6:わかりやすい(?)トクサツこうざ

「……職場バレ?」

「そうなんだよ。

 それで店長、すっかり干上がっちゃってねぇ。

 きっと、取り繕おうとして知恵熱が出たんだろうねぇ」

「それで、俺が回収に?」

「その通りだ。

 すまないねぇ」

「……いえ。

 それに関しては、別に。

 ただ……」



 仕事の息抜きをしていたら、急に『トクセン』に呼ばれ、急いで来てみれば、この有り様。

 ちなみに真冬にもかかわらず、当の本人は、彩葉いろは紫音しおん璃央りおあおがれながら唸っている。



 そんなさまを、不満そうに見下ろす、ヘッド・フォンを着けた小柄な者が一人。

 彼女こそ、『ケーちゃん』こと岸開きしかい 珠蛍みほと

 彩葉いろはと同じく『プレパン』出身で、『トクセン』お抱えの開発者である。



 まだ全スタッフには特撮不案内を明かしていない都合上、そして店長という立場上、テリトリーに運び込まれ。

 そんな背景から、普段から仏頂面の珠蛍みほとが、開発室のぬしとして2割増しで不機嫌だった。

  


「そもそも、隠しごとなんてしたのが間違い。

 後ろめたいから殊更、苦しむ。

 常日頃からオープンにしてれば、こときを得る。

 三八城みやしろ 友灯ゆいたす秘密。

 イコール傍迷惑、最悪のベストマッチ」

「ケーちゃん、気付いてたの!?」

保美ほび

 今は、その話ではない。

 保美ほびたす脱線。

 イコール時間と寿命のエンドレス空費。

 たす恥ずかしい渾名たすコール。

 イコール岸開きしかいの無限イライラ」

「ご、ごめん……」

「分かれば、別に。

 さて、不審者。

 誰だか知らないし知る必要もい。

 即刻、お引取り願う。

 ここは、『トクセン』従業員のみが入室出来できる聖域。

 無関係者は、何人たりとも踏み込ませない。

 岸開きしかいひく不審人物。

 イコール開発室、いては岸開きしかいの平穏」

岸開きしかい……あんたねぇ!」



 立ち上がり、文句を言おうとした璃央りおを、腕と目で、オカミさんが制す。

 殴られそうになった珠蛍みほとは、素知らぬ顔で再び、開発の手を動かす。



「こうなったすべての原因。

 イコール三八城みやしろ 友灯ゆい

 三八城みやしろ 友灯ゆいが周囲に最初からすべて説明してさえいれば、ここまで入り組みはしなかった。

 岸開きしかいの部屋に無断で入られることも、岸開きしかいが仕事を邪魔されることかった。

 熱暴走、フリーズ。

 イコール三八城みやしろ 友灯ゆいの自業自得。

 岸開きしかい

 イコールなにも間違っていない」



 そう。

 珠蛍みほとは、正しいことしか言っていない。

 すべて、友灯ゆいが自分で招いた種で、それが連続で芽吹いてしまったにぎない。 

 ゆえに、誰もなにも反論出来できずにいた。



「……違う」



 英翔えいしょう以外は。



「……ユーさんは、その限りじゃないんだよ。

 人一倍真面目で、鋭感で、悩んで。

 だからこそ、人一倍、重荷になっちゃうんだ。

 ユーさんは、ハルトマン寄りだから」

「ユーさん。

 =三八城みやしろ 友灯ゆいか?」

「そう」

「何が違う?

