Episode8 世代交代(1)
創の女神スベニアは、はじめに6人の
火の女神メイアール、
水の女神フランシュ、
風の女神シュローぜ、
光の女神ミアオレス、
闇の女神イルフィア、
聖の女神ニルクレア。
7人の女神はそれぞれが世界の一部をおつくりになり、やがてそれは7の大陸からなるおおきなおおきな世界となりました。
――アストリスタ帝国史『序章』より
―♦――♦――♦――♦――♦―
進級試験も終わり、季節は巡る。
冬の刺すような冷気が和らぎ、春の綻ぶような日差しが学園生たちを照らす。冬の間眠っていた生命は再び目を覚まし、ある者は新しい出会いを迎え、またある者は別れに涙を流す。
――卒業の季節が近づいていた。
―♦――♦――♦――♦――♦―
例年なら卒業式の準備はもう少し暖かくなった頃に始まるが、今年はまだ雪も溶け切らぬうちから学園中が慌ただしく準備に追われていた。
その原因は「メイシャ・リオレンタ」という人物が高等部3年に所属していることにある。
学園理事長の娘であり、次期七空【サダルメリク】にも任命されている彼女の卒業を例年通りの式で終わらせては学園の威信に関わるという学園長たちの判断によるものだった。
無論、その準備には生徒会メンバーであるアイラやバーナードも巻き込まれる。教師だけでは手が足りないのだ。
「バーニー、そっちの準備はどんな感じ?」
アイラのどことなく心配げな声がバーナードの耳に届き、それに反応して天井に飾りをつけていたバーナードが振り返る。
「もうちょっとでここは終わるから、降りた時に危なくねえところにいろよ」
「…ん、わかった」
風魔法で自らの身を浮かび上がらせながら作業をしているバーナードの真下にいたアイラがパタパタと足音を立てて避けたのとほぼ同時に、バーナードが地面に降りる。
「お疲れ様ー!ごめんなさいね、手伝わせちゃって」
女性教師が頃合いを見計らって2人に近づき告げると、アイラとバーナードは揃って人当たりのいい笑みを浮かべた。
「全然平気ですよ。今年の卒業式が大掛かりなのは予想できてましたから」
「勉強は来年の始めの分まで終わってるので気にしないでください」
アイラのその言葉に感心したような表情を浮かべた彼女は、バーナードの方に向き直ると
「レイニア君も…その、もう少し勉学もがんばりましょうね」
――と告げたのだった。
「留年しない程度にはできてるからいいんですー」
「…私が教えてるからだけどね」
教師はそんな2人のやり取りにクスクスと笑うと、思い出したように懐から小さな包みを取り出した。
「これ、頑張ってくれてるからご褒美代わりにどうぞ。本当はよくないんだけれどね……」
「わ……!これ、毎日すっごく並んでるって噂の…」
包みの中をちらっと覗いたアイラがそう歓声をあげると、バーナードも興味を持ったようだ。
「これ、俺の友達が自慢げに見せてきたやつか…食わせてくれなかったけど」
中に入っていたのは帝都で流行りの焼き菓子だった。小さいがバターの香りがふわりと漂い、食欲を刺激する。それを大切にポケットの中にしまった2人の作業は、それまでと比べ物にならないほど早く進んだとか。
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