですし。」

「えっと……それじゃ先輩……少し、後ろを向いててくださいね」


   #主人公、紗江に背を向けて目をつぶる。

   SE 衣擦れ音

   #紗江、小声で呟く。


紗江

「ここのデザインは傷つけないように脱いで……。」

「あ、ホックに引っかかってる……。」

「ふぅ……よかった、ちゃんと脱げた……」


「次はスカートを……」


   #しばらくして、衣擦れ音が止まる。


紗江

「先輩、もう目を開けて大丈夫ですよ。」

「無事に着替え終わりました。」

「次は、私が目をつぶってるので、遠慮なく着替えてください。」


「……先輩? どうかしましたか?」」

「先輩、なんだか怖い顔になってますよ……?」

「《自分ひとりじゃ脱げなさそうだから、手伝ってほしい……。》」


「た、大変……!」

「わかりました……私に任せてください!」


   #紗江、主人公の首に付いたチョーカーを外し始める。

   #紗江、主人公の耳元で囁く。


紗江

「えっと……チョーカーはここを外して……。」

「先輩、くすぐったくても我慢してくださいね……?」

「じっとしてなきゃダメですよ……。」


「……これで、取れました。」

「次はゆっくり手を上げて……。」

「そうです、上手ですよ……よいしょ……!」


「はぁ~……これで上半身は全部脱げましたね。」

「次はスカートを脱がないと……」


   #紗江、しゃがみこんでスカートのチャックを持つ。

   #股間のあたりから紗江の声が聞こえてくる


紗江

「うー……! なかなか硬いです……。」

「チャック、噛んじゃってるのかな……。」

「うぅー……!」


   #そのとき、試着室の外から店員が声をかけてくる。


店員

「お客さまー?」

「なにかトラブルでもございましたかー?」


   #紗江、驚いて立ち上がり、主人公と小声で話す。


紗江

「ひゃあ!?」

「店員さんが来ちゃった……ど、どうしましょう……!?」

「せ、先輩は落ち着いて! 暴れたら衣装が……!」


店員

「いかがされましたかー?」

「もし何かお手伝いできるようなことがあればー……」


   #紗江、食い気味に答える。


紗江

「い、いえ、大丈夫です! なんでもありません!」

「衣装の出来に感動してただけですので!」

「こ、このフォーチュンペアの衣装すごいですね!」


「細かな宝石のデザインも再現されてるし!」

「スカートの丈なんか、完璧にアニメ通り!」


店員

「わー、ありがとうございますー!」

「そこに気づいてくれるなんて感激ですー!」

「その衣装、私が作ったやつなんですよー!」


紗江

「わー、そうなんですか!」

「この素敵な衣装には、店員さんの愛が詰まってるんですね!」

「この衣装、ずっと着ていたいくらいです!」


店員

「どうぞどうぞ、心ゆくまで着てくださーい!」

「何かありましたら、遠慮なく言ってくださいねー!」


   #店員、満足げに去っていく。

   SE 遠ざかっていく足音


紗江

「ふぅ、よかった……。」

「なんとかバレずに済みましたね……。」

「先輩、大丈夫でしたか?」


「うふふ……お役に立ててよかったです♪」



《第11話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.3 中多紗江編』(CV・今野宏美、CV・阿澄佳奈)

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