 岸開きしかい

 イコール不可解、不愉快。

 速やかに、岸開きしかいたす答えを要求する」

「あなたは、間違ってる。

 タイミングと、言い方を」

何故なぜ、そこまで余所者よそものにプラスされなきゃならない。

 岸開きしかい

 イコール憤慨」

「答えを求めたのは、あなた」

「(たすカチコミ)。

 イコールそっち」

「自分の店長の一大事に、非協力的ぎる」

「好きでなったわけじゃない。

 岸開きしかいも、三八城みやしろ 友灯ゆいも。

 見ず知らずの相手に、そこまで言及されるいわれもい。

 ず、たす名乗りせよ。

 初対面ひく自己紹介。

 イコールモラルの欠如、不信感」



 メンチを切り、額を擦り付けそうなまでに衝突する二人。

 そんな二人の間に、オカミさんが割って入る。



「そのくらいにしておやり。

 今は、喧嘩してる場合じゃあないだろ。

 この問題を如何いかにして突破するかが先決のはずだ」



 もっともな指摘を受け、揃って静まる二人。

 さながら冷戦状態の最中のような空気の中、最初に沈黙を破ったのは英翔えいしょうだった。



森円もりつぶ 英翔えいしょう

 ユーさんの同居人」



 遅ればせながらの自己紹介。

 それを受け、珠蛍みほとの渋面が、わずかに柔らかくなった。

 一つだけな上に今更感が漂っていたが、不満点が解消されたのが効いたらしい。



「……岸開きしかい 珠蛍みほと。  森円もりつぶ 英翔えいしょう

 あなたたす三八城みやしろ 友灯ゆい

 イコールステディ?」

「どっちかってーと……スタディ?

 勉強仲間というか、特撮のコーチ」

「掻い摘めた。

 イコール同居人だけ?」

「だけ」

「同居人。

 イコール態々わざわざここまで、ダッシュ?」

「俺にとっては」

「……」



 背凭れに頭を乗せ、少し考え、珠蛍みほとは姿勢を正した。



「特撮好き。

 イコールほぼ善人。

 これまでの態度。

 イコール善人。

 岸開きしかいは、森円もりつぶ 英翔えいしょうを、そこそこ気に入った。

 森円もりつぶ 英翔えいしょうのメモリひく岸開きしかいの今までの失言を乞う」

「こっちこそ。

 いきなり、ごめん」

「お互い様。

 マイナスかけるマイナス。

 =プラス」

「友達?」

「突飛。 

 それとこれとは、話が別。

 岸開きしかいひく岸開きしかいの手。

 イコール作業の致命的な遅延。

 第一、今現在、そこまでの関係ではない。

 よって、握手は却下。

 森円もりつぶ 英翔えいしょうに、右手を戻すことを要求する。

 なにより、理由は不明だが。

 岸開きしかい森円もりつぶ 英翔えいしょうを根本的に受け入れられない」

「……森円もりつぶ 英翔えいしょう、了解した」

「別に口調を真似る必要は皆無。

 岸開きしかい、やや不愉快」

「変人の自覚はるんだ」

「撤回。

 岸開きしかい、まぁまぁ不愉快。

 これより森円もりつぶ 英翔えいしょうに、グー・パンチをクロスする」

「まぁまぁ、ケーちゃん。

 せめて、プラスにとどめておいて」

「ターゲット、変更」

「私を殴ろうともしないでよぉ!?」

「人間ひく脳|。

 =《イコール》保美ほび

ひどいっ!?」

「暴走中のあんたも大概でしょうが」



 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる二人。

 戸惑う英翔えいしょうの肩に、璃央りおがポンッと手を置く。



「気にしないで頂戴ちょうだい

 アゲサゲが激しいタイプなのよ。

 おまけに不機嫌な時は、意味不明な数式仕立てにして会話するの。

 回りくどいったらいわよね」

「友達……」

「そこ?

 てか、割とショックだったのね。

 まぁ、そのうちまた親睦会をもうけましょう」

「友達?」

「あんたと、あたしが?

