第9話 俺は縁側で友達の所属部課を尋ねる。
それは家の
日本家屋ならではのなごみ空間であり、森林浴もできる日向ぼっこの特等席。
家の縁側も御多分にもれず最高のくつろぎスペースなのだが、祖母ちゃんとネコがいないのが減点だ。
しかし今は、祖母ちゃんの代わりに女神。猫の代わりに聖獣がいた。これも風情である。
「お茶持ってきたぞ、ファイナ」
「ありがとー」
縁側と言えば、やはりお茶である。
晴れた日に庭の眺めながら飲むお茶は、それだけで優勝だ。
ファイナが湯飲みを持つ。
二重焼きになっている特殊構造の湯飲みだから、普通に持っても熱くないはずだ。
仮に熱かったとしても烈火の魔法を操るファイナには、露ほど感じない温度だろう。
ファイナがお茶をすする。
「ぶへええっ! あっつうぅぅぅぅいッ!!」
お茶が熱くて吐き出す、イフリートを従いし烈火の魔法を操る麗炎の女神。
名前負けも甚だしいわっ。
「炎属性の女神がお茶の熱さに耐えられないとか、なんのギャグだよ。だいたい、そんなに熱くないだろ。俺が普通に飲める熱さなんだから」
「私の扱う烈火の魔法は、天界の加護によって私自身が火傷しないようになっているだけ。お茶の熱さは別よ。それに私、猫舌なのよね。湯飲みが熱くないから、めっちゃ油断したわ。止めてよ、こういう罠」
「罠じゃねーし。って、しかも猫舌かよ。麗炎の女神の異名がむなしく響くな」
「うっさいわね。やっぱり、一回燃えとく?」
ファイナが右手の手の平にファイアボールを作る。
すごい熱そうだが、熱くないらしい。
「すいません。そいつはご勘弁を」
「ふん。許してしんぜよう」
「ところでファイナ。縁側のヒーリング効果ですっかり忘れていたけど、友達には会って話はできたんだよな?」
「あ、日向ぼっこが気持ちよくて私も忘れてた。うん、会って話してきたよ」
「で、俺との同居についてはなんて言ってたんだ?」
「全員、一回、一平に会ってみたいって」
「俺と?」
「うん。実際に会ってみて、一平が私と同居するにふさわしい相手か見極めるって。順序が逆で同居はもうしちゃってるけどね」
まるで俺のほうが同居を求めたみたいなんだが。
「有無を言わさず反対ってわけではないんだな。そこはちょっと意外だったというか」
「まあ確かに、人間と同居なのって驚かれたけど、同時にファイナは仕事熱心だもんねって、ウィンウィンには言われた。とりあえず会ってからって言ってるけど、すでに同居を支持してくれてるみたい」
ウィンウィン。
それが一人目の友達の名前か。
「ほかの二人には?」
「うーん。アイシアは本当に見極めてから決めるって感じ。アスリコットは、えっと悲しそうにしてたかもしれない」
アイシアにアスリコット。
これで全員か。
「悲しそう……。それって、ファイナと離れたくないんじゃないのか」
「かもしれない。アスリコットはすごく私に懐いていたから」
「なんか、俺のこと恨んでそうだな」
「うん。一平へのあふれ出る殺意をひしひしと感じたけど、多分私の勘違いだと思う」
聞く限り勘違いじゃなさそうだけどっ!?
「三人の名前がでてきたが、それぞれがどういう女神なのか知りたいな。同じ異世界部勇者召喚課の女神なのか?」
「違う違う。異世界部なのは同じだけど、全員が違う課に所属しているんだ」
「へぇ、そんなに課があるのか」
「うん。全部で八つくらいあるよ。それぞれの課の仕事内容なんだけど――」
ファイナが自分、及び友達が所属する課の仕事内容を教えてくれる。
◇ファイナローゼ。
『所属部課』
異世界部・勇者召喚課
『仕事内容』
勇者の資質のある人間の元に行き、一度天界へと召喚。そのあと、勇者がどの異世界に相応しいかを上司と相談して決めたのち、異世界へ転移させるお仕事。ちなみにスター女神であるファイナは特権が認められており、自分で勇者の行き先を決め、その場で異世界へ転移させることができる。
◇アイシア
『所属部課』
異世界部・異世界探索課
『仕事内容』
全宇宙の隅から隅まで飛び回り、闇が充満して悪の栄えた異世界を探すお仕事。仕事の性質上、出張が多くほとんど課に女神がいないため、課内はいつも閑散としている。
◇ウィンウィン
『所属部課』
異世界部・現地調査課
『仕事内容』
異世界探索課が探し出した異世界のあらゆる調査を行い、攻略難易度を決定するお仕事。あらゆる要因が複雑に絡み合うことから難易度決定が難しく、精神的疲労が一番たまりやすい課。
◇アスリコット
『所属部課』
異世界部外的抹殺課
『仕事内容』
異世界部全体の仕事の邪魔をしてくる、魔界の魔神・悪魔・魔獣などを抹殺して異世界部全体を守るお仕事。仕事柄、常に命の危険にさらされるため、給料は異世界部の中で抜きんでて高い。
どれもこれも異世界を救うために重要な仕事なのだろう。
なろう小説でも、女神の仕事といえば勇者召喚だけにしかスポットが当たっていないが、裏方でがんばっている女神がいるのかもしれない。
だがしかし、裏方は裏方だ。
PVの期待できない彼女達の仕事は、今後も物語として描かれることはなさそうだ。
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