第45話 忍者かっ✖集まった四人の女神✖唯一無二の解。
「おお、ここが山田一平の家なのですか? む、拙者の家より大きい。人間のくせに生意気です。中はどうなって……むむむむむっ!? こ、これはっ! なのですっ!!」
一度天界に戻ったアスリコット。だが有給を取得していることもあり、俺とファイナが学校を終えるタイミングで我が家にやってきた。何かに驚愕していると思ったら、ファイナ同様に大広間に敷き詰められた畳に対してだった。
「驚いたでしょ? 畳自体が初めてなのに、それがこんなにたっくさん。私も最初みたとき、感動しちゃった。ちょっとそこが黒く汚れてるのが気になるけど」
「初めて見る畳、そして草のいい香り……寝ころんでみたいのです。いや、こんなに広いのです。寝ころぶだけじゃ満足できそうもないのです」
「だよねっ。だったらアスリコット、アレしない?」
「ファイナ。アレとはなんなのです?」
はいはい、畳転がりゲームね。まったく一応、俺の家なんだけどな。別に怒りゃしないけど、やるなら一言欲しいよな。
「〝畳めくって魔法を防いじゃお♪ゲーム〟よ。お互い、大広間の端と端に立って魔法を打ち合い、防御するときはめくった畳を使うの」
「や、やるのですっ! すごい楽しそうなのですっ!! たくさん畳めくってやるのですっ!!」
「うん、めっちゃめくっちゃおーっ」
忍者かっ!!
まさかの違うゲームの登場に俺に、さすがの俺も𠮟りつける。畳をダメにする気かと。するとファイナとアスリコットは不満顔を浮かべながらも納得。ゲームを畳転がりゲームに変更した。そして現在、ファイナの〝序・破・急作戦〟が、アスリコットの普通の転がりに負けたところだった。
俺は二人を残して自分の部屋へ。その途中、庭に何か下りてくると思ったら、ウィンウィンだった。
「おう、ウィンウィン。もしかして今、秋葉原から帰ってきたのか?」
ウィンウィンの顔に、焦りの色が乗る。
いっけね。ノートとペン、ノートとペン。
俺は居間からノートとペンを急いで持ってくると、ウィンウインに渡した。
毎回、探して渡すのも大変だ。携帯用のノートとペンを買ってあげたほうがいいかもしれない。
『そうだよ。すごいたのしかったっ♪(o´∇ `o)♪」
「そっか、それは良かった。それでどんな過ごし方をしたんだ?」
『えっとね。ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでかでんをながめてからネコカフェ行ったり、トクガワツナヨシがそうせつしたユシマセイドウ行ってれきしをかんじたり、アキハバラUDXいっていろいろなショップをめぐったり、アキハバラガシャポンカイドウでガシャポンしたり、アキハバラデンキガイをぶらぶらとあるいたり、パワースポットのカンダミョウジンでおまいりとかしてきたよ』
予想以上に、しっかりおススメ観光スポット巡ってきたな。前以てネットで調べたかのようだ。
「歩き疲れただろ? おつかれさん。あ、そういえばアスリコットが来ているぞ」
『そうなんだっ。わーい。会ってくるね♪』
「おう、大広間でまだ畳転がりゲームの最中かもだけどな」
嬉しそうに大広間に走っていくウィンウィン。ふと、彼女のゴッデススーツの中から丸い物体が落ちる。拾ってみると、それはガシャポンだった。少し開いていたこともあり、中を確認してみるとキン肉マンのキンケシだった。
この肉まんも好きなのかよ。
誰もいなくなった庭から離れようとしたそのとき、今度は天聖陣があらわれる。誰か女神が来るようだ。って、俺の知ってる女神で今この家にいなのはただ一人――。
「ごきげんよう、一平さん。もうそろそろ夕飯の時間なので、また腕を振るいにきてしまいました」
「アイシア! 来てくれたのか。これで女神が四人揃ったな」
「四人? もしかしてアスリコットも来ているのですか?」
「ああ、来ているぞ」
「そうですか。ところで何事もなかったですか? アスリコットはファイナのことが大好きで、そんな彼女を一平さんが奪ったと思い込んでいるふしがありましたから」
「あった、あった、そりゃもうとんでもないことがさぁ――……」
俺は今日の出来事をアイシアに話す。
その内容に驚きつつも苦笑するアイシア。どうやらアスリコットならやりかねない暴挙だとの認識があるようだ。
「ふふ。そうでしたか。アスリコットは外的抹殺課に所属していることもあり、魔力が膨大で戦いではとても頼りになる子なんですが、そこだけが唯一、ダメなところかもしれませんね」
あなたも酔うと人格が変わるのが唯一、ダメなところだと思います。
「でも、夕飯をまた作りに来てくれたのか」
「そうですが……もしかして迷惑でしたか」
アイシアが悲しそうな顔をする。
誤解させた俺のバカっ。
「違う、違うっ。嬉しいんだよ、アイシスの作る料理って本当においしいからさっ。でも、今日で三日連続だろ。なんか迷惑かなって思っちゃってさ」
「おいしいと言ってくれてとても嬉しいです。それと迷惑なんてことはありません。むしろ、一平さんがおいしく食べてくれるのがわたくしも嬉しくて、ずっと作って差し上げたいくらいです」
おい。聞いたか俺? アイシアがとんでもなく素敵なことを言ってくれたぞ。
さあ、どう返す? 俺っ!
「私もたまには作ったほうがいいよね。だって押しかけ同居したんだし」
色々と最悪なタイミングで急に入ってくんなっ!
「あ、ああ、そうだな。……でも、料理はアイシアが作ってくれる限りは、アイシアでいいんじゃないかな。だってほら、ファイナだってアイシアが作る料理は好きだろ?」
「うん。でも私の作る料理もアイシアは好きだよ。ねっ? アイシア」
「はい。もちろんですよ」
厳雪の女神がよどみなく答える。よく見ると笑顔が引きつっていた。
そこには、今までファイナの作った物体を処理(どうやって?)してきた苦労までもが垣間見えた。せめてこの場は、俺がなんとかしなくてはならない。
あ……そうだ。
俺は呆気なくその解を見つけた。
料理をファイナに任せても大丈夫で、尚且つ誰もファイナの作った物体の被害者にならないで済む解を――。
「今日は庭で焼き肉をやらないか? こうやってファイナの友達が全員集まった記念も込みでさ。どうかな?」
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