 それでいわ。

 かくずは目先の問題から解決しましょう。

 オカミさんの言った通り、ね」

「……うん

 森円もりつぶ 英翔えいしょう

 イコール承知」

「さてはハマったわね、その口調」

「解決もなにも、答えは出ている」



 彩葉いろはに馬乗りになり、変な髪型にいじりながら、珠蛍みほとが言う。



三八城みやしろ 友灯ゆいひく厄介事。

 イコール平穏。

 その方程式を成り立たせる方法。

 イコールただ一つ。

 三八城みやしろ 友灯ゆいの友人たす特撮」

「つまり、『ボスの友達を特撮に沼らせて、イメージや偏見を払拭した上で、免疫なり知識なり付けろ』と?」

「そんなこと出来できるんですか……?」

「それは、岸開きしかいの認知する所ではない。

 ヒントはプラスした。

 あとは、自分達で解決をプラスすればい。

 グッド・ラック」



 助言だけして、珠蛍みほとは作業に戻った。

 ちなみに、彩葉いろはの髪は黒十字王みたいになった。

 中々の怪作である。



「作戦会議が必要ね」



 そのままでは話に集中出来できないので、彩葉いろはのヘアを戻しながら、璃央りおが切り出す。



さいわい、紫音しおんあたし、オカミさんと保美ほびは、今日は早上がり。

 全員、明日も出勤だけど、飲み会の時間で補填すれば、どうにかならないかしら?」

「賛成だよ。

 流石に、この調子の店長は見過ごせないからねぇ」

「ぼ、ボクも……です……」

「私も同意見です。

 でも、場所はどうしましょうか?」

「俺の家。

 スペースなら確保出来できると思う。

 どうせ、ユーさん連れ帰らなきゃだし、好都合」

「噂の大豪邸に、招待してくれるっての?」

「問題い。

 ユーさんの同僚、特撮好きなら、大歓迎」

「私は、未経験なんだけれど、いのかい?」

「好感持てるから、オッケーです」

うれしいことを言ってくれるじゃあないか。

 恩に着るよ」

「話は纏まったわね。

 しからば、作戦開始よ。

 あたしが車を運んで来るから、その間に英翔えいしょう保美ほびでボスを運んで頂戴ちょうだい

 オカミさんは、家族に連絡入れてください。

 紫音しおんは、待機」

「リオねぇ?」

「と、言いたいとこだけど、あたしと一緒に車に」

璃央りお?」

「じゃなくて。

 スタッフやお客様にバレないようみんなをリードして」

「オッケー」

「分かりました」

「うん」

「心得たよ」



 スクラムを組み、士気を高める5人。

 そんなさまを見て、満更でもない岸開きしかい

 


 開発室にいムードが流れ始めた、その時。



つえぇ頼もぉぉぉぉぉ!

 殿とのぉ!! 隊長殿どのは、つえぇご無事であらせられまするかぁ!?」

「チィフゥ。

 シィナがペコテンゥ、満たしに来たよぉ」



 何やら騒がしい声とユルフワな声と共にドアが開かれ、たくましい男と不思議ちゃん風の女性が入る。

 刹那せつな英翔えいしょうを除く5人が引きった顔色を見せた。

 


「ふ、二人共。

 どうしたのよ?

 もう、上がったはずよね?」

「何を申しまするか、姉者!!

 そんなよえことを気にして、よえぇ悠長に構えてる場合ではつえぇございませぬ!!

 隊長殿どのが、つえぇ倒れられたのですぞ!?

 事態は、つえぇ一刻を争う……ぐ様、隊長殿どのつえぇ気合をつえぇ注入せねば、つえぇ従業員の名がつえぇ廃る!!

 ここでつえぇやらねば……つえぇ男ではつえぇぬぁいっ!!」

「シィナわぁ、こういう時わぁ、美味おいしぃ物を、食べればぁ、美味おいしく行くと、うんだぁ。

 さぁ、チィフゥ。シィナの特製とくせぇおいしめざでぇ、美味おいしぃ元気を、美味おいしく満腹してぇ」



 ……この人達か。

 まるで話が進まないからという理由で、この前、飲み会に呼ばれなかったのは。

 理由は、推して知るべし。

 糸口が掴めず、ひたすら平行線だからだ。



「あれぇ?

 美味おいしそぉな、イケメンくんだぁ。

 初めましてぇ。シィナわ、小美おい 詩夏しいなだよぉ。

 美味おいしくしてねぇ。

 君に出会えてぇ、シィナの心ぉ。

 バリカタ、マシマシにぃ、デリシャスってるぅ」

「自分は、守羽すわ 拓飛たくとであります!!

