第23話 夜が明けた
ユートアスラントに着くと、すぐに走った。睡眠中の夢の中なので徹夜による疲れも一切感じず、とにかく走ってすぐにでもユミラに会いたかった。
いつもの場所にユミラはいた。
「セージ、どうしたの? そんなに慌てて」
ユミラはいつもよりも、非常に慌てた様子で走ってきた清二に驚いていた。
「ユミラ、この世界はもうすぐ変わるんだ! 今日から新しい一日が始まるんだ」
清二はそれを一刻も早く伝えたかった。つにここが動き出す未来が訪れる、と。
「どういうこと? 世界が変わるって、新しい一日って何?」
ユミラは清二の言ってる意味がいまいちわかってなかった。
「すぐにシェルターのみんなに伝えて! 皆、地上に出るんだ! 早く!」
とにかく清二は急いだ。一秒でも早く世界が変わる瞬間を見たいと。
清二はシェルター内に入ると、すぐに住民達に地上に出るようにと伝えた。
「早く、みなさん地上に出てください! 世界が動き始めたんです!」
地上の闇夜が明ける瞬間を見て欲しかった。世界が前に進む瞬間を。
「地上で何かあるみたいだぞ! 皆、行ってみよう!」と住民が騒ぐ
清二の台詞を頼りに住民達はランプを持って、外に出る準備を始めた。
これまでも住民達は清二の言葉で希望を持てた。そんな清二が言うのだから間違いないと。
この世界が変わる瞬間を見てみたい、と住民達は全員総出で外に出る準備をした。
皆が地上に出た時、やはりそこはまだ真っ暗だった。
夜の中、住民達が持っているランプの明かりだけが周囲を照らしていた。
「セージさん、一体何が始まるっていうんだい?」
ある者は何が変わるのかと想像ができず戸惑い、ある者は世界が変わる瞬間と聞き、期待を寄せていた。ある者は、地上の変化を見るのが楽しみだと。
「いよいよだ……」
清二は、空を見た。
「セージ……。これから何が起こるって言うの? なんだかドキドキする……」
ユミラが清二の傍にやってきた。何が起こるかわからないことに、緊張しているのだ。
「大丈夫、これからいいことがきっと起こるはずだから」
と清二は励ました。
「でも…‥なんだか、セージ、ちょっと不安だから、手繋いでいい?」
「えっ」
ユミラはこれから何が起きるかわからず、不安そうだった。それで、手を握ってくれと、安心していたいとお願いした。
彼女はこれから素敵な未来を見るというのに、何か不安を感じるのだろう。
「そ、そんな、大丈夫だって」
清二はユミラを安心させたがったが。それよりもその願いに緊張した。なぜこんな状況で手を握ってほしいのだろうか。
「お願い、繋いで」
ここはユミラの言う通りにしよう、と清二は勇気を出して手を差し出す。
「いいよ。ほら」
握ったユミラの手は指が細く、あたたかかった。女性の手に、ドキドキした感情があった。
「ほら、みんな、東の方角を見て! 夜が明けるんだ!」
とうとう世界が変わる第一歩が始まる。夜明けのときだ。
清二達は東を見た。東の方角から陽が昇り始めた。真っ暗な中を一筋の光が差した、
清二の作ったストーリーの通りに世界が変化する。
「おお、これは……!」
住民達が声を挙げる。
東の方角から太陽の光が顔を出した。星は消え、真っ黒な闇が白く染まり、空全体が黒に白の絵具を塗っていくかのように明るくなってくる。徐々に明るくなってきた。
「おお、光が……! 空がだんだん明るくなっていく!」
「これが本で見た『太陽』ってやつなのか!? あんなの御伽噺の中だけだと思ってたぜ!」
「地上の闇が晴れていく! 奇跡だ!」
住民達はここで初めて見た太陽に感嘆の声を漏らす。
「綺麗、真っ暗だったのに、明るい!」
「空にランプがついているわけでもないのに、光だ! 凄い」
大人達同様、子供達もはしゃぎだす。
闇夜が明るくなってきたことに、住民達はまぶしそうだ。
「ああ、綺麗だ……なんて、綺麗な……」
太陽の光が住民達を一人一人を照らしていく。光が当たったことにより、住民達の背後に黒い影が大きくなっていく。
