23:最後の逆襲策
妹の
言い当てられドキッとさせられた経験が、確かに何度か
だが、と
ここまでとは、想定外。
完璧なプランだった。
完璧である、
完璧でなければ、ならないのだ。
完璧に、しなければ。
そうでないと、イメージンが呼べない。
さもなくば……母と妹に、申し訳が立たない。
「っ……」
平静を装い、頭を働かせる
この程度を
こんな局面なら、何度も越えて来た。
仕事と同じだ。
予期せぬイレギュラーが発生しても、毅然とした態度で、平等に対応すれば
どこも難しい
目の前の障害を取り除く。
ただ、それだけ。
自分がリセイドになったのは、その
「『
全員、消えなさい』」
名指しし、命じる。
それだけで、三人は消滅した。
ホンノウンを取り込み、リセイドとして覚醒した
読んで字の
言うなれば、地球鬼の
この技を出され、
だが、今のままでは、
それに、イメージンが現れないのは、きっと、徹底的な排除を怠ったのが原因だ。
しからば、イメージンと話をつけ、
「
色々となぁ!!」
またしても、
振り向いた頃には、
「がっ……!?」
振り払い、下がる
あの武器には、ルーンセイ◯の
確か、『声に宿る感情、コエナジーを吸収し、力に変える』とか。
その場合、『物体を擦り抜け、感情だけを吸い込む』とか。
はたと、
だが、遅い。
「
……ホンノウンを……!?」
「そうだよ。
っても、
それを見下ろしながら、
「気分はどうだ? マスルオ。
引っ越し早々に
助けてやったお詫びに、ちょっと力、貸せ」
「
だが、人間よ。
それは不可能だ。
生身の人間が、拙者の力を宿す?
そんな
お主の体なぞ、一瞬で燃え尽きてしまうぞ?」
「心配すんな。
それも見越した上で言ってんだ。
お前がやるべき
自分の妹が、進んで焼け焦げようとするなど言語道断、冗談でしか
そんな所を無力に拝まされる
「……っ!!
させないっ!!」
「こっちの
「ユヒの邪魔はさせない」
「超すいあせーん、マジ体ロックしあーす!!」
「以下同文!!」
マニューアルが通じない手前、力づくで止めにかかる
が、それより早く、どこからともなく現れた
こうなる
「あなた
「見ての通り、愛娘達のサポートよ!」
「超行くっしょ、ユヒ!!」
「ド派手に決めろ、ユヒ!!」
「頑張れ、ユヒ!!」
「ウルトラ任せろぉ!!」
四人のお
母と幼馴染にサムズ・アップし、
「ってー
そろそろ本気で黙って手ぇ貸さんかい、ゴラ。
ぼちぼち、有無を言わさずに使ってやんぞ?
おぉ?」
「……あい分かった。
そこまで豪語するならば。
試してみよ、ヘボンノウン!!」
「抜かせ、ドアホンノウン!!」
悪口の応酬をしつつ、真っ赤に瞬くオーセイバーを構え、頭上に掲げる
明らかに
業火の中から現れたるは、甲冑に包まれた騎士。
赤を基調とし、金色の差し色が入り、マントを纏う、どこかシックな、
「うっひょー!!
ホントに変身
くぅ〜!!
を、秒で台無しにする中身。
「『炎』と『本能』を司る『王』。
っなっと、『ホンノオー』って所か」
「詰まらん」
「
全員、離れろ!!」
剣を小突き、そのまま
ホンノオーの周囲に火の玉が生まれ、ターゲット目掛けて一直線に駆けて行く。
「くっ!」
難
が、避難した先の地面が光り、続け
即座にバリアーを張り、そのまま上空へと舞い、時間稼ぎに図る。
攻撃を逃れながら、
やはり、どうにも妙だ。
先程から
まるで、最初から
だが、そんな能力は
それを宿しているのは
バディ絡みの
しかし、秘密主義者の
なのに、
「決まってんだろ」
マントで飛行、追い付いて来た
「んなもん、
叩き付け、かと思えば回り込み、再び切り飛ばす。
繰り返されるその
「おらぁ!!」
追い詰められた姉とは対象的に、余裕綽々と着地した
「
あんたの秘密も、計画も、今の考えも、
大喧嘩の果てに、
裏を返せば、『
これを逆手に取って、あんたを油断させた。
全部フラゲした上で、1年前から
この決戦になぁ!!」
「だから……
リセートを使い、シャット・ダウンを試みる
だが、通用しない。
「勝てるって、言ってんだよぉ!!
