第2話 クールって?①

ドタドタドタ


家の中に誰かが入ってくる音が聞こえた。


しかも、1人じゃない。


お、お願いだ!


「俺はここにいる!助けてくれ!」


リビングのドアが開いた。


黒い戦闘服のようなものを体に纏った4人がこちらを見た。


「血毒者(ちどくしゃ)1体!」


男の人がペンのようなものに向かってそう言った。


誰かと繋がってる…?


繋がってても、繋がってなくてもどうでもいい!


「助けてくれ!」


「あれって…」


「藤堂(とうどう)先輩?」


俺の体が無意識に藤堂先輩と呼んだ男の方に向いた。


「凪(なぎ)、その血毒者を頼んだ」


「了解しました」


凪と呼ばれた女は右手に持った注射器を化け物にぶっ刺した。


「藤堂さん、ですよね?」


男が俺の元に駆け寄ってきた。


藤堂さん?


誰だよ、それ。


「ウォーーーーーーーーーー!!」


体がビクッとなった。


化け物が苦しそうに叫び始めた。


「な、な、なな何をしたん、だよ…」


「え…?注射器から血毒者の体内に毒を送り込んだんっすよ」


当たり前でしょと言わんばかりの顔をした。


「…」


意味わかんねぇよ。


なんだよ、血毒者って。


ドスッ


化け物はその場に勢いよく倒れた。


ここからでも分かる。


体が人間にしては大きすぎる。


そして、今にも血管は引きちぎれそうだ。


顔はもう滅茶苦茶だ。


こんなの、ゾンビと変わらねぇよ。


「藤堂先輩!」


「誰だよ!藤堂って!」


俺は今、感情がぐちゃぐちゃなんだよ。


あーもう!イライラするぜ。


「暁(あかつき)、藤堂先輩は記憶喪失なんじゃねぇのか?」


「記憶、喪失…?」


暁と呼ばれた男は目をまん丸にさせて言った。


「暁先輩、とりあえずここから出ましょう。後は警察に任せて」


「あ、あぁ、そうだな…」


暁という男はすごく辛そうな顔をした。


なんだよ、そんな人生終わったような顔(つら)しやがって。


「立てますか?藤堂先輩」


「立てる…」


ってか、死んでねぇなら普通は病院だよな?


そう考えると、ここはホントにどこなんだよ。


今さっきまで腰が抜けて立てなかったが今はすんなりと立てた。


そして、俺は暁という男について行った。


その後ろには凪という女と、まだ名前を知らない男がいた。


ガチャ


玄関のドアを開けた。


ヒューヒュー


風が吹いていた。


少し肌寒いくらいに。


立ち入り禁止と書かれたテープをくぐり抜けた。


家の前には数十人の警察と事件が気になって集まっている人でいっぱいだった。


「視線痛すぎ…」


死んだかと思って目を開けた一発目からこれって。


犯罪者になった気分だわ。


間違いなく人生で1番疲れた、マジで。


「藤堂先輩!ちゃんとついてきてください」


「あ、はーい、すんません」


俺がホントに先輩なら後輩に注意される俺って…


「はぁー」


そりゃため息の一つや二つつきたくもなるでしょうよ。


「藤堂先輩!」


次は違う後輩に。


俺ってこんなに情けなかったけ?


自分の記憶を探った。


あー、あったわ。


飛行機戦隊ジェットマンを見逃してしまったという失態。


事故に遭った理由がそれと言っても過言ではない。


「藤堂先輩!!!」


もう!!と言いたげな顔で暁という男は見てきた。


「わぁってる!」


イライラが溜まっているせいで八つ当たりっぽく言葉を放った。


「すみません、道を開けてください!」


暁という男は何度もそう言いながら人混みを掻き分けた。


「すみませんが、藤堂さん」


「は、はい…」


俺は藤堂ではないが体が勝手に反応してしまう。

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