「はあ、身体が……あたたかい」
「これが、太陽の光」
それぞれが微笑みながら、次第に光を身体に浴びるように、手を広げた。
光を浴びた住民が、まるで光に飲み込まれるかのように、真っ白になった。
「ああ、これが幸せ」
住民達は微笑みながら、幸せそうに一人一人光に包まれていく。
その時だ。
光に飲み込まれるかのように、全身が真っ白になり影がスーッと消えていく。
そして、太陽の光に包まれた人間は、もうそこに姿がなかった。
まるで、この世に未練を残した霊が満足して成仏していくかのように。
「え……?」
清二は、今見ていた人物が消えたのを見た。何が起きたのかわからなかった。
そして、異変は次々と他の住民にも起きていく。
「これが、本当の意味での希望の光なんだね……」
「これを見ることができて、本当に幸せだ……」
「まさに、この瞬間まで生きていてよかった……」
住民が幸せそうな穏やかな表情で、光に包み込まれ、また一人、一人と姿が消えていく。
「ちょっと、待って、何が起きている!?」
清二はその状況が何かわからなかった。
おかしい、光を浴びた住民達が消えてゆく。同じように、他の住民達も続々と消えていく。
「待って、ねえ、待って、どこへ行ったの!?」
清二は慌てて大声で叫ぶが、住民が消えていくことが変わらない。
住民達が一人一人と消えていく中、それを見て、ユミラは言った。
「私も、もうすぐ消えちゃうのね」
清二は手を繋いでいたはずの隣にいるユミラを見た。
まるでユミラも自身の消滅をわかっているかのように、そう呟いた。
「どういうことだ!? だって、僕はちゃんと小説を完成させて未来を作ったぞ!」
この世界の物語は完成させた。そうすればこの世界の未来が作られたことにより、新しい未来が訪れるはずだった。
とうとう時が止まったままだったユートアスラントの歴史が動き出す、と。
「なんだっていうんだ!? なんでみんな消えちゃうんだ!?」
清二は思考停止した。あまりの突然のことに頭がついていかない。
あの小説を完成させれば、このユートアスラントは時間が動き出して、前へ進む。それによりこの世界が救われる方向へと進むのだと思っていた。
「なんで、なんで……」
ふと、清二はコンピュータールームで見たあの文字を思い出した
「コノセカイヲツクリシモノガミライヲツクレバコノセカイハカワルダロウ」
その意味の通り、この世界を作った清二が未来を作った。それで世界が変わると。
「変わる……変わる……?」
清二はその意味を、自分がこの世界を舞台とした小説を完成させればこの世界の未来が作られ、世界が変わると思っていた。
「変わる、なんだろ? じゃあ未来を作ったんだからこれでここは変わるはずだったのに」
そして、ふと思った。
「未来を作れば、この世界は変わるだろう、変わる……変わる……?」
その意味をよく考えてみる。
「世界が変わる、その意味は、変わる……」
「変わる」とは変化するという意味である。清二はこのユートアスラントの未来のストーリーを作ることで未来が作られ、そこから時が動き出すのだと思っていた。
清二はそこでふと、クラスメイトの台詞がなぜか頭をよぎった。
「今度生物の先生、別の人に代わるんだってな」
学校で聞いたクラスメイトの発言。新しい先生が来るというあそこ。それを思い出した。
「カワル」がカタカナだったから「変わる」と思っていた、
「変わる、は代わる、ともとれる……!?」
しかし、「かわる」という言葉は、変化する、以外にも「そこにあったものが別のものになる」「入れ替わる」という意味の「かわる」にもなるのだ。
しかし、今。「かわる」ということが住民が消えていく、その意味は。
清二はある考えにたどり着く。
「まさか、このままこの世界が変わるんじゃなくて、このユートアスラントの世界線そのものが僕が完成した世界に代わるって意味なのか!?」
