Episode7 試練の秋
秋も中頃を過ぎ、人々が実りに喜び歌い踊る季節。リオレンタでは進級に関わる重要な試験が行われる。そしてその順位は各棟の廊下に張り出され、生徒たちはそれを見て一喜一憂するのだ。
「アイラ、またいっぱい一位じゃん!私なんかほぼ最下位なのにぃ〜……」
「リオンは努力しなさすぎよ。次からちゃんと教えてもらいなさい」
元々あまり頭の良くないリオンと、地頭はそれなりにいいユウカ。そして、努力の天才アイラ。ユウカとアイラの間はともかく、リオンと二人の間には大きな差が存在する。
「…でも、私も今回は前より低かったから……」
アイラがリオンを慰めるように言えば、斜め後ろから皮肉な声が聞こえてきた。
「そのようだねぇ、アイラさぁん」
もう慣れっこなのだが、アイラは彼が登場するたびにため息をつく癖がどうしても抜けない。
「……これはこれは。どうもこんにちは、クライン・ドリクネス」
わざとらしく恭しい挨拶をすれば、クラインはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「どうしたんだい、アイラさん。算術の順位は僕とこぉんなに差がついてしまって……天才が聞いて呆れるね」
妙に高慢なクラインに、アイラは口を閉ざしたまま順位の書かれた紙を見つめている。
「おや、返す言葉もないかい?負けて悔しくて歯を食いしばっているのかな?」
「……いいえ?あなたが算術以外で私に勝てている科目を探していたの。だけどどうやら…『ない』みたい」
「はっ、そんなわけ……」
そう言われて、クラインはようやく自身の順位に目を向ける。アイラの言葉通り、算術以外ではアイラに勝てていない。それどころか歴史と基礎魔法論理ではユウカにすら負けているのだ。
「…嘘だろ、この僕が」
「嘘じゃない。というか…そもそも、私は誰かと競うために勉強してるわけじゃないし、それはユウカも一緒。確かに算術は苦手だけど、それでも実用には問題のない程度だから…歴史は実用レベルにも達してないクラインにどうこう言われる筋合いはないよ」
そこまで言ってクラインに背を向けたアイラに向かって、クラインは捨て台詞を吐く。
「…こ、今回は僕の負けだよ。だけどね、次はこうはいかない。算術も、文学も、歴史も、全部僕が勝つ。楽しみにしているといいよ」
それに応えたのは、アイラでもリオンでもユウカでもなかった。
「おー、それは楽しみだな。俺に勉強教える奴相手にどうやって勝つのか疑問だが」
たまたま通りがかったバーナードが、その言葉を聞いていたのだった。
「バーニーはもうちょっとちゃんと授業聞いた方がいいよ……それで、なんでここに?」
問えば、当たり前のように返ってきた言葉は
「ん?あぁ、なんとなくアイラが変なのに絡まれてる気がしてな」
などという、なんとも曖昧なものだった。
「変なのって、僕のことを言って…あ、無視はないだろう!待ちたまえよレイニア君!」
悔しげなクラインの声を背に、いつもの4人が廊下を歩き去っていく。どうやら、今年の進級試験はアイラの圧勝に終わったようだった。
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