今のあんたにだって、なぁ!!」
オーセイバーに炎を纏わせ、斬撃にして飛ばす
「指摘された通りだ。
確かに
いっつも後先考えずに突っ走るし、てんで周りを顧みねぇ。
その対策を、
考えるのは、止めた。
持って生まれた性格なんて、そう簡単にゃ変えられねぇ。
だから初期段階で、
それだけで、
これでもう、余計なもんに捕らわれたりしねぇ。
アクセル役の
「
そんなの、ただのペンディング、
「
考えて、考えて、考え抜いた!!
去年までの
だから、逃避した先に転がっていた、あんたの用意してくれた、都合の
それだけの
突っ込み、バリアーを壊してみせる
「生まれつき失明者だった
ゴースト・ライターとして仕立て、祭り上げられていた
無性愛者の
子供の頃、病気で死にかけていた
味覚障害者でアレキシサイミアの
不妊症の
極度の騙され、不幸体質だった
エイトとケーには、
才能の芽を、エク・シードを、可能性とチャンスを根こそぎ奪った罪滅ぼしに。
これだけの環境を、現状打破する力を、あんたは
逆に言えば……あんたは、
そう、言わんばかりになぁ!!」
「
……
今の、私に!!」
「『
私の前から、消えろぉ!!』」
「消えるか、
再び、マニューアルを仕掛ける
が、やはり変わらない。
またしても自分は、妹に
「『
命令通り、自分は亜空間に閉じ込められ、
どうにも不可解だ。
同時に複数のルールを設け、相手を否応なく絶対服従させるなど一見、最強に見えるマニューアルだが、弱点が3つある。
一つ。「口で言わないと発令されない」
二つ。「固有名詞をフルネームで呼ばないと相手を絞れない」。
三つ。「名前、脳内イメージがと一致しないと効果を与えられない」。
これらをクリアしないと、中途半端にしか発動しないのである。
それを踏まえた上で、自分は条件を満たした
だのに、
あの場に
あそこまで酷似しているなど、他にはエンジン
……エンジン?
「……まさかっ……!?
……最初から……!?」
「その『まさか』だよ、卑怯者ぉっ!!」
時間差で嗅ぎ付けた
剣撃を避けながら、
通りで、マニューアルが発動されず、ホンノウンの業火にも耐えられた
自分が同一人物、本人と認識している以上、相手が別人であれば、条件をクリア
おまけに、ホンノウンの力を宿している都合上、理性に訴えるかけるのは愚策。
理性を極限まで抑えている上に、自分の中に眠るホンノウンの力は、
これでは、効果が薄まるのも自明の理。
しかも向こうのバックには、『
例えば、『
ならば。
「『
攻撃を、
どこに
この世界は、
支配下である以上、抗う術は
「
割とでも
しかも相手は、戦闘のプロなどでもなく、ただのショップの店長。
だというのに、
最早、考える気力さえ尽きていた。
別に、この世界から特撮が消えなかった
惜しむらくは、マニューアルの範囲が『
それを逆手に取り、
その
これこそが、『宇宙からリッキーが撃ったのと似たような感じ=
そのお陰で、
シリアスが
そして、そんな
二人は果てしなく、ハードな場面が似合わない。
どんな逆境さえ
「
たった一人でも生きて行ける、完璧な存在の
「だからだよ、
地団駄を踏み、駄々っ子の
どちらが姉で妹なのか分かり
「
だからこそ、それ以上に強くはなれなかった。
皆にビシビシ鍛えられメキメキ成長した、