清二は以前、創作に役に立つという理由でSFについての知識を見たことがある。
それは世界には複数の時間軸があり、「もしもここでこうなったら未来がこうなったかもしれない」という人物が一人が過ごす一つの世界以外での「もしもあそこでここが変わったら」という分かれ道になる、それぞれの違う世界線という概念があるという。
それが、SFでおなじみの「パラレルワールド」という概念だ。
そんなものはSF等の世界だけであって、ここには関係ないと思っていた。
しかし、ここは清二がかつて作ろうとしていた世界であり、清二にとっては夢の中、つまりここそのものがファンタジーの中だということだ。それならば、そういうこともありえる。
「じゃあ、僕があの小説を完成させたから、世界そのものが僕の作った世界に代わるってことなのか?」
ノートに書かれていた清二がかつて作ろうとしたそのストーリーは完成した。
すると、かつて清二が子供の頃に作ろうとしていたその小説の世界がまさに今のユートアスラントであって、清二が完成させた小説の世界は「清二が完成させた小説の世界」なのだ。
作りかけだったあの小説を完成させたということは、あのノートの小説の世界線が出来上がるということで、この「清二が書きかけにしていた小説」の世界は消え、「完成させたあの小説」の世界が出来上がってここからその世界と代わっていくというわけだったのかもしれない。
「じゃあ、僕が今までやってたことは、この世界を消すということだったのか!?」
清二が完成させたユートアスラントの歴史が始まるということで、清二が今会っているユミラ達の世界は消える。清二が原稿を完成させたことでこの世界の未来はできた。その未来を成す為の世界になるということだった。
清二が完成させた未来になるユートアスラントが出来るのだ。
「違う、僕はこの世界を救いたかったんだ! だからあの小説を完成させようとしていた! だからこの世界の未来ができるはずだった!」
清二はこの世界を救うために一生懸命続きを考えた、すべてはこの世界を救うためだった
この世界で夜が明ける、朝が来るということは、この「夜のまま時間が止まったユートアスラントは消滅する」ということだった。
それが目の前で起きていることなのだろう。この世界が代わることで、ここにいる今の世界線の住民達は消滅する。
「じゃあ、ユミラも、消えちゃうのか?」
目の前で住民が一人、また一人と消滅していき、その太陽の光はついにユミラの元へたどり着くところだった。
まるで光はこの世界を包み込むように飲み込んでいく。
「セージ……」
今に太陽の光がユミラの傍にも照らし始めた。
ユミラは、やはり他の住民達のように穏やかな表情だった。これから自分が消えていくということを感じさせないほどに。
「あなたに、伝えたいことがあるの」
ユミラのその言葉は、まるで最期の言葉のようにも思えた。
「言わないで、言わないでくれ!」
まるでこれが最後かのような発言を聞くのは嫌だった。きっと、彼女も今から消えると。
「お願い、聞いて」
ユミラは清二を握っている手にぎゅっと力を入れた。それは彼女の本当の想いを伝えたい真剣な行動だと思った。
「私達は、ずっと絶望の中を生きていた。救いもない、誰も助けてくれないあの場所で。だけどあなたがここに来て、ああ言ってくれたから、あなたのおかげでみんな生きる希望が見えた。皆、あなたに感謝していたわ。あなたのおかげで生きていてよかったと思った。こんな世界でも、希望を持つってことは素晴らしいことなんだって」
ユミラは清二の手を優しく両手で握る。それはユミラのぬくもりを感じた。
「私は、あなたと友達になれてよかった。ここに来てくれてありがとう」
そのユミラの言葉に、清二はとうとう涙を流し始めた。
彼女は自分が消えるとなっても自分の運命を受け入れているという事実も悲しかった・
「ユミラ……本当はね、本当はね」
清二は涙を流しながら、とうとうそれを口にした。もう言わずにはいられなかった。
