第8話 ヒトイキ/ランチを食べながら感想を語ろう

○商業施設・フードコート(昼)

   #映画を見終わった主人公と紗江、近くの商業施設にあるフードコートにやってくる。

   SE フードコートに来ている人たちの喧騒音

   #ぐったり気味の紗江を気づかい、食事を取りに行っていた主人公が戻ってくる。

   SE テーブルに食器を置く音。


紗江

「すみません、先輩……。」

「映画館からこのフードコートまで、フラフラの私をずっと支えてくれてたのに……。」

「その上、ご飯も全部買ってきてもらっちゃって……。」


「おかげで、だいぶ元気になってきました。」

「それにしても、ホラー映画ってあんなにすごいものだったんですね……。」

「クライマックスなんて、ずっとびっくりしっぱなしでした……。」


「まさか、怪物のマミーが」

「主人公のお母さんとダブルミーニングになってたなんて……。」

「あっ……ここであんまり映画の話をしてると良くないですよね。」


「これから映画を観る人もいるでしょうから……。」

「へっ? 先輩、どうして変な顔してるんですか?」

「《あんなに怖い思いしたのに、ちゃんと周りに気を使ってるのがすごい》?」


「あはは……そうですね……でも、そういうの、どうしても気にしちゃって。」

「今日の私たちみたいに、大事なデートに来ている人たちの邪魔はしたくないですし……。」


「そ、そんな風に言わないでください! 先輩は私に無理なんてさせてません!」

「あの映画は、私も観たいって言ったんですから!」

「確かに怖くてびっくりしたけど……それも含めて、とってもすごい体験ができました。」


「私だけだったら、絶対に無理でした。先輩と一緒だからできたんです。」

「ちゃんと、忘れられない大切な思い出になりましたよ」


   #紗江、にっこりと微笑む。


紗江

「な、なんて……なんだか偉そうなこと言っちゃいました……。」

「そ、そうだ! ご飯食べましょう!」

「せっかく先輩が買ってきてくれたのに、冷めちゃったら大変です!」


「ところで、先輩におまかせしちゃいましたけど……」

「どんなお料理を注文したんですか?」

「へぇ~、『カース・オブ・マミー』のコラボメニューなんてあったんですね。」


「あ、ちゃんと料理の説明も書いてありますよ。」

「えっと……『ミイラの乾いた肌をイメージした、スパイシーなキーマカレー』」

「……ですって。」


「わぁ……この真っ赤なカレー、確かにあのマミーの肌みたいですね……。」

「でも、とってもいい匂い……えへへ、どんどんお腹空いてきちゃいました。」

「それじゃ、いただきます……!」


   SE 食事をする音(食器を使う音)

   #紗江、カレーを一口食べる。


紗江

「はむ……もぐもぐ……むっ!?」

「ひゃ、ひゃあ! ひゃらい!(辛い!)」

「しゅっごくひゃらいでしゅ~!(すっごく辛いです~!)」


「み、みじゅ! みじゅくりゃしゃい!(み、水! 水ください!)」


   #紗江、水を慌てて飲み干す


紗江

「んっ……んっ……んっ……ぷはっ……!」

「はぁ……はぁ……ふぅ~……。」

「はぁ~、びっくりした~……。」


「あっ! 先輩、そんなに心配しないでください!」

「辛くて、ちょっとびっくりしただけですから。」

「《料理の交換》? そ、それも大丈夫です!」


「むしろ、この辛さが癖になりそうで……。」

「……あっ、先輩。動かないでください」


   #紗江、主人公の口元についていたソースを指で拭き取ると、ペロッと舐める。


紗江

「ぺろっ……。」

「えへへ、これで綺麗になりました。」

「あれ? 先輩、なんだか顔が赤いですよ?」


「もしかして、そっちのお料理も辛かったんですか?」

「《意外と大胆》って、なにが……。」


   #紗江、自分の行為の大胆さにようやく気づく。


紗江

「あ、あわわわわ……!?」

「私ったら、なんてことを……!」

「せ、先輩、どうかお気になさらずに……!」


「《これも大切な思い出》……?」

「あ、あうう……そんなこと言われたら……。」

「今度は私が真っ赤になっちゃいますよぅ……」



《第9話へ続く》


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