第33話 ぶち殺されそうです✖面接✖銀髪のキミはだれ?
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
ぶち殺してやるのです。
お前を絶対――ぶち殺してやるのどぅえぇぇっすッ!!!
「うわあああぁぁぁっ!?」
俺はあまりの恐怖から目を覚ます。
周囲の白眼視が俺に突き刺さる。どうやら俺は授業中にうたた寝していたらしい。
「山田! 起きるなら静かに起きろっ」
「は、はいっ、すいません」
英語の先生に怒られたがそんなことはどうでもよくて、俺の頭の中は今の夢のことでいっぱいだった。
……いや、夢というよりかは、誰かの声が無理やり脳内に入り込んできたような、そんな恐ろしい感覚。
(ちょっと、一平どうしたの? 気持ちよさそうに寝てたと思ったら、急に大声出して跳ね起きて。怖い夢でも見たの?)
後ろの席の榛名ロゼことファイナが、心配そうに声を掛けてくる。
(夢というか誰かの声が頭の中に響いてきたんだよ。何度も何度もぶっ殺してやるって呪詛のように言われた)
(え? めっちゃ怖いじゃん。もしかして誰かに恨まれてるんじゃない? で、その人の生霊が耳元で呪詛ったとか)
(一七年間、背景に溶け込んで生きてきた俺が誰かの恨みを買うわけがない。あるとしたら……)
(あるとしたら?)
(スーパー勇者である俺が疎ましい、魔界の誰かの憎悪の念――)
(九九・九パーセント、その可能性かも……っ)
今回ばかりは、その〇・一パーセントに賭けたい俺だった。
◇
我が家が見えてくる。
閑静な住宅地域の中でひときわ大きな日本家屋。よもや、そこの一人息子が女神と同居中だとは誰も思うまい。JKの彼女を連れ込んで、よろしくやってると思われているかもしれないが。
「帰ったらどうする? どうせ暇だし、またノットフィールドでバドミントンでもやるか?」
「あー、やっぱり忘れてる。私、このあと大事な用事があるんだけど」
「用事? えっと、ごめん、なんだっけ?」
「もー、じゃあ、大ヒント」
「おう、頼む」
「いらっしゃいませ、こんにちは! 漲る炎で笑顔をHOTに! あなたのハートはほっかほか? それともぽっかぽか? それではご注文をどうぞーっ♪」
「ぽっかぽかーっ!! ってそうか、ナクドの面接があったな」
「そうだよ。じゃあこのまま行ってくるね」
「おう、店長にセクハラされそうになったら連絡しろよ」
「大丈夫。そのときは燃やすから」
制服姿のファイナが去っていく。
彼女が面接するナクドマルドは、日頃お世話になっているスーパーマーケットの中にある。家からも近いし、受かってくれればいいんだが。ぶっちゃけ俺が店長だったら、「君かわうぃいねっ、合っ格ぅぅ!」の一択だが、さて、どうやることやら。
俺は門扉を抜けて、家の敷地内へ。
門扉の鍵は開けたままだった。不用心かもしれないが、勝手に入ってくる人間などいない。この地域は治安がいいのが売りだ。ファイナは勝手に入ってきたが、あいつは人間ではないし、扉は玄関だけという認識だったのだろう。
その玄関の扉を開ける俺。
ゴト……っ。
家の奥から物音がした。
それなりに大きな音。自然に発生する類のものではない。
間違いない。――この家に誰かがいる。
泥棒だとしたら、治安がいいゆえの危機意識の欠如を突かれたか。しかし、玄関は間違いなく施錠していた。ならば別の場所の窓を割られて侵入されたのだろうか。
俺は多大な緊張感をいだきながら、耳を澄ます。
がさごそ、がさごそ、がさごそ…………………バタンっ。
ドアが閉まる音。
今のは冷蔵庫のドアだ。誰かが冷蔵庫の中を漁ったらしい。俺はその瞬間、ある結論に達した。泥棒ではない誰かが勝手に冷蔵庫を開けるとすれば、その誰かは自ずとある人物に絞られる。
――アイシア。
瞬間転移を使ってきたのだろう。仕事の合間にくると言っていたから、別に不思議ではない。冷蔵庫を開けたのは、おそらく俺とファイナの晩御飯を作るためだ。期待しすぎかもしれないが、アイシアが冷蔵庫を開ける理由として最もあり得るのではないだろうか。
なんだよ、びっくりさせんなよなぁ。それで、今日は何を作ってくれるんだろうな。オムライスがいいなぁ。
とたんに安心した俺は、居間に向かう。
そして居間を横切って、台所へと入った。
「アイシア、来てたのか」
俺は固まる。
視界に入ってきたのがアイシアではない、俺の全く知らない少女だったから。
俺は呆気に取られつつ、目の前の女性の視覚情報を入手する。
銀色に輝くベリーショートの髪。その髪は右目を完全に隠し、出ている左目は俺の存在に驚いたのか見開いている。すると、小柄な体躯がキュッと縮こまる。怯える小動物のような可愛さに、俺の庇護欲がうずく。頭の横にはオレンジ色の髪飾りがついているが、それ以上に気になるのは彼女の翠色の着衣だった。
それは、ファイナやアイシアと同じゴッデススーツに酷似していた。
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