第2話 翌日のこと、トレンド入り
柚葉と直接出会った翌日の朝。
#ゆずのお兄ちゃん
がlitter界隈でトレンド入りした。トレンド入りというのは今話題になってますよってやつだ。
ゆず『お兄ちゃん、出会ってその日に告白の言葉を口にしかけちゃってるwww』
俺はそのリートを見てわざと隣に伝わるようにドンッと力いっぱい叩く。
『実は俺――――』
あの言葉は告白する前の男子の口にする言葉だ。誤解しても仕方ない。あんなこと言うんじゃなかった。
A『当然だよなぁ?』
B『ウチの天使になにしてくれてんの?爆ぜたいの?』
C『途中で止まっただけでもお兄ちゃんは偉い』
D『火油に注いであげようか?Right?』
などなど、批判も賛同も、さまざまなコメントが見受けられる。
Right『図に乗るなよ。メスガキ』
ゆず『どしたの?Rightなんか今日機嫌悪い?私でも食べる?』
Right『貧乳乙。巨乳以外興味ない』
ゆず『最低なんですけど???』
そこでL○NEにピロンとメッセージが届く。
父さん『母さんの朝飯ができたぞ!!』
らしいので俺はそそくさと着替え、リビングに向かう。
「おはようございます。兄さん」
ジャストタイミングで柚葉もドアを開ける。柚葉と俺の部屋は隣同士だ。と言っても、この家はかなり防音性能が高いので隣の部屋に声が聞こえるなんてことはよほど大きな声を出さない限りない。
「ああ、おはよう………さっきは壁、すまんな。うるさかったろ」
「いえいえ、問題ないですよ」
一応ながら謝罪をしておく。
やっぱり夢じゃないんだよな〜なんてぼんやり思ったりもしながら、リビングに向かい、そこにもう既に食べ始めている父さんがいた。
リアルでゆずと会うなんてことは毛頭するつもりはなかったので、俺と柚葉が出会ったのはちょっとアレだったりするのだが、幸せそうに母さんの料理を食べる父さんを見て、父さんと現在の母さんである鹿島 未来は出会って良かったなと思う。
「秋次!柚葉!おはよう」
腹から声を出して元気よく朝の挨拶してくる父さん。朝から元気だな。
「はっはっは!今の父さんは母さんの料理で元気100倍だからな!」
「心読んでくるのやめない?おはよう」
「親なら子の考えくらい読めるものだ」
と胸を張って言う父さん。
「じゃあ、最近俺が悩んでいることを是非とも当ててくれ」
「お前悩みなんてあったのか。そうだな………妹が可愛すぎて辛い!」
「おめでとう。見事に不正解だ。お父さんは息子の心を読めない。終わり」
「はっはっはっ!!やっぱり言ってもらわないと分からないな!だから何か相談したいことがあったらいつでも言ってくれ!」
「…ありがと」
いい父に恵まれたなと思いながら座り、いただきますと感謝の意を込めて言った後に飯を口にしていく。美味い。
「美味いよ。……父さんの好みをよくわかってらっしゃる」
「ありがとう。ふふ、可愛い子ね」
照れくさいがそれが料理を作ってもらった者の礼儀というものだ。料理を作った人が褒められて嬉しいことなんて、いつも料理を作ってた俺は分かる。父さんは毎朝うまいうまいと口にしてくれていたものだが、大袈裟だなと思いながらも嬉しかった。
「それにしても、秋次も今日から高校二年生か。いや〜早いもんだ」
「そうだなーー」
「柚ちゃんも今日から高校一年生なのよね〜」
「へぇ」
らしい。時刻を確認するともうすぐ8時になろうかというところだった。
「時間大丈夫なのか?」
「ああ、なんせ秋次と同じ高校だからな」
「「え?」」
俺と柚葉の声がハモる。ゆずからはそんなこと聞いてない。ゆずならすぐに話そうなものだが……初耳だ。
俺の通う高校は、あの文庫のレーベルで有名なSHINOKAWAが運営する日本一有名な通信高校である。ネット高校と自称しており、在校生が5万人もいる超マンモス校。
特徴はいくつかある。
・入試が必要ない。
・必修授業が最低限しかなく、どれも動画教材なため自由な時間に見れる。なので他の高校と比べて自由時間がとても多い。もちろんだが、履修科目も自由に追加できる。
・課外授業が豊富で、プログラミング、イラスト、小説、webデザイン、大学受験コースなど挙げ始めたらキリがない。それにワークショップがひと月に10回くらい行われていたりする。お坊さんの修行を体験できたりするワークショップがあったりするらしいのだが、これは案外人気で毎年恒例でやっているらしい。
ちなみにだが、入学式は午後からだったりする。
「兄さんもF高なんですか?」
「ああ、その通りだ」
「じゃあ、オンラインコースなんですか?」
「いや、週3通学コースだ」
「……へぇ」
疑いの眼差しがこちらに向けられる。
実を言うと、ゆずには俺がF高で通学コースであることを教えている。
週に何回登校しているかまでは教えてないが、Rightのリートを遡れば『学校行ってきます』投稿があるのですぐにバレるだろう。なぜ教えたかといえばF高だし、身バレする可能性は低いと踏んだからだ。
「どうした?顔に何かついていたか?」
「すいません。知り合いもそうだなと思いまして。不快だったらすいません」
「そか」
何も気にしていませんよと言わんばかりに素気なく返事をし、俺は早々に朝ごはんを食べ終えるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
ゆず『お兄ちゃん、マジでRight説あるんだけど。共通点ありすぎてビビる』
Right『妄想脳乙』
ゆず『お願い♡顔晒して?』
Right『嫌ですけど?』
ゆず『そうだよね〜やっぱゆずの前じゃ、顔面なんて晒せないよねぇ〜だって、ゆずが可愛すぎるもん!』
Right『鏡に頭ぶつけろメスガキ』
自室に戻ってスマホを開くとそんなリートをゆずがしていたので適当に絡みにいく。
適当にスマホをいじっていると、そろそろ登校する時刻となっていた。
「……行くか」
そう呟き、リュックサックを背負い、俺は自室を出た。そして電車の中でリツる。もちろんバレなために時間をずらした結果だ。
Right『学校行ってきます』
A『そのまま二度と帰ってくんな』
B『横断歩道には気をつけないでください。信号無視しても構いません』
ゆず『行ってらっしゃい♡え?もうちょっとゆずに甘えたいから行くのやめるって?あっ♡ちょっ♡』
Right『言ってなくて草』
これもいつものことだ。こんなくだらないやりとりだが、意外とやり始めると毎日やってしまうものなのだ。
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