12:サイゴの大博打打ち(ゆうしゃ)
決して、ディスらない。
マイナスな意見で落とした場合は、
それが、
そんな彼でも、毒を吐かざるを得ない。
今度という今度は、
「さぁさぁ、安いよ、安いよぉ!!
超高額商品もワンチャン無料な、なんちゃって閉店セールだよぉ!!
査定金額アップの特別キャンペーンも、同時並行で実施中だよぉ!!」
鉢巻を付け
こんな
完全に、開き直っている。
「いらっしゃいませー!!
只今、ファミリー割引、割増を実施中です!!
ご家族の方お一人につき、10%です!!
是非、お誘い合わせの上、ご利用くださいませ!!」
「写真ですか?
ええ、どうぞ、どうぞ!
元より、ホーム・ページにがっつり載せられてるので!!
但し、悪質な加工をされた場合、アカウント特定の上、
「えー!?
そういえば以前、コラボで拝見しました!
ご足労、痛み入ります!!
はい! もう、バンバン特集しちゃってください!!
来週からで
チャンピオン
簡単に楽しませは、致しませんが!!」
家族連れに特撮女子、特撮専門チャンネルの配信者などなど。
次なら次へと押し寄せる来訪者
そうして並んでいると、やがて
それまで笑顔を振りまいていた
まるで、健闘を祈るとでも言わんばかりに。
受けて立つ、と言わんばかりに、右手を軽く合わせた。
言葉は要らない。
自分達が本格的に話すのは、来月なのだから。
今は、全力で挑むのみだ。
あの場では伏せられた、未だに全貌が明かされていない、彼女の言わんとするアトラクションに。
キャンペーンやセール、それ以外の内容までは明かされていない、迎撃態勢に。
2月の初日。
二人の平和な戦いが、こうして始まった。
※
店内は、思っていた以上に大盛況だった。
人と活気に満ち溢れており、悲喜こもごもといった
どちらかというと喜び、楽しさの方が勝っている印象を受ける。
チャレンジとやらに失敗しても、敗者と勝者が熱く握手し、奮闘を称え合っており、溢れんばかりの拍手を浴びているではないか。
見ていて、
「おんやぁ。
あははぁ。
おいしろぉ」
フニャフニャ、フワフワした声で呼ばれる
振り返った先には、『トクセン』の名物パティシエの
「これぇ、どぉぞぉ。
シィナの所にもぉ、後でぇ、遊びに来てねぇ。
マジ
持っていた地図を渡し、ユラユラと揺れながら持ち場に戻る
大丈夫だろうか、と眺めていたら、注文の合間を見て駆け付けた
あれなら、問題
「もぉぉぉぉぉ!!
お願いだから、置いてかないでくださいよぉ!!
私の
「あははぁ。
あー、そこのアベックさぁん。
ちょっとコイバナァ、
「ま、た!!
また、そうやって、見ず知らずの人に、馴れ初め聞こうとするぅ!!」
「コイバナがぁ、シィナのぉ、エネルギィ」
「でしたら、私!
私ので良ければ、休憩中かアイドル・タイムにでも、して差し上げますからぁ!!
ほら、行きますよぉ!!
オーダー
お願いですから、余計なお仕事増やさないでくださいよぉ!!」
問題
が、
ごった返しつつ
数日前に
だからといって、司会のお姉さんばりに明るく振る舞っているのは、両極端というか、土台無理というか。
一体、何日持つのやら。
……冷静に考えて、ショップに地図が有るという時点で中々にアレな気がするが、それは置いておこう。
「イケビジョ脚本家との早押し十番クイズ!
引っ掛け、サクラ無し!
1問正解で10%引orアップ!」
「色々ツエーなハソマソと変身RTA勝負!!」
「演技達者な可愛い系細マッチョと、アドリブなりきリクエスト!!」
「激撮! なるべく笑ってはいけない『トクセン』シアター密着24時」
「ガシャポンならぬクーポン!