 以後、つえぇお見知り置きを!!」

森円もりつぶ英翔えいしょう……」

「もしかして、つえぇ新スタッフ殿どのであらせまするか!?

 つえぇ大歓迎致しまする!!

 英翔えいしょう殿どのぉ!! これから、つえよろしくお願い致しまする!!」

「距離感……」

「はーっはっはっはぁっ!!

 なぁに、よえぇ照れることなどありますまいっ!! 

 共につえぇ大勝利し、つえぇ輝かしいつえぇ『トクセン』のつえぇ未来をつえぇ勝ち取りましょうぞ!!」

「お手柔らかに……」

「って、違ぁぁぁうっ!!

 つえぇこんなことをしている場合ではござりませぬ!!

 一体、何奴がつえぇ隊長殿どのつえぇ毒を持りおった!?」

「毒じゃないわ、拓飛たくと

つえぇこうしてはおられぬ……自分、つえぇ大薬草をつえぇ探して来るでござりまするぅ!!」

あたしの訴えを聞けぇ。

 草なら、あんたがイング形で生やしてる分で事足りるわよ」

「おいしろぉ。

 シィナも、セットするぅ」

つえぇなりませぬ、詩夏しいな殿どの!!

 これから自分の行く手を阻むは、数多のつえぇ罠……!!

 いつよえぇ危害が及ぶともしれません!!

 無論、自分とて、つえぇ全力全開でつえ詩夏しいな殿どのつえぇお守り致しまするが!!」

「レッツ・ゴォ」

「し、ししし詩夏しいな殿どのぉ!!

 いきなり、おとこの手をつえぇ握りまするとはっ!!

 そんな、つえぇ強引なぁ!!

 でも、嫌いではない……つえぇ嫌いではないぃぃぃぃぃ!!

 うぉぉぉぉぉ!! つえぇ分かったでござりまする!!

 不肖この守羽すわ 拓飛たくと!!

 あなたのつえぇ心につえぇ応えるためにも、我が命を賭けて、つえぇあなたをつえぇ死守致しまするぞぉ!!」

「あははぁ。

 拓飛たくとくん、マジおいしろぉ」

つえぇお邪魔致しましたぁ!!

 皆さん!! 隊長殿どのこと、くれぐれもつえぇお願い致しまするぞぉ!!

 しからば、つえぇごめんつかまつるで候ぅ!!」

「まったねぇ。

 美味おいしそぉなぁ、イケメンくぅん。

 今度わぁ、シィナとぉ、デリシャろぉねぇ」



 暴風のように現れ、竜巻のように騒ぎ、嵐のように去る二人。

 なにはともあれ、ホッとする5人。



「さっさとぉ……!!」

「「「「「……あ」」」」」



 忘れていた。

 詩夏しいな拓飛たくとが、余計な置き土産をしていたことを。

 テリトリーにいきなり踏み入られ、荒らされ、ご立腹な珠蛍みほとを。



「……さっさと、失せろぉ!!」



 それまでの機械的な振る舞いは、どこへやら。

 バルバルバロッサと言わんばかりに開発途中の発明品をなんでも投げ付け、力付くで面々を追い出しにかかるマイ・ペース女王。



「そ、総員、退去、退避ぃ!!

 及び、作戦、開始ぃ!!」



 璃央りおの指令を受け、それぞれにミッションを遂行せんとする一同。

 


 今日も今日とて、『トクセン』での時間は賑やかに過ぎ去るのだった。





 友灯ゆいの看病を、オカミさんが快諾してくれた。

 なんなら、みずから進んで買って出てくれた。



 英翔えいしょうは、共にエレベーターで2階まで上がり、友灯ゆいの寝室の前まで案内し、あとことはオカミさんに一任した。

 子育て経験が豊富な彼女なら、特に心配はらないだろうし、万が一の場合は、文明の利器ことスマホを頼れば問題いだろう。

 念のため、ID交換もしたし、RAINレインで状況確認も取れる。



 こういう時、年長者がてくれると、本当ほんとうに心強い。

 不安がる英翔えいしょうを、オカミさんは励ましてくれた。

 大丈夫だから、連絡ならいつでもいくらでもくれて構わないと。

 彼女と親しくなれて本当ほんとうに良かったと、英翔えいしょうは心から思う。



 一方その頃、ゲスト・ルームでは。



「でゅぁくぁるぁ!

