第15話 緊急事態【side.エクトル】

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 なんてことだ……!こんなことが起こりうるなんて……!くそ、屋敷の広さが恨めしい!!いち早くお伝えしなくてはならないというのに!!


 俺は父上の執務室をノックもせずに開け、出せる限りの大声で緊急報告をした。


「父上!!一大事です!!今すぐ玄関先までお越しください!!」


「な、なんだ?落ち着けエクトル、何があったのだ。今は戦時中ではない。バタバタと走り回って、怒鳴って報告することなど片手で数えるほども無いはずだぞ」


 呑気に黒茶コーヒーを啜ってる場合かああ!?……い、いや、まて、落ち着け。冷静に報告せねば、伝わるものも伝わらない。


「……セーレが学園に通ってから、どれくらいが経ちますか?」


「ちょうど2ヶ月だな。初めはバタバタしていたようだが、思っていたよりも順調に通えているようで何よりだ。で、それがどうかしたか?」


「そのセーレが……友人を我が家へ招待したのです!!しかもオフレ子爵の長女を!!今、玄関先で二人が談笑しています!!」


「な、なにぃ!?」


 慌てた父上は俺を払い除けてまで駆け出したが、余りにも慌てたせいか階段で転げ落ちそうになっていた。だが気持ちはわかる。まさかあのセーレに、屋敷へ招待するほどに親しい友人が出来たとは。


 しかもそれが、あのオフレ子爵の娘だなどと……!セーレめ、お前は平凡な学園生活を送れないのか!?




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