第4話人気俳優が暴漢から女子高生を助ける

あの後、伊瀬は約半日かけて学校内を回って生徒たちと交流したのだった…


現在、日が完全に暮れて、月光が照らすようになっていた。

もうすぐ、1ヶ月後にはクリスマスがやってくる季節ということもあってか肌寒い夜が続いていた。


そんな寒い中、私はひどく落ち込んだ状態で自宅に向かって歩いていた。


というもの、お昼の伊瀬くんへの質問で普通に考えたら分かるくらい馬鹿な質問をしてしまったからだ……。


あの後、マネージャーの玲奈さんに注意されて、あの伊瀬くんにフォローされたけど、あの後から私は後悔の念に苛まれていた……。


(ああ、なんであんなことを言ってしまったのかなぁァ。私のバカ、あんぽんたん!

超がつくほど好きだけど、私はあくまでファンでしかないのに……テレビで彼女の有無を聞くなんて……)


そんなことを考えていたからだろうか、いつもよりも歩くスピードが遅くて、いつもとは違う人気の無い道を歩いていることに気づかなかったのは……。



そうして、歩いていると前から来た2人組みの見た目がチャラそうな男性が、私の前で止まって、


「おっ!君めっちゃ可愛いじゃん。

俺たちと楽しいことしようぜ?」


「いいねいいね。これでも俺たち経験豊富だからすぐ気持ちよくできるからよ。」


その時になって初めて私は、自分が人気の無い道を歩いていたことに気づいた。


「いや……結構ですから……。」


「なに、遠慮すんなって。ちょっとヤレばすぐ楽しくなるからよ。」


「俺たちに任せて、な?」


そう言って男性2人は唯花の手を強引に引こうとしてきた。


「いや………やめて……助けて……」

私は泣きながらも必死に腕を振りほどこうと暴れる。


すると、男性の1人が

「ちっ、暴れるなよ!」

と言って大きく手を挙げて、私の頬に向かって振り下ろす。


私は、叩かれる恐怖で思わず目をつぶってしまう。







(…………………あれ?)


いつまでたってもその痛みがくることはなかった。

私は恐る恐る目を開けると、その男性の腕が頬の近くで止まっていた。


よくみると別の手がその男性の腕を掴んで止めていた……。


「なんだよっ!おまえは!」

もう1人の男性が声を荒らげながら言う。



するとちょうど私の後ろから

「俺の彼女に手を出してんじゃねぇ!

さっさとここから消え失せろ!」


今までに聞いた事のないその声の迫力に男2人は腰を抜かしたかのようなへっぴり腰でその場から逃げて行った。


「助けていただいてありがとうござ……」


私は振り返りながら、助けて貰ったお礼を言おうとして固まった………。




なにせ、先程まで学校にいたはずの伊瀬くんが目の前に立っていたのだから……。


「今日は、君と本当によく会うね!

怪我はないかい?」


「あっ……えっ……と…あ、はい。

おかげさまで助かりました。」


「それなら良かったよ。

君の家ここの近く?」


「………ここから歩いて10分くらいです」


「おっ!マジで。俺の家もここから近いよ。帰るついでに家まで送るよ。」


「ありがとうございます……………

ん?え!?家まで……無理、ムリです。そこまでしていただくわけには……」


と言おうとした時、私たちに猛烈なスピードで追いかけてくる人影がいた。

「もう!!急に車から飛び出したりして…、追いかける身にもなってよ!」


息をあがられた状態の玲奈さんが文句をつけながら来たのだった。


「いいところに来たね、玲奈。ちょうど月島さんを自宅まで送るから車頼む!」


「………えぇ!?そんな、してもらうなんて……。」


「あ、あなたは今日の収録の時に注意した子じゃない。まあ、たしかに賢人くんと2人で夜道を歩かせるのはアウトだから……いいわ車でお家まで送るわ。」


(なんか、私抜きで勝手に話が進んでいるんですけど…………)

「あ、はい。ありがとうございます。」

もう、どうにでもなれって気持ちで答える。


「じゃあそういうことで……、そういえば玲奈、車はどうしたの?」


「はあぁ……賢人くんが急に車から飛び出して裏道に走り出したんじゃない!

ちかくの停めれそうなところに車置いてきたわよ。」


「あはは、ごめんごめん。じゃあ早いところ車に向かおうか。」


と言って3人で歩き出す。


道中、3人とも静かすぎて気まずい雰囲気が流れていたため、どうにかしてこの空気を変えようと、さっき気になったことを思い切って聞いてみた。


「あの……失礼かもしれないんですけど、そのマネージャーさんの伊瀬くんへの呼び方の違いってなにか理由があるんですか?」


「あぁ、それね。私と賢人くんは双子なの。でも仕事中はこんな人も一応俳優だから分ける意味でも伊瀬くんって呼んでるだけかな」


玲奈の言葉に、賢人も続ける。

「そうそう。それで一応俺が兄でこっちが妹。俺は信頼できる人にマネージャーなって貰いたいから妹に頼んだわけ。」


「兄って言っても数分早く生まれただけだからね?」


「あはは、それもそうだ。」


そんなわけで、私は玲奈さんが運転する車ですぐ近くの自宅まで送ってもらった。



「わざわざ、送って頂きありがとうございます!」


「お礼なら、賢人くんに言ってあげて。」


「俺は当たり前のことをしただけだから気にしなくていいよ。それじゃあ夜も遅いし俺たちはこれで失礼するよ。

これから夜道はしっかり注意してね!」



そう言って2人はすぐに車を出して行ってしまった。




家に帰って、自分の部屋でくつろいでいる時ふと伊瀬くんが助けてくれた時のことを思い返していた…………。



(そういえば、あの時伊瀬くんあの怖い男の人から助ける時……………………私の事を彼女って…………言ったよね?


もちろん、………………わかってるよ?

あくまであれは、私を助けるために言ったことで本気じゃないって)


それでも、私がずっとずっと好きな俳優さんから言われたと思うと……私は思わずベッドの中でのたうちまわるのだった……。



○○○


〜〜賢人視点〜〜


「でも、賢人くんがあんな必死に走り出すなんて思わなかったよ。」


車で帰っている時、玲奈が俺に言う。


「自分でも知らないうちに飛び出してたんだよね。なんだろうね、この気持ちは。」


「…………さあね。ようやく賢人くんにも春が来たのかもね..なんてね?」


「あはは、…………それはないよ。」


「そっちの方が私も助かる」



そう言って俺たち兄妹は自宅に帰るのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



いかがでしたか?


面白い!続きが気になる!と思ってくださった方は、フォロー、応援、☆☆☆などなどよろしくお願いします!!


では、また次回お楽しみに!

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