 どぅぉして、このさが分からないんですくぁ!?

 あなたたち、それでも本当ほんとうに『トクセン』のメンバーですくぁっ!?

 この素晴らしさを理解出来できない、あまつさえ阻もうだなんて、脳か心か視神経に欠陥でもるんじゃないですくぁ!?

 保美ほびい病院、紹介して差し上げますゆぉ!?

 ここまで説明しても賛同してくれないなんて、ただただ恐怖します!

 こぉぉぉわぁいよぉ! いぃやぁだぉ!

 なぁぁぁんで、そぉいぅことするんですかぁぁぁぁぁ!?」

「あんたこそ、人の話を聞く機能を損ねてるんじゃないの!?

 ここは絶対ぜったいに、これ一択でしょ、常考!!」

「ボクも、引かない、です……。

 ここばかりは、譲れない、です……」

「……」



 飛び交う、売り言葉と買い言葉。

 ヒート・アップしっ放しのテンション。

 折衷案や妥協点さえ一向に探そうとしない特撮ファン達。

 極め付けに、彩葉いろはの額でチカチカと忙しく点滅するキブンガー。

 戦場と化したリビングの模様は、控え目に言ってカオスだった。 


 

 すでに目的をたがえていそうな景色を遠巻きに眺め、英翔えいしょうは思った。

 こっちと友達になったのは、失敗だったかなぁと。

 ユーさんが俺の立場なら今頃、オカミさんの元に戻っていた所だろうなぁと。



 余談だり

 彩葉いろは台詞セリフは地味にラブライ◯のネタだったりする。

 主人公がオレンジだったので試しに観てみたら、シリーズに傾倒してしまったのだ。

 もっとも、あまりにマニアックぎるので、英翔えいしょうを始めとして、その場にた者は気付きづかなかったが。



「あ、あのぉ……」



 固まっていても、状況は好転しない。

 意を決し、英翔えいしょうは踏み込んだ。



 思った通り、それまで睨み合っていた三人が、一斉に英翔えいしょうを睨んだ。

 注目を独り占めしたことで、英翔えいしょうは場違いにも舞い上がった。

 今までろくにコミュニケーションを取って来なかったため、誰かに構って、気付きづいてもらえるのがうれしいのである。



 が、英翔えいしょうは少しして正気に戻った。

 この会合が、友灯ゆいためであるのを思い出したのだ。



みんな

 一旦、落ち着こ。

 えず、それぞれのオススメを、一人ずつプレゼンして。

 審判なら、俺が務める。

 同僚じゃないし、特撮の心得のる俺なら、公平なジャッジが出来できると思う。

 ほいで、誰から始めるのかは正々堂々、ジャンケンで決める。

 で、どう?」



 ジャンケン。

 雌雄を決する際に広く用いられ、誰もを納得させる効力、決定権を司る遊戯。

 百年近くの長きに渡り広く親しまれており、その認知度は最早、万国共通レベル。

 特撮界隈では、ちょあーな主人公と神様が、世界の命運を掛けて最終回で繰り広げたのも記憶に新しい。



 そんな今、絶賛マイ・ブーム中のジャンケン。

 つまり、並々ならぬ特撮愛を誇る三人は、抗う術を持たないのである。

 それを、英翔えいしょうは読んだ。

 その上で、提案したのだ。



「……分かりました」

「乗ったわ」

「以下同文、です……」



 こうして始まった、アピール合戦。 

 最初にスピーチ権を獲得したのは。



「ご覧の皆様、こんばんわ。

 大変長らくお待たせ致しました。

 それでは、これより、お披露目を始めさせて頂きます。

 申し遅れましたがわたくし、本日、司会進行を務めさせて頂きます、『トクセン』所属、保美ほび 彩葉いろはと申します。

 どうぞ、よろしくお願い致します」



 何故なぜか、新番組の制作発表らしくおごそかに始めた彩葉いろは

