義妹がFFさんだった件〜バレないかどうかのギリギリのラインをスリリングに味わいたい俺はあえて正体をバラさない
See you
第1話 舞い込んだ妹は超可愛いFFさんでした!?
俺は突然訪れたラブコメ的展開に思わず絶句するしかなかった。
「鹿島 柚葉です。よろしくお願いします……兄さん」
兄さん……つまり今日から俺の妹となる少女はペコリとお辞儀する。とても可愛らしいところ悪いが、彼女の素を知っている身としては、お前そういうキャラじゃないだろと、ツッコミたいところだった。
「どうかしましたか?」
「え?あっ、すまん。考え事」
そこでポンと肩に手がおかれる。
「秋次。考え事もいいが、まずは自己紹介が大切だ」
そういうお父さんもお父さんで俺に妹ができるという大切な事を教えてなかっただろと内心で文句をぼやき、改めて妹こと柚葉に向き直る。
やはりというべきか、とても愛くるしい見た目をしている。そして似ている。というか間違いなく本人である。
艶やかな黒色の長髪に、アメジストの煌めきを放つ瞳。幼めの顔つきは神が奇跡をもって造形したと評されるのも納得の可愛さを誇っている。胸は誇れないが。
「これからよろしく、柚葉」
「はい。よろしくお願いしますね」
そう言って柚葉ははにかんだ。
可愛らしい、確かに可愛らしいが、俺の知っている彼女はこんな清楚じゃないし敬語も使わない。じゃあなんなのかと言えば、まぁ、メスガキだ。
◇◆◇◆◇◆◇
千年に一度の存在ともてはやされる美少女……ゆず。
一見して、清楚な黒髪系の美少女な彼女だが、その中身は外見と正反対と言っても過言ではないメスガキである。
そんなキャラをしているにもかかわらず、彼女の人気ぶりはすごく、Iitterフォロワー数はもうすぐ100万に到達するだろうというとこまで来ている。どうやら世の中というのはだいぶ終わっているらしい。
ちなみにだが、litterとは、
「あのレストランマジで美味しかった!」
「今、全身麻酔した後なんだけどマジでだるい……」
みたいな感じの日々のつぶやきのメッセージを、最大160文字以内という制限をつけて投稿するシステムである。
投稿されたメッセージは「リート」と呼ばれ、リートすることを「リツる」とか言ったりする。
その投稿の手軽さと情報伝達の速度などから個人メディアのツールとして世界中に普及しており、大企業で利用してないとこなどどこにもないし、アメリカの大統領だって使っている。世界中の人と交流ができるのだ。
俺とゆずの出会いはゲームで、その後litterのアカウントをなぜか教えてもらい、結果的にFF(お互いがフォローしあっている状態)になった。
よく一緒にゲームしたり、お互いがlitter上でだる絡みしあってるため、メスガキで生意気だが、俺たちは意外と相性が良いんか、と思ったりはしなくない。
当の本人は現在、自室で段ボールを紐解いているところだろう。
どれ、少しlitterでも覗いてみるか。
ゆず『お兄ちゃんできちゃった♡てかデレデレなんですけど〜惚れられちゃったね』
スマホ投げつけようかと思ったわ。
A『ええええ!?お兄さんそこ変われ』
B『俺たちの天使が……羨ましい妬ましい』
C『お兄さんの心境「え?マジ?めちゃんこ可愛い義理の妹できたんだけど!絶対彼女にする」とか絶対に思ってるでしょwwてか、お兄ちゃん死ね』
蘭ちゃん『お兄ちゃんNTRから紹介して?』
ゆず『お兄ちゃんは私の下僕にする予定だからダ〜メ』
惚れてませんけど?下僕にもなりませんけど?
まぁ、ゆずのフォロワーはこういうの多いことはよく知っていた。とはいえ当人としては中々に堪える反応である。
というかゆず本人は俺が『Right(俺のlitterアカウントのユーザーネーム)』であると認識しているのだろうか。俺はゆずの顔を知っているからすぐに分かったが、俺はゆずに顔写真を見せたりしていないため分からないと思うのだが………
「探ってみるか……」
Right『ゆず並に可愛い妹授かったわ。間違いなく俺に惚れてるね』
俺はゆずとよく絡んでいるということをあってフォロワー数50万とかなり多い。かなりふざけたつぶやきだったが反応はすぐにあった。
A『やってて悲しくならない?』
B『なら顔面晒せ』
ゆず『ゆずより可愛い子なんていないから嘘だってすぐ分かっちゃった』
Right『黙れ』
C『そうだぞ!ゆずより可愛い子なんていない(洗脳済み)』
ゆず『人類の常識なのに知らないんですか?Rightさん?』
Right『驕るな』
ゆず『いやん』
まともに見せられる内容ではないが、litter界なんてこんなもんだ。
それにしても。この様子を見るにおそらく知らないな。
Right『ちなさっきのエイプリルフールネタだから』
そうリートしてスマホを机に置く。
今日は4月1日。4月といえば出会いの季節とも別れの季節とも言われるが、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。
「お兄さん?」
そこでコンコンとノックが響き、柚葉が呼んでる声が聞こえてくる。
「入っていいぞ」
ドアが開かれ、柚葉がその可愛らしい顔を覗かせる。
「運んで欲しいものがあるのですが」
「ああ、オケ」
了承し、椅子から立ち上がる。
「どうかしたんですか?そんなにまじまじ見られると照れちゃいます」
お前が照れるとかバレバレの嘘すぎて笑える。
「なぁ、柚葉」
「はい、なんですか?」
「実は俺――――――」
Rightなんだ。と言おうと思ったが、それは面白くないと感じた。
「いや、何でもない。忘れてくれ」
「途中まで言われるととても気になるんですが」
そう柚葉は苦笑し部屋をあとにしたので、俺もそれにつづく。
せっかくこんな面白そうな事が起こったんだ。すぐにバラしてしまうなんて勿体無い。
バレるか、バレないか。どうせならそのギリギリのラインを俺は楽しんでみるというのもありかもしれない。
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