「僕が、僕がこの世界を作ったんだ! 僕が、君たちを作ったんだ! ここは僕が創り出そうとしていた小説の中の世界で、君たちはその登場人物として生まれたんだ」
もう我慢できなかった。この世界を作ったのが清二自身だったことに。
「僕は物語を作ろうとして、その盛り上げの為に君たちが苦しい想いをする設定を作ってしまった。だから君たちは辛い毎日を過ごすことになった。それなのに、僕が、話を作るのを投げ出したから。だかたこの世界の時間は止まったままだったんだ!」
清二にとっては自分の作りたかった物語の中だけの話だったが、こうしてその世界を歩いてみて、その世界の住民がどんな想いで生きているかを知れた。
自分が作ろうとした小説は、結果的に登場人物を不幸にしていただけだと。
「君たちを不幸にしてしまったのは僕なんだ! こんな、こんな苦しい世界を作って、その世界のことなんて考えなくて……ごめんね、ごめんね、こんな辛い人生にして」
清二は涙をぼろぼろに流しながら、全てを告白した。もう全て我慢できなかった。
「セージ……」
それを見たユミラは、両手で清二の手をより強く握った。
ユミラは驚く様子もなく、なぜか微笑んでいた。
「そうだったのね。私達は、あなたが作った物語の中の存在だった」
この世界が清二によって作られた世界で、自分達はその中に出てくる登場人物として生み出されていただけということも、これから自分が消滅するというのに、悲しそうな顔ですらなかった。
「じゃあ、セージは本当の意味で私達にとっての神様だったのね」
神、と言われて清二は自分がこの世界においてある意味そういった立場だったと思い出した。
「みんなのことを励まして、希望を持たせてくれた、それは本当に清二は神様のような人だと、みんな思ってた。みんな、あなたのことを、本当に希望をくれた神様だとも思ってた」
シェルターの住民達が言っていた「セージさんはまるで俺達の神様だ」という台詞を。
あれはある意味本当だったのかもしれない。清二こそがこの世界の神だった、と。
「この世界を作ってくれてありがとう、私達を生み出してくれてありがとう」
ユミラは、清二へと感謝の想いを告げた。清二にとってはその感情は、不思議で。
「なんで……怒らないの? だって僕が君たちを辛い想いをするように作ったんだよ? 皆、いつ死ぬかずっと怯えなきゃいけない日々の辛い想いをさせちゃったんだよ? そして、最後は消えちゃうんだよ?」
清二はユミラが怒ると思っていた。清二がこんな世界を作ったのせいで、自分達がこんな想いをすることになったと。
それなら「もっと幸福な人生を送れる世界にしてほしかった」だとか「こんな世界を作って、お前のせいだ」とののしられてもおかしくない。こんな世界で彼らを生み出したのだから。
ところが、ユミラの表情はどこか幸せそうだった。
「セージ、私達はあなたの作ったものだとしても、今日まで生きてこれたわ。生きて、シェルターのみんなと過ごして、働いて、苦しい想いもしたけれど、ここまで生きていた生活があった。それは私達が生まれたからなの。だから苦しくても、今まで生きている経験を味わえたわ。そして私もあなたに出会った」
生まれなければそのまま人は意思を持つことはできない「生きているからこそ得られる感情」とは意思を持った人々だけなのだ、そういう意味だと。
「あなたが現れたおかげで、私達は最後に希望を持てたの。生きていれば、いいこともあるって。ああやって、みんなに希望を持たせてくれたから、みんな、幸せな気持ちでこの瞬間を見ることができた。ここまで導いてくれたの」
ユミラはどこまでも優しい表情だった。
シェルターの子供達の「姉」としてふるまっていたかのように。
「あのまま死に絶えていくよりも、こうして幸せな形で消えていくなら、それこそ私達にとっての最高の終わり方だったわ。みんな、こうして最後は幸せな感情だったから」