お前の運、試してやるぜ!!」
「うたえ、カクメイ!! それが、宿命!!」
「ソフビ×塗り絵の、ヌリヌリ祭り(
完成した作品は、お持ち帰り自由!
セールス
「フォト・コーナー!
劇中を再現した衣装やスーツ、武器で写真を撮ろう!!
カッコよく撮って、割引or割増ゲット!!」
「……」
思った以上に
周囲を見回すと、同じ
ほんのり胸を撫で下ろした
さて。
最早、ちょっとした遊園地と化したスポットで、どこからツッコむ、飛び込む、切り込むべきか。
いや……枚挙していては、暇が
完敗感は否めないし、遅かれ早かれ確実に非難轟々だろうが、ここは安全圏を狙うべきか。
自分はまだ、特撮にハマってから10年ちょっとと日が浅く、専門的な知識は薄い。
ガチ勢からすれば今の自分は、大した装備を与えられていない、農村の村人も同然。
不用意かつ無防備に歴戦のラスボスを相手取るのは、蛮勇ですらない、単なる無謀だ。
次にソフビ、塗り絵、フォト。
これは、明らかにファミリー層向けの企画でありコーナー。
日頃から「空気読めない」などと言われ
節度
さもないと、某リバイ◯大好きキャンペーンの
査定カウンターを担当しつつ、監督者を務めているだろう
となると、残った選択肢は3つ。
ガ◯使、ガチャ、カクメイである。
恐らくガ◯使は、モニタリン◯的な趣向だろう。
シアターに
が、外に設置された、肝心の特設コーナーは、当たり前の配慮ではあるが、まるで中が見えない仕様となっている。
おまけに、同じ挑戦者の笑い声が絶え間
ともすれば
ガ◯使コーナーでポイントなのは、『キャストは誰なのか』という点だ。
オカミさんと
これだけ見ると、
にも
カメラなどで事足りている他のブースと違って、規模も規模だけに、無人では成り立たなさそうではないか。
恐らく、『
となれば、
一筋縄ではいかない
以上を踏まえ、ガ◯使は最後にしようと、
他に気になるのが、『カクメイ』と名付けられたスポットだ。
文脈から判断するに、
先頭に「うたえ」と書いている辺り、ヒトカラみたいな
が、あの
推理の結果、
彼の見立てが正しければ、『カクメイ』とは、『隠れた名曲』の略称。
つまり、まだカラオケに収録されていない優れた特撮ソングを、
ここで求められるのは、歌唱力や声量、声質ではなく、あくまでも正確性と再現力。
精神的、ないしは技術的に歌うのが困難なタイプでも選曲次第で楽しめ、好きだけど歌えなかった神曲を熱唱
これは、中々どうして
是非とも、足を運んでみたい。
と、その前に。
最寄りの所に向かい、その足でカクメイに行くとしよう。
そう決め、
まるで、「カクメイ見事に的中させてんなや!!」と、八つ当たりを受けた心持ちとなった。
続いて、カクメイに向かった。
睨んだ通り、クーポンそっちのけで、ただただ楽しいだけだった。
結果、彼が得るべきクーポンは、次に入った仲良し家族の長男が入手。
ダイナー限定で使える仕様にしてから道徳的、模範的、正直者な彼に、
合流してから、家族全員で心置き
※
決戦の時、来たれり。
ガチャで完敗し、目的を忘れカクメイをエンジョイし。
外に出て、
さもサーカスでも開催されてそうな、巨大なテントへの突入を敢行した。
想像以上に中は広く、入り口はカーテンで仕切られ、薄暗い。
恐らく当初は、ここでヒーロー・ショーなどのイベントを開く予定だったのだろう。
そして、気にはなっていたが、防音完備らしい。
ひょっとしなくても、
先程まで聞こえていた笑い声は、イヤホン越しの物だったか。
体育館みたいな室内に、
それは、「ここに座って待て」と言わんばかりの存在感だった。
瞬間、檀上のカーテンに謎の投射。
かと思えば、舞台袖から
マツケ◯(サンバの方)に扮した、『エスペランサー』の店長が現れた。
「
1アウトー」
突如としてイヤホンから届く、元ネタっぽい声。
辛うじて2発目を食らいそうになるも、
よもやよもやである。
まさか、こんなワンダフルな
おまけに、『
確かに、初対面の時点で、それっぽさは見受けられたが。
しかも、本物の馬を乗りこなすとは。
というか、どこから借りたのだろう?