 キブンガーも外し、カラフルではない白衣を纏い、教鞭を携え、髪を整え、鳴りを潜め。

 ただ己が推し作品が如何いかにテーマに沿っているかを力説せんとする。

 さながら研究発表会を呈している雰囲気に、『プレパン』出身であるのをヒシヒシと感じさせられるギャラリー。

 まだ開始前だというのに、すで彩葉いろはの勝利は目前となりつつあった。



「突然ですが、英翔えいしょうくん。

 未見者が興味を持ってくれそうな特撮ポイントとは、なんだと思いますか?」

「……派手な、アクション?」

「そうです。

 やはり特撮と言えば、ド派手な『アクション』、『バトル・シーン』です。

 リアルと見紛うCG、人間離れした動き、てんこ盛りの爆発、崩壊するビルやエトセトラ。

 後世まで語り継がれる名シーンと、優れたアクション・シーンは、ゴールデン、あパートナーなのです。

 そして、派手さをウリにするなら、やはり洋画。

 これなら、子供向けという枠に捕らわれずに、アピール出来できるのではないでしょうか。

 そして今回、私がオススメするのは、ドラマではなく映画。

 きっと、激務に追われ多忙な毎日を送っている女性でも、視聴可能だと思います」

「おー……」



 意外と、しっかり、しっとり纏めて来た。

 これなら、窓口は広く、敷居は低く、丁度い。

 やはり、彩葉いろはが一歩リードしているか。



 などと英翔えいしょうが思っていたら。



「以上の条件を満たす神作として、『パシフィック・リ◯』と『インフィニティ・ウォ◯』を私は提案します」

「却下」



 肝心のタイトルが玄人くろうと向けだった。



「なんでぇぇぇぇぇ!?」

「そんな、峰田く◯の中の人に『かっちゃ◯嫌い』って言われた爆豪◯んの中の人みたいな声出されても……」



 更に言えば、化けの皮が剥がれている。



「だって、ピッタリでしょぉ!?

 条件には、当て嵌まってるでしょぉぉぉ!?

 メカニカルな所とか、魔法の色とか、サイッキューでしょぉ!?」

「初心者向けじゃあないかなぁ、と……」

「し……しまったぁぁぁぁぁ!!」

「ところで、『サイッキュー』って、なに?」

「『最強にキュート』って意味のホビ語」



 どちらも、死亡シーンが生々しく衝撃的で、英翔えいしょうですら未だにトラウマになっているレベル。

 おまけに後者は、他に10本ほどの映画を追い掛けていないと、そもそも話に付いて行けない。

 これでは本末転倒、今回の議題に沿っていない。



 よって、不採用である。



「それじゃ、次はあたしの番ね。

 とくとお聞きなさい、英翔えいしょう。 

 この世紀のイケビジョオーことリオ様の、マンツーマンの演説を。

 こんなサービス、滅多めったにしないんだからね」

璃央りおさん、◯クロス好き?

 さっきから、それっぽい台詞セリフが多いし」

「だから、聞きなさいって。

 まぁ好きだし、ネタ振ったあたしも悪いけれど。

 ちなみに、あんたの推しは?」

「カナ◯さん」

「ぽいわね。

 あたしは、シェリ◯よ」

「もっと、ぽい」

「それについては後で談義しましょう。

 可能であれば、今日中に。

 脱線したので、戻すわよ。

 の前に、あたしもフォーム・チェンジをと」

「あ〜!!

 それ、保美ほびのぉぉぉぉぉ!!

 目が、目がぁぁぁぁぁ!!」

「ふふっ。

 一度、着てみたかったのよねぇ、これ」



 彩葉いろはの白衣と眼鏡を奪い、ノリノリの璃央りお

 ちなみに、ボケていられる辺り、彩葉いろはにも余裕がるらしい。



「今回、あたしが押し出すポイントは、ズバリ『恋愛』よ。

