第11話 ノー・プロブレム

 高校一年の時の英語の先生は、陽気な外人だった。


 彼の口癖は、ノー・プロブレム。


 宿題を忘れても、答えを間違っても、ノー・プロブレム、と笑って許してくれるので人気があった。


 そんな外人先生が、頭にガーゼをあてネット包帯をつけて授業に来た。


 滑って、家具に頭をぶつけてしまったそうだ。


 そんな時でも先生は陽気だった。


「ドウモナイで、ダイジョウブや。


 これがホンマの、ノウ・プロブレム」


 と、ケガをした自分の頭を指さし、私たちの反応をうかがった。


 私たちは、きょとんとした。


 恥ずかしそうな説明を聞いてからわかったのだが、どうやら先生は、ノウ・プロブレムと、シャレを言っていたらしかった。


 先生は両手の平を上に向け、天を仰ぎ。


「Oh、ワテ、イエで滑ったときより、もっとスベってしモタワ」


 今度こそ私たちは大笑いしてあげられた。


 先生はとても嬉しそうだった。


 関西に、かなり毒されていた外人先生は、クセモノ! であった。 

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