近くの神社とかだろうか?
つまり、その……何?
これから自分は、将軍
中々、無茶を強いるというか、度し
だが、
あわよくば、それを参考に料理のレパートリーを増やし、
などと決意を固めていた、次の瞬間。
バイクの轟音と共に、二人目の将軍。
に変装した、
「
2アウトー」
まさかの、Wマツケ◯。
オー◯とライドベンダ◯
これは
にしても、だ。
中々な威圧、存在、重厚感。
最早、神々しいまである。
などと思っていたら。
今度は舞台袖から、ポテチ(コンソメ味)を持って。
ご丁寧に、アンクみたいな腕とアイスキャンデーまで引っ提げて。
「
3アウトー」
まぁまぁ煽って来るイヤホン。
間延びした棒読み加減もそうだが、呼び捨てにされているのも、意外と来る。
にしても、である。
この、本家本元に負けず劣らずの自由、破天荒っ
まさか、『アッセンボー』で自分を対応してくれた彼まで駆り出されるとは。
しかも、伸びに伸びていた久々の再会が、こんな席でとは。
心なしか、向こうも涙目、憔悴し切っている
そりゃそーだ……と、
これが野球ならば今頃、自分の打席は終わっている。
残りの7枚のクーポンを、締まって守らなくては。
あっという間に、取り囲まれてしまった。
が、これは想定内なので、慌てふためきはしない。
ここから、W将軍が
そうして、このショーが終わるまで耐え凌げば
と、
ここの従業員
「スタンバイ!!」
呑気に舞台を眺めていると、店長マツケ◯が指示を出す。
棟梁マツケ◯がドライバーをセットし。
続いて、竜崎マツケ◯がオースキャナ◯を渡す。
完全に、エグゼイ◯の第2話のオマージュである。
しかも、将軍が変身するという、原作改変。
お
余談だが、「スタンバイ」のイントネーションが完全に「成敗」だった。
物々しい空気に包まれるシアター。
店長マツケ◯がスキャナーを構え、ベルトをなぞり。
「ガ〜ッタ、ガッタ、ガッタ、ガッタキッリバ〜!!
ガタ〜、ガッタッキッリ〜バ〜ッ!!」
初代キョウリュウバイオレッ◯ばりのセルフ音声に、5発目のアウト。
などと思っている間に、場内に異変。
隠し扉が反転。
次いで、隠れ身の術
上様は勿論、大剣を担いだ学生やサラリーマン、チャラ男やDJも含め。
総勢50人にも及ぶマツケ◯が、一堂に会した。
6枚目のアウトを
彼を
というか、無愛想なカーナビ宇宙人やダダ、フルーツバスケットな大将軍まで
そんな場内で、後ろで流れるはドスコ◯人生。
舞台上の三人は、無言で眺める馬をバックに、再現度高めに、
控え目に言って、カオスである。
小慣れて来たのか、悶え苦しみながらも、どうにか奮戦する
そうしている間に、ヤミ◯
余談だが、このマツケ◯軍団ことエキストラは、元同僚の
こうして場内に残されたのは、4人だけ。
いや。
負けず嫌いの
「
ここまで生き残ったのは、お前が初めてだ」
「でしょうね」
特撮に多少なりとも明るく、普段からアンニュイだったお
「
これを」
オー◯のミラクルライダーボックスキャンペー◯の箱を懐から出し、3枚のメダルを華麗に、抜群のコントロールで投げる店長。
メダル型の割引券だった。
「『トクセン』に献上された物だ」
「でしょうね」
徳川家に献上される
役目を終えた三人は、馬に乗り、ステージを去った。
置き去りにされるライドベンダ◯。
というか、
まるで、紅白のステージ上に忘れられた、音撃鼓・火炎◯の
などと思っていたら、
芸が細かい。
「……お腹空いた」
案の
※
翌日、
それも、自作ソフビを持参の上で。
誘いを掛けた
そういう
最初こそ
まるでサンタクロースにでもなったかの
「エーくん、ありがとぉ!!」
「
「俺も、そう言ってくれる
今日も今日とて遊びに来ていた
最初こそ複雑だか、来て
少なくとも現状は全員、自分を受け入れてくれている。
ならば、問題は
「あぁ!?
