第3話 かさぶた

 ある日、小さい私は、家の前でG君と遊んでいた。


 なんの遊びをしていたのかは忘れたが、ふたりは向き合ってしゃがんでいた。


 ふと、G君が口を動かして何かを嚙んているのに、私は気づいた。


 「なにたべてんの?」


 ときくと、G君は


 「これ」


 と言ってべろを出して、べろの上のものを見せてくれた。


 それは、G君の膝小僧についていた、かさぶた、だった。


 彼は、自分のかさぶたをはがして嚙んでいたのだ。


 かさぶた、という名前すら知らない幼い頃だったから、私はそれを見て


 「それ、おいしい?」


 とたずねた。


 「……まあまあ」


 とG君。


 私が、くちゃくちゃ動くG君の口もとをじっと見ていると、彼は、幼いながらも悪いと思ったのか、膝のかさぶたの残りをはがして差し出した。


 「たべる?」


 私は首をふった。


 「いや、いらん」


 その時に見たG君の、ひどく悲しげな顔が忘れられない。


 大きくなってから考えてみれば、G君がしてくれたのは、アンパ〇マンが自分の顔をもいで


「これを食べるといいよ」


 と言ってくれたも同じことだと思う。


 私は、正義の味方アンパ〇マンの好意を、無下むげに断ってしまったのだ。


 ドキ〇ちゃんよりワルイ子の私は、クセモノ! である。

 

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