「終わりだなんて……。言わないでくれよ。本当なら、僕はもっと君たちを幸せにするつもりでやってたんだ」
結局、清二がやっていたことは、最後までこの世界の住民をコマとして扱っていただけだったのかもしれない。
勝手に世界を作っておいて、彼らを生み出し、幸せにするといいながら、最後は消してしまう。これだって作者のエゴだ。
「僕は本当に、君たちを救いたかったんだ! だから、この世界の物語を完成させようとしたんだ。だから、太陽が上がって、この世界の時間が動き出したことで、この世界は救われるはずだったんだ。それがこの世界線の君たちを消滅させることになるなんて」
自分がやってきたことは、正しいと思っていたはずなのに、それがこうなる結果だったことに、もう悲しい以上の感情だった。
「僕はこの世界の続きの物語の小説を完成させたんだ。未来を作ったんだ。だから君たちは歴史が動き出したその世界で幸せになるはずだった。ぼくはこの世界をちゃんと完成させたから。君たちが幸せに暮らせるように。でもそれが実際はこうしてこの世界を消して新しい世界を作り上げたことになるなんて……」
清二はもう、我慢することも忘れてユミラに本音をを言った。
自分自身が創り出した物語の中の登場人物に作者が弱音を吐くだなんて前代未聞だ。
しかし、それを聞いてもなお、ユミラの表情は変わらなかった。
「セージ、それなら……じゃあ私達は消えるんじゃなわ」
ユミラはそう言った。
消えるのではない? 現に目の前のユミラは消えようとしているというのに。
「それってどういう……」
今ここで消滅せずにすむということなのだろうか?
しかし先ほどから目の前で次々に消えていく住民達を見ていると、そうは思えない。
「あのね」
ユミラは、清二へと優しく語り掛ける。
「私達があなたの作ったお話の世界で、あなたがこの世界の未来を作ったということは」
そして、ユミラは言う。
「きっとあなたが新しく作った世界で生まれ変わるの。今の私は消えても、きっとあなたが新しく作った世界では、幸せになるんだわ」
「え?」
ユミラの言う意味が、一瞬理解できなかった。どういうことなのかと。
しかし、聞き返す間もなく、次第に太陽の光は、ユミラを包み込もうとしていた。
「ああ、私も、とうとうここで、消えるのね」
ユミラは自分がここで最後を迎える、ということを理解した。
そして、言う。
「私は、セージに出会えてよかったわ」
太陽の光は、ユミラを包み込むように、姿を照らしていく。
すると、ユミラの顔が光により、徐々に照らされ、はっきりと見えていく。
「あなたはまさしく、私達にとっては神様そのものだった」
初めて陽の光で見えた彼女の顔は、これまでにない微笑みだった。
幸福な気持ちのまま最後を迎えるかのように、まさにその笑顔は、それはもう、美しい、まるで女神のようだった
「本当に、ありがとう」
これから自分が消えようとしている中、ユミラは清二に精一杯の笑顔を見せたのだ。
その表情は言葉をなくすほど美しかった。
「ねえ、待ってよ」
手に握ったユミラの手が、光で白く包まれ、どんどん重さと体温が消えていく感覚がわかった。本当に消滅を迎えるのだと。
「清二、私達は消えることが悲しいことじゃないの」
これから消えるというところで、ユミラは最後の言葉を発した。
「きっと、あなたが作った新しい世界では私達は幸せになる」
ユミラはそっと呟いた。
「あ……、待って」
ユミラの手を掴もうとしても、彼女はもう見えなくなっていた
そして、とうとう光はユミラの全身を包み込んだ。陽の光は彼女を包み込んこみ、その光は大地や空ごと世界を飲み込んでいった。
まるで光はこの世界を丸ごと包み込むように全てを世界を飲み込んでいった
ただ一人、清二だけがこの空間に取り残されて。
清二の視界は光が包みこんだ真っ白な世界だけだった。
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