どういうこった、そりゃあ!?」
などと和んでいたら、トラブル発生。
この場に似付かわしくない、明らかに酔っ払っている、異分子が現れた。
しかも、その男が悪絡みしているのは、自分の友達であり、
タイミングの悪い
そして、塗り絵コーナーからダイナーまでは距離が
おまけに、今この場に成人男性は、自分しか
親御さんと
こうなれば。
「……すみません。
逡巡した
それまで
「……誰だ
俺は今、そいつ
「『話』ってのは、相手と同じ目線に立って、初めて成り立つ物です。
今、あなたがしているのは紛れも
「……んだと?」
一見ひ弱そうな、ヒョロヒョロした
こういう場合、静かな方が
ここまで来た以上、引くに引けない。
「それに、
それで得たクーポンで、お母さんにプレゼントしようとしたんです。
けど、あなたは、そんな彼女の純真を、スパイクで踏み
最初から
「けっ!
くだらねぇし、気持ち悪いんだよ、クソがっ!!」
正当な理由が
そういう手合いだとは承知していたが、それでもやはり、気分が悪い。
そっちがそう出るなら。
「だったら。
あんたは、
「あぁ?
目上に対して、敬語も使えねぇのかよ。
とんだクソガキだな」
「あんたが尊敬するに値しないからだろ。
それに、話を逸らそうったって、そうは行かない。
こっちの言い分も聞かないんじゃ、フェアじゃないだろ。
その程度の良心さえ持ち合わせていない
だとしたら、とんだ
「……
左手で胸倉を掴み、殴り掛からんとする酔っ払い。
だが
思った通り。
この手のタイプは、酒の力を借りないと本音を出せない。
つまり、普段は気弱、ヘコヘコ、ペコペコしている人種なのだ。
続けて、
話してみろ、という合図だと悟り、
「あんたは、ここを『くだらない』と侮辱した。
つまり、好きでこの場に
加えて、こんなみっともない部分を平気で晒しているのを見るに、この場の誰かの保護者でもない。
つまり……現状、あんたがここに
「だから、
「その上で、俺なりに考えた。
なのに、どうして、ここに足を運んでいるのか。
その理由は、ただ一つ。
自分より弱い、複数の人間に、当たり散らしたいたいだけなんだろ?
スマホさえ
周りを顧みずに迷惑を掛ける
自分の心
気分が悪いんだよ、老害」
論破され、たじろぐ酔っ払い。
これで逃げるかと思いきや、
「
友達だぁ!?
大体、そんなガラクタをコケ下ろしたからって、
別に、
悲しい
相手を黙らせないと、気が済まないのだ。
この男は、
それも、
正直言って、救い
自分が脳人であれば、この場で散らしていた
哀れみを越えて侮蔑の目を向けていると、後方で人気がした。
であれば、もう、遠慮は
「それを作ったのは、俺だ。
そして、あんたを作り直すのは……刑務所だ」
瞬間、数人の警察官がブースに現着。
手際
残った数人が、被害状況の確認と、事情聴取を開始した。
「
離れていた
どうやら、カウンターも落ち着いたらしい。
「すみません!
