第3話 クールって?②


「イージスに戻るのでこの車に乗ってください」


パトカーのサイレンの部分がなくなっただけのような車。


イージスに戻ると言われても、イージスがなんなのか分からない…


ってか、大体この人達が何者なのかも知らない。


小さい頃から言われてたじゃん。


『知らない人にはついて行っちゃダメ!』って。


今、そういう状況では?


「藤堂先輩…?」


暁という男は不思議そうな顔をして俺の顔を覗きこんできた。


こうなったら…!


「ちょっと、一瞬すみません」


「あ、先輩!?」


少し離れてはいたがいかにも真面目そうで信頼できそうな人の所に俺は行った。


「す、すみません…」


「はい…?」


メガネをかけた優しさが滲み出ている女の人に聞いた。


「あの人達って誰ですか?」


「えっ」


驚いている。


ちょー、驚いている。


宇宙人に会った時くらい驚いてる。


宇宙人に会ったことないからよく分からんが…


「イージスっていう血毒者から守ってくれる人達です」


血毒者ってあの化け物のことだよな…?


それから守ってくれるってことは信頼していいってこと、だよ、な?


「ありがとうございます。」


「いえ、全然。」


マジもんのいい人だったわ。


今度会ったら大感謝祭でも開こうかな。


俺は駆け足で暁という男たちの元に戻った。


「すみません、おまたせしました。」


「どこに行ってたんですか?」


名前を知らない男がキッと睨んできた。


「いや、別に…」


イージスを疑ってたなんて言えないだろ。


こいつらのことはよく知らないが、市民を守ってくれてる奴らなんだ。


信頼してなかったとか口が裂けても言えない。


ブーン


車に揺られ10分。


運転手は名前を知らない男。


助手席には暁という男。


後ろの席には俺と凪という女。


それにしても美人だなー。


目がクリクリだし、鼻筋はよく通ってる。


顔は女優レベルで小さい。


例えば、安〇祐実。


よく見たら、安○祐実が髪の毛切った時に似てないか?


こんなにボブが似合う人は他にいない。


あぁ、ホンマに可愛ええ。


「あの、何でしょうか…?」


ジロジロ見ていたのがバレた。


そりゃそうだ。


あんなに見てたらね。


「い、いや可愛いなーと思って。」


「ひゃい!?」


「はぁーーー!?」


「えーーー!?」


俺以外の3人が声を揃えて驚いていた。


「ど、どうしたんですか、ホントに…」


暁という男が俺のことを心配するような顔で見た。


「やっぱり記憶喪失なんだ。」


暁は1人で勝手に納得し始めた。


凪という女は顔が真っ赤。


その顔でさえ可愛い。


すごい絵になるわ。


「着きました」


駐車場にバックして入れた。


「お疲れ…さまです?」


「敬語気持ちわりぃんでやめてください。」と名前を知らない男が言った。


気持ち悪い…


「はい、辞めます…」


ジロっ


睨まれて焦った。


「い、やあの、辞めるわーー!っはハハッー」


誤魔化した。


恥ずかしい。


恥ずかしすぎる。


顔、絶てぇまっかだわ。


紅の方の真紅(まっか)ね。


俺は地上を泳いでいるサメなのか!?


とツッコミたい。


それくらい驚いた顔をしている、3人。


今日、何回目だろう…この3人が驚いている顔を見るのは…


「ま、まぁとにかく降りましょう。」


暁という男がそう言った。


気まづい空気を変えようと…!!?


さ、さすが俺の後輩!!ではないけど…!


そういや、俺って藤堂さんとか言われてるけど、そいつにそんな顔似てんのか?


そしたらとんでもないイケメンだぞ!!


なぜなら俺は"ハンサム川井"と呼ばれていたからなー。


ガチャ


車から降りて車窓で自分の顔を確認した。


「おぎゃーーーーーーー!」


静かすぎる外に俺の声が響き渡った。

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