人間なんて本来、そんなもんなんだよ。
完璧じゃないから勉強して強くなるし、完璧じゃないからミスって正すし、完璧じゃないから助け、補い合う。
それこそ、完璧にな」
「……認めない。
認めてなるものですかっ!!」
崩れ落ち、地面を叩く、意固地な
だが、無理も
それはつまり、
しかも、生まれたばかりの清らかな心を、キープしたまま。
自分を自分たらしめん『完璧』が破られた以上、ペースを崩されても不思議ではないのだ。
「……
どの分野でも、大体そうじゃない。
フィクションでも、音楽でも。
シナリオだとか、作画だとか、ボーカルだとか。
メインで注目、取り上げられるのはいつだって、決まって一つだけ。
他の要素なんてとどの
私は、それが
どうしても、許容
バッシングも、絶賛も、
力を借りた誰かに、迷惑なんて掛けたくない。
気を許せたかもしれない人に、罵詈雑言なんて浴びせたくない。
そんな愚行を披露する
だって私は、
孤独宣言し、中々に
なまじ一人で
やれやれと
「……あのねぇ、
そのアカペラの人だって、厳密には一人じゃない。
作詞家や作曲家、支えてくれる家族や友達、刺激し合えるライバル、ステージを手掛けてくれる演出家。
色んな関係者に支えられて、その上で初めて成り立つ、目立てるんだよ。
正直、なーんの保証もない、結果論でしかないけどさ。
それに、今の
今の
そんなんで、どーやって、やって行こうってのさ。
オーディエンスさえ
「……うっ……」
「分かるものか……!!
あなたに、私の気持ちが!!」
「分からないからこそ……!!
分かりたいからこそっ……!!
もっと話そうって、言ってんだっ!!
もっと、腹ぁ割って話すべきだってなぁ!!」
対する
グダグダになりつつあった、地球と人類さえも巻き込んだ、壮大な姉妹喧嘩。
それが、
「どうせ、後で復活する!!
今だけは、今度こそ、滅べ……!!
……『死に損ない』がぁ!!」
「死なせなかったのも、コンティニューさせたのも、あんただろ……!!
……『生き損ない』がぁ!!」
ぶつかり合う、意地と意地、ビームと炎。
綱引きの
自分の力で、本気で生きた、生きたいと願った
世界という巨大な殻に籠城しバリアを張り、そこを出ようとも広げようともしなかった。
その実、『生き損ない』という評価は、割と的を得ているのだ。
一方、
煩悩の詰め合わせみたいな相棒を生み出し、それに甘えた結果、仲間に見放され。
一度、
そこまで来て
心機一転、本音を見せ合える状態で、周囲とやり直し。
知識や経験、処世術や感情など、生きる上での力を身に着け直し。
世界を、見聞を、視野を、輪を広げ。
完璧には及ばないまでも、岩壁
完璧か、岩壁か。
完全か、敢然か。
安全か、健全か。
全能か、本能か。
万能か、順応か。
大義か、正義か。
至高か、最高か。
信念か、執念か。
似て非なるニュアンスの差が、最後に明暗、勝敗を分けた。
そのまま一直線に、
今度の今度こそ、周囲一帯には、
だが、気を緩めてはいけない。
恐らく、またしても
いずれにせよ、警戒しないと。
その
「『地球よ!!
……滅べ!!』」
前述の通り地球さえ、イメージンの創作物。
そのイメージンに力を授かった
そして、
なす
少なくとも、
※
終わる
辺り一面、黒に覆われた世界で、
「……ここ、は……?」
「店長さんっ!!
……
「これで一安心だね。
無事で
頭の下の柔らかい感触と、顔の表面の柔らかい感触。
程無くして
自分は今、オカミさんに膝枕されながら、
「わ、
彼女の腕をタップし、解放するように頼む
「起こしてくれて、ありがと。
でも、
「そんなの、考えるまでもない。
こうなる
だから、最後のトラップを仕掛けた。
でも、怪しまれない
正確には、『閃くまでのバック・アップを宿したナゾトキーで、記憶を上書きし続けていた』の。
思い付く度に、何度も、何度も。
その
そうやって、自分すらも
そして今は、存在を完全に抹消される寸前で、逃げたの。
ケーちゃんが用意してくれてた、敵の効力の及ばない、この世界に」
二人しか
が、振り返って確認するより早く、
声の主である
「い、
「いきなり、
「うっさい、黙ってろ、理解者、人格者気取りの偽善者、
年長者であるオカミさんにまで悪口を飛ばしつつ、
涙ながらに、罵倒する。
「……なってみろ。
ここまで心血注いで、面倒見て、ヤキモキ、ハラハラさせられっ放しで!!
嫌いなのに、大嫌いなのに、忌み嫌えなくて!!
悔しいし納得いかないけど、嫌いなのに忘れる
ブラフとはいえ、事情通ポジだったのに、1年も一緒に、
気が急いて早期退場、
相方以外では最初の、心を休められた、もっと知りたい、知り尽くしたいと思った、共通点の多い、記念、専念すべき相手で!!
最初に設定聞いた時から、感情移入し
迷惑、困惑の一辺倒なのに、離れられなくて、目が離せなくて!!
幾度と無く、ふとした拍子に、
その
やるせなくて、立つ瀬
何度も何度も無茶振りされてるのに、悪い気がしないどころか、誇らしい、喜ばしい
気付けば、こんな、公開告白みたいな
安◯としまむ◯みたいになっちゃって!!
自分でも
気付けば私自身が、二言目には
いっつも、いっつも、特に今日は、自分を犠牲にしてばっかで、大損してばっかで!!
こうなるって分かってるのに、大切な親友、戦友が目の前で、性懲りも学習能力も
そんな……そんな生き地獄を2年も、絶えず強要され続けた、この私の身にも、なってみろ!!
なってみろよ、えぇ!!!
「いろ、は……。
……ごめ」
「謝罪なんて要らない、
感情的になった彼女にしては
「私は、自他共に認める
私は、そこに
フォローはしてやっても、あんたのイエスマン、フォロワーにだけ成り下がった覚えは
モヤッたら、その都度、あんたに物申す、余さず叩き付ける!!
的外れだろうと常識外れだろうと、知ったこっちゃない!!
これが、『私』という感情、『私』という命だ!!
だから今、この場で叩きのめす、懲らしめる、見せしめにしてやるっ!!
いつまでも、私が付いててやれるだなんて買い被んな!!
私の心は、秋空よりも変わり身早いんだよ!
今は奇跡的に、そういう気分じゃないってだけで!
あんたみたいな地雷女、その気にさえなれば、いつでも望んで、こっちから切ってやる!!
こちとら
偶然、運良く、
ぼちぼちヒーロー、鈍感ハーレム主人公気取りも
見捨てられたくなけりゃあ、
似た
この、
そのまま駆け寄った
「……こんな
こんな、みっともない、女々しい
でも、平静じゃいられない……。
私じゃいられない、
それ
だから、もう……こんなの、
辛いよ、怖いよ、
じゃあ、それで
ここまでストイックに自分を追い込まなくても、きっと
私はただ、
私、もう……耐えられないよぉ……」
怒りすら失せ、ヘナヘナ、シナシナと崩れ落ちる
そんな彼女を、今度こそ、
「店長さん……いいえ、
私だって、
性分だから、こうするしか
でも……気持ちだけは、
どうか、お願いです。
そんなに、
もっと、ご自分を、
私達の、気持ちを。
もっと、信じてください」
目配せをし、
立ち上がり、面と向かい、大きく深呼吸し。
テンパってもいないまま、
「私達はぁ!!
決して、あなたを裏切りません!!
そんな生半可な覚悟で、あなたと共に生きちゃいませんっ!!
この一年も、
あなたと私達だから、一緒に邁進して来れたんですっ!!
もっと、私達を頼ってください!!
私はぁ!!
不幸続き、
あなたの
これからもずっと、私はあなたに、お仕えし、あなたに尽くします、
私を選んでくれた以上、あなたには責任を果たして頂きます!!
私と、私達と一緒に、是が非でも、責任を取って、あなたには徹頭徹尾、完膚無きまでに、幸せになって頂きます!!
あなたには、その義務が
私を『トクセン』に暖かく歓迎してくれた、あなたには!!
私の不幸な人生を台無しにし、幸せにしてくれた以上、あなたにも!!
幸せになって
あなたでも、
他でもない、私自身がっ!!
さもなくば、困るんですぅっ!!」
「……わか、ば……」
そんな二人を、
「……歳の
こういう時、どうしても、言葉に頼らず、楽をしたくなる。
話さずとも相手に伝わっていると、
いや……これすらも、単なる言い訳か。
「そんなこんなで、遅れを取っちまった。
私が言いたい
私の、
だから、簡潔に纏めるとしよう。
私の
あんたに一時、委ねるよ。
活かすも壊すも、好きにおし。
だが、壊そうものなら、承知しない。
もう、あんな無茶をするんじゃあない。
この子達だって立派な、あんたの『家族』だ。
私に、そう言い切ってくれたじゃあないか。
率先して家族を泣かせ、それを承知で同じ轍を踏む。
そんな、道を踏み外し続けた人間の末路が、あんたの姉の今の暴走だろう?
それを止めようとしてるあんたまで、同類に落ちぶれてどうする。
そんなんじゃあ、勝てる戦も勝てやしない。
何十年、何百年隔てようとも、未来永劫、平行線のまま。
決着なんて、付けられやしないよ。
私とて、もう年寄りだけどねぇ、
分かり切った泥仕合になんぞ捧げられる程、命も、自分も、人生も、まだまだ捨てちゃあいないよ。
私には、まだまだ守らなきゃいけない、
あんた達が
「……オカミ、さん……」
全然、簡潔ではない言葉に、貰い泣きする
しんみりとしたムードが流れる中。
パン、パン、と。手を叩く音が、やにわに響いた。
「はい。
反省会、終わり」
「忠告をプラスする。
この空間は時間が歪んでおり、現実世界に比べて流れが遅いが、そろそろ限界だ。
そうなっては、手遅れ。
この2年の
「
ケー……」
気付けば、メインの女性陣が全員、揃っていた。
続けて
それに、他の
「あんた
こういう時
「結構よ。
それこそ、出番マシマシになった
まぁ、
「右に同じ」
「左よ」
「右に同じ」
「ちょっ……!?
首曲げてまで、正当化しないで
せめて、体の向きを変えなさいよっ!?」
「この方が、効率的」
「
あー、もう、
全っ然、戻らないじゃないのよぉ!?」
「
「
相変わらず、緊張感の
お
「キャップ。
最後の、仕上げです」
「はーっはっはっはぁっ!!
一丁、
「ユーさん。
……行こ」
「あー、はいはい、分ぁった分ぁった。
でも、その前に」
「確約するよ。
もう、消えない、消させもしない。
そんな
だから、卑怯な
次で、
本音と共に、両手を向ける
差し伸べられた手を掴み、立ち上がる。
「……今度、
「そうですよ。
今まで、不幸続きでも、耐え凌げましたけど。
そういう不幸は、無理ですからね」
「……うん。
ホント、ごめん」
感極まり、
最後の、決戦に向けて。
※
勝った。
これで
そう、
そして生命体である以上、
そう。
「っ!?」
焦った結果、勝負を急いでしまった。
つまり、このまま息継ぎもままならずに、自滅するだけ。
「……?」
……
呼吸が?
「ま……まさか……!?」
それは、『幻惑』。
つまり、今までのは
U世界を模した別空間で行われていた、ホログラムを多用した、ド派手なマジック・ショー。
どこぞのミステリオな金魚鉢男も驚きの、一世一代の特大サーカス。
消された創作
この場に
彼女がスキルを発揮
上述の通り、他の世界であれば、ほぼ無敵な
結果、痛々しく
その確信を裏付けるかの
卵の殻を剥くみたいに。
完成したパズルをバラしていく
ガラスが割れ、破片が崩れ落ちて行く
自分が作り上げて来た余裕、バリアみたいに。
「今日まで
突如、後方から聞こえる肉声。
続けて、
「
これまで、苦難の連続だった
が、お
落ち着いてさえいれば、あらゆる自体を想定し注意深く臨機応変に対応し得る冷静さを磨けた。
(今日みたいなケースは例外として)リンクを解除したお
その気になれば地球さえ一瞬で、難
きちんと非礼を詫び、心を開いて説明さえすれば、ちゃんと分かり会える、最終的には笑い会える。
そんな相棒が、仲間が、友が、家族が、どんな時だって
生まれながらに真っ暗な、底無し沼のどん底に落とされていたからこそ、辺りから差し込む、照り付ける光を見付けられた。
少しでも
簡単な話である。
はたまた、
どちらが、より好かれ
というか、一考にすら値しない。
人間とは誰しも溺愛、出来合いの知識で生き、耐え凌ぐ、不完全な生き物なのだから。
逆転の発想だ。
正攻法ではなく、成功を叩き出せる盤外戦術。
ぶっつけ本番の卒試ではなく、準備次第で勝てる卒論方式を取った。
ただ、それだけの事である。
無才で、無知で、無力で、無頼で、無鉄砲。
そんな
故に導き、引き寄せられた敢然たる結果。
別に、これ自体は『奇跡』なんて大仰な物ですらない。
あれだけのチートを有した仲間と、今度こそ仲違いせず、再び一緒に
それこそが、
「
「マスターッ!!」
「
「ボスッ!!」
「キャップッ!!」
「
「チィフゥッ!!」
「店長っ!!」
「店長さんっ!!」
「ミヤさんっ!!」
『ユーちゃんっ!!』
『
『ユヒッ!!』
『店長!!』
「嬢ちゃん!!」
「お嬢さんっ!!」
「ボンノウンッ!!」
『行っけぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!』
相棒、同僚、家族、友人、亜種族。
どこかで選択肢をミスったら道を違えていた、消されていた、二度と話せなかった、味方になんてなってくれなかったか、
垣根も、果ては時空さえも超え届けられたエールが、アクセルを介して
応援を糧とするオーセイバーに、更なるコエナジーが降り注ぐ。
ここまでお膳立てされて
「……ったり
こんな土壇場で、特大サプライズなんか用意しやがって……!
さては、
マスルオまで、アドリブで合わせやがってやぁ……!
こっちが、アドリブとかプレッシャーとか、お涙頂戴的な流れに弱いの、熟知してる
ここまで順調に
仲間に、そこまで華ぁ持たされちゃあ、こちとら……!!
覚悟を決め直し、皆の思いの宿った武器を再度、握り締める。
「……意地でも是が非でも、決めにゃあならんじゃろがいっ!!」
一層、輝きを増したセイバーを構え、振り下ろさんとする
その表情は、今までに
「観念しろ……!
今度こそ、ガチのマジで終わりだ……!!
……
はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
はち切れんばかりの声量、熱量で、最後の一撃を放つ
渾身、会心の一発が、
自分に付きっ切りだった妹の、そんな変身具合を見せ付けられ。
喜ばしく、羨ましく、誇らしく、寂しい。
複数の、色取り取りの感情が、渦を巻いて混ざり合っている。
驚きもせず、振り向きもせず。
目を閉じ、安らかな心持ちで、受け入れる
今の彼女は、自分には眩し
きっと一目でも触れた
正面から直視など、
次の瞬間、
勝負は、終わった。
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