Episode.17 課外学習(2)
囲まれてしまった。そう思った時には、男子生徒達の目に嫌な光が浮かんでいた。
「えー、と…その」
「ほら、合同研究みたいなのもありだしさ?」
嫌な知り合いでも、こういう時には探してしまうというものだろう。遠くにクラインの姿を見かけたアイラはユウカに目配せをした。
「?…ぁー、うん。分かったわ…」
秀才と呼ばれるほどではないが聡いユウカが、大きく息を吸った。
「クラインー!あなたたちも水生生物の観察をするの?」
ユウカの呼びかけに怪訝な顔をして振り返ったクラインは、囲まれている三人を見て眉をひそめた。
「だとしたらなんだい、共同研究でもしたいの?」
すぐにからかうような表情を浮かべて近づいてくるクラインとその友人を見て、男子生徒たちは舌打ちしながら去っていった。
「はぁ…よかった、近くにいてくれて……」
「それで?まさかこの僕に、男子生徒の集団を撃退させてそれで終わりなんて言わないよね?」
アイラの呟きににんまりと笑みを浮かべたクラインは、先ほど共同研究を持ちかけた時と同じような口調でアイラに語りかけた。
「あー、えっと…」
「君が差し出せるものなんてたかが知れてるだろうけどね。それこそ共同研究で構わないよ」
「で構わない、って何……」
クラインの小馬鹿にしたような口調には、どうしても慣れない。思わず不機嫌になったアイラを、ユウカが宥める。
「まあまぁ、一応助けてくれたんだし…ね?」
「…うん」
「それで?共同研究は?するの、しないの?」
催促するようなクラインの声に、再びアイラの眉が顰められる。
「…したらいいんでしょ」
「うん、せいぜい僕の足を引っ張らないでね」
思いきり眉を顰めたアイラにユウカが苦笑し、クラインは何故か嬉しそうに大笑いしてみせた。
「よろしく頼むよ、未来の七空サン」
握手をしようとしたクラインの手を跳ね除け、遊びじゃないのと顔を背ける。共同研究とは言いながら、協力する気はないようにも見えた。
「高等部に進級しても…相変わらずつれないね、君は」
「……そんなことないと思うけど」
「そんなことあるね。せめて同じ対象を研究する間くらい仲良くしてくれると助かるんだけど」
珍しくクラインに押され、アイラは大きなため息をつく。仕方なさそうな様子で差し出された手に手を重ねる。
「…仕方ないから、しばらくは」
「うん、しばらくはね」
満足気なクラインを睨み上げながら手を離すと、ひとまずは始めに組んだ三人ずつで研究対象を決めることにした。
「…って言っても、ねぇ……」
「水生生物は過去に研究し尽くされてる。でも、だからこそ楽しいんじゃないかしら?」
「先輩たちを超えるってことね……」
リオンがぼやき、ユウカが宥め、アイラが目的を明らかにして周囲を鼓舞する。共同研究はいつもの面々で「いつも通り」に始まった。
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