私が、目を放したばっかりに!
皆さん、ご無事ですかっ!?」
「……お陰様で。
助かったよ、
気付いてくれるか怪しかったが、安心した。
「それより」
膝をつき、目線を合わせ、
ずっと後ろで、震えていたのだろう。
二人の目からは、涙が溢れていた。
「怖がらせちゃって、ごめん。
もう、悪い人、
「エーくんは……?」
「エーくん、もう、怖い人じゃ、ない……?」
「え」
二人に指摘され、ハッとした。
言われ、思い返してみれば、先程までの自分は、中々に悪っぽかった。
口調もそうだが、恐らく柄も。
二人が恐れていたのは、
守ろうとした自分にさえ、二人は恐怖を覚えずにはいられなかったのだ。
これは、計算外だった。
しかし、結果は結果。
不測の事態であれど、否を詫びなくてはならない。
「……うん。
もう、平気。
重ね重ね、ごめんね」
「っ!!」
「エーくんだぁ!!」
「いつもの、エーくんだぁ!!」
信じてくれたのか、二人が同時に
倒されてしまった
怖かっただろうに。
勝算と落ち着き、経験値の
おまけに、図らずも、この騒動の
二人を襲い、縛り付けて
それでも、二人は騒がなかった。
怯えてはいるものの、
逃げず、喚かず、無作為に反撃にも出ず、
希望を絶やさず持ち、待ち続けていてくれた。
「
「……大した
自分の腕の中で
そう言おうとしたが、止めた。
見れば、この場に居合わせた子供達、親御さん
「
「今時こんな、立派なスタッフさんが
若い子も、捨てたもんじゃないわね」
口々に、
喜ばしい反面、
自分は、職員ではないのに。
「『仲間』ですよ」
そんな心中を、見抜かれてしまったらしい。
屈み込み、
「
私達の、大切な『仲間』。
それなら、
自分は、『仲間』。
自分達は、『仲間』。
その言葉は、実にスムーズに、静かに、
「……うん」
二人を放し、大の字に寝転がり目を閉じ、
「……どこも、悪くない……」
本当は、ずっと願っていた。
自分も、『トクセン』に入りたいと。
けれど、自分から志願は
エンジニアの自分には、ゲーム作り以外に秀でたスキルなんて、
こんなピンチの時に願い出るなんて、無神経、不謹慎に思えたから。
ただでさえ『トクセン』は、
役割、人柄、
同性で、境遇も似ていたからだと、言い聞かせても。
そんな中、「世界」だの「身分」だのといった、この前の騒動だ。
自分達は、そんなに違わないのに。
確かに性別、出身、名前などは異なるけれど。
同じ人間で、同士で、同居人。
相棒なのに、いざって時に頼って
だから、
自分は、
でも、違った。
自分は、きちんと認識、受け入れられていた。
きちんと、求められていた。
しかも、
それに、完全ではないにせよ、痼は残っているにせよ。
そして、『
であれば。
もう、迷う必要は
「
「
「大事
タイムリーに、現場に合流する
三人は、巻き込まれた方々、警官
「良かった……。
負傷者は
てか、ごめん……。
「
キャパ一杯でしたし、プライバシー保護の観点からして、抜き打ち審査までは
「でも……。
それじゃあ、
そういえば、こういう偽装は得意だったのを、
と同時に、
これは、好機なのではと。
こんな言い方は、
でも、仕方が
他に方法、シチュエーションが思い付かないし。
この機を逃すと、もう二度と言えないかもしれない。
またズルズル、グズグズ引き摺ってしまうかもしれない。
だったら。
ノイズなんか、振り払え。
内なる声に、耳を傾け、従え。
「なら、ユーさん。
お礼ったら、
俺を、『トクセン』に入れて」
「この流れで!?」
「ん」
「『ん』て!」
まさかの提案に、驚く
対する
「え?
