第12話 創作ダンス

 私の通う女子高校には、普通の体育とは別に、ダンス、という授業があった。


 最初はフォークダンスを習い、次は簡単な社交ダンスを習った。


 その次に来た、創作ダンス、で明暗が分かれた。


 5人~6人の班に分かれてダンスを創作して踊れ、というので、やはり仲の良い者同士が集まる。


 ここで類友、という現象がくっきりと見えてくる。


 もともとダンス好きでカッコよく踊れる、派手班。


 可もなく不可もなく踊れる、普通班。


 そして、運動音痴うんどうおんちで、どんなダンスをしても盆踊りにしか見えない、運痴うんち班、である。


 私は、高校でもバドミントン部に所属していて、運痴うんちではなかったのだが、人数の関係でこの運痴うんち班に入ることになってしまい、これはまずい事になったゾ、と思った。


 案の定、他の班はせっせと創作し練習しているのに、運痴うんち班の連中は全くやる気がない。


 ジャージのポケットに手を突っ込んで、寒い体育館で足踏みしているだけだ。


 やがて先生がやって来て、リーダーは誰か、ときいた。


 すると運痴うんち班の連中は、示し合わせたようにひとかたまりになり、私をじっと見たのだ。


 先生は、私がリーダーと判断して、


「創作のテーマは何ですか? 練習は進んでいますか?」


 と尋ねてきた。


 私は困って、何も踊れそうにない運痴うんち班の連中を見た。


 そして、ひらめいた。


「テーマは、分子運動、です。そしてあれは……」


 ポケットに手を突っ込んで、足踏みしている運痴うんち班を示し、


「分子運動の、振動、です!」


「おお、いいですね。ダンスと物理のコラボですね」


 先生は嬉しそうに私の肩を叩いて、去っていった。


 運痴うんち班も非常に嬉しそうに、私に愛想笑いした。


 まあ、振動、はこれでよし。あと、並進、と、回転、もこれの類似でいくしかないわな、と思った。


 創作ダンスと運痴うんち班は、クセモノ! であった。 

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