第39話 ラピュタパン✖女神カフェで優勝です✖ぶち子。
『おはようございます、一平さん。何か顔色がわるいですがだいじょうぶですか(´・ω・`)?』
昨日と同じように少し早起きして、居間に行くとウィンウィンがいた。
例のパジャマではなくゴッデススーツなのが少し残念だが、それでもウィンウィンは充分に可愛い。清々しい気分に程遠い状態の俺には、正にご尊顔である。ありがたや、ありがたや。
「おはよう、ウィンウィン。早起きだな。……実はあんまり寝れなくてさ。それが顔に出てるんだと思う」
『ねぶそくですか。それはつらいですね。ボクはよくねれました。ファイナがベッドのほうをかしてくれたんですけど、ふっかふかでした⸜(*ˊᗜˋ*)⸝』
ボクっ子の〝ボク〟が聞けない俺の残念な耳っ。
アフェクション波、はよっ。
「それはよかった。ところでファイナはまだ寝てるのか?」
『はい。気持ちよさそうにねてました』
アイシアのときと同じだな。
しばらくしたら、パジャマ姿で現れるだろう。その前に作ってしまうか。
「いまから朝飯作るから待っててくれ」
『え? つくってくれるんですか? 肉まんかな?』
「ご、ごめん。肉まんじゃなくって……まずはトーストを焼くだろ」
『ふむふむ』
俺はトースターにパンを二枚入れて、五分でセットしたのちスイッチを入れる。
「次に、フライパンで目玉焼きを作りまーす」
『ほうほう』
フライパンの上に生卵を二つ落とす。お互いが近づかないように注意しながら、弱火で五分。あと一分というところで、さきにトーストができあがる。
「次に、このトーストにマヨネーズを塗りまーす」
『ぬりぬり』
お皿の上に乗っけたトースターにマヨネーズで縦模様を書く。
「そして最後に、できたての目玉焼きを乗っけると~」
『のっけると~』
二枚の食パンの上に、目玉焼きを一つづ乗っける。
「ラピュタパンのできあがりっ」
『おいしそうっ(灬º﹃º灬) !!』
「えー、ほんとにおいしそうっ」
なんか一人増えている。パジャマ姿のファイナだった。
アイシアのときもいいタイミングで現れたが、絶対見計らってるだろ、お前。
「二つあるけど、一つはもしかして私のっ?」
「……そうだよ」
まんがのように瞳をキラキラさせているファイナを前にして、俺は自分のラピュタパンを犠牲にする。もう一回作ればいいだけのことだ。――と牛乳を出しながら冷蔵庫を見れば卵がなかった(泣
「いただきまーすっ」
『いただきます♪』
「おいしーっ。でも、モグモグ、一平、ちゃんと自炊できるじゃん、モグモグ」
「喋るか食べるかどっちかにしろ。……これを自炊と言っていいならできるな。だがしかしっ、これしかできない」
「そっか。でも朝はこれだけでいいんじゃない? 夜御飯はこれからがんばっていこうっ」
『肉まんもつくれるようになろう』
「ウィンウィンも、食べるか書くかどっちかにしたほうがいいぞ。それと肉まんは作れない」
『――⤵』
こうして、昨日とはまた違ったにぎやかな朝御飯の時間は過ぎ、学校に行く時間がやってくる。
ウィンウィンはどうするのかと聞くと、秋葉原に行ってみる(空から行くらしい。カーバンクルに触れていると一緒に飛べるんだとか)と返された。なぜ秋葉原なのかと聞くと、日本のオタク文化に興味があるからとも。
これは意外だった。と同時に、ゴッデススーツを着用したウィンウィンほど秋葉原にマッチした女神もいないのではと思えた。
確か女神が営むカフェが数店あったと思うが、すでにウィンウィンの優勝である。つーかマジで働いてきそうで怖い。ファイナの一件もあるし。
そのウィンウィンは今日の夜に天界に戻るということなので、晩御飯も一緒に食べれそうだ。
よしっ、今日こそは自炊だぞ、自炊っ。絶対に自炊してやるッ!! アイシアさえ来なければなっ!
「行ってきます」
「行ってきまーす、ウィンウィン」
『行ってらっしゃい(o´▽`o)ノ)) 』
ウィンウィンに手を振り、学校へと向かう。
すると朝飯の時間には感じなかった、寝不足による不快感が体中にまとわりつきはじめる。俺は思わず、「はぁ……」とため息を出していた。
「ちょっとどうしたの? 溜息なんか出して。憂鬱な月曜日ってわけでもないのに」
「寝不足なんだよ。昨日の夜さ、ちょっとした妄想をふく――」
「妄想?」
あぶねーあぶねー。
ファイナと結婚する妄想を膨らませてたら――って箇所から話すところだった。
「じ、じゃなくって、まあ、普通に寝る前にトイレに行ったんだけどさ。その途中に大広間あるじゃん?」
「うん」
「夜だから真っ暗なその大広間にさ、誰か立っているのが見えて、で、そいつが俺にこう言ったわけよ。――ぶちこ」
「ブチ子? 誰それ?」
とちゅーっ! 言ってるとちゅーっ!
ブチ子ってどんな女子だよっ。
「最後まで聞けってっ。ブチ子じゃなくって、〝ぶち殺してやるのです〟って言ったんだよ。でもそのあと、その誰かが消えちゃってさ。目の錯覚だと思うんだけど、その声だけははっきりと聞こえたんだよな。……あ、今、思いだしたっ。昨日、授業中に寝てるとき呪詛のように聞こえた声と同じだ」
ふと、横を見るとファイナがいない。
後ろを見向くと、彼女は歩みを止めて立っている。その表情は、何か思い当たる節があるかのように微妙な変容を見せていた。
「どうした? ファイナ。もしかして、俺の聞いた声がなんなのか分かったのか?」
「え? う、ううんっ、別にそうじゃない、けど……とにかく学校へ行こうっ!」
どっちなんだよ。
結局、そのままうやむやにされてしまった。
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