本業もあるのに、大変じゃない?」
「ん」
「家事は?」
「楽勝」
「いつから?」
「……今日?」
「
願ったり叶ったり。
じゃあエイトは、ここが持ち場って
諸々の相談とか
「りょ」
こうして、
これまで同様に、またしても早合点、相互理解が足りなかっただけらしい。
数時間後。
他のメンバーにも熱烈歓迎された
※
起死回生を図った、一世一代の大盤振る舞い。
ともすれば無料という
少ししか減額、増額にはならずとも皆、全力全開で楽しんでいた。
一方で、騒ぎに乗じて、妙な気を起こす手合いも少なからず
しかし、
頂けない悪党連中は、
2週目からは、
中でも
ショーの
そうした、徹底した防犯対策、忌憚無いダイマも拍車を掛け、『トクセン』は毎日、大盛況、大繁盛となった。
お祭りムードが落ち着いて来た頃。
後半戦に際して、
優れた性能とマニアックな元ネタ、
同じ頃、バレンタイン付近では、
ラブコン◯を始めとしたソフビ、ポテチ、キャンディ、チョコなどは瞬く間にムーブメントとなった。
それはもう、「バレンタインに『トクセン』のチョコを送ったら意中の相手と結ばれる」なんてジンクスまで
そうした二人の活躍が、遠のいていた客足を、再び呼び戻した。
そして最終、4週目。
伝家の宝刀、「交渉システム」を導入した。
これにより、値上げ、値下げが可能となり、下火になりつつあった動員数を底上げした。
臨機応変に動けるオカミさん。
ロジカルに相手を追い詰める
二人がオフの日に代役として立てられしは。
詭弁論使いの
長文と熱量で相手の戦意を削ぐ
極めつけに、『トクセン』切っての女子力の持ち主、あざとさ王の称号を我が物とする
盤石の布陣で迎え撃ち、またしても見事に打ち負かし、されど笑顔で送り出す。
こうした様々な施策により、『トクセン』は次々に新記録を樹立。
紆余曲折を経、
特に年明けからは、怒涛の展開のオンパレードだったが。
辛くも、来年の存続が決まったのだった。
胸をスリスリ、クンカクンカして来た
犬猿の仲だった
そんな
全員が、歓迎していた。
その場に
最後の最後で
そう。
その場に居た、全員は。
「コングラッデュエーション。
といった所かな」
京都に構えた、『
代表取締役の
「さて、と。
となれば、こちらもそろそろ、ゴッジョブに動かねばなるまい。
君も、そう思うだろう。
同じく、社長室に居合わせた女性。
「……
こんなの……こんなの、横暴ですっ!!」
視線だけで人を殺せそうな、鋭くドス黒い瞳で、彼は
思わず、
「人聞きが悪い。
『業績次第で、運営が決まる』。
元々、君の妹君とは、そういう契約だった。
君も、あの場に立ち会わせていた、立派な証人だ。
相違、異論は
「だからって……!
こんなの詐欺、虚偽じゃないですかっ!!
そんな
「だから、
メタ・メッセージを悟れなかった彼女の見聞が狭く、認識が甘く、バッジョブだった。
ただ、それだけの話だろう。
私が悪し
それに彼女にとっても、バッジョブばかりではない。
これから社会でやって行く、
そう、私は受け取っている。
「……っ!!」
今日も今日とて、一方通行。
質問も確認もせず、有無を言わせぬまま、己の主張を押し通すのみ。
相手は、ただ、従うしか
「……さて、と」
見るからに高級そうな
自分の足で立つ
常に座った姿しか拝めなかったので、てっきり歩けないのかと誤解していた
「バッジョブな余興は終わりだ。
そろそろ、グッジョブに我々も向かおう。
慰労会で、共にゴッジョブに祝おうではないか。
君の妹君と、『トクセン』の、新たなる、ゴッジョブなる門出を」
どこまでも一方的に言い包め、
静まり返った社長室。
ややあってから、膝を
これまで、全体を通しての悪役が
その水面下で暗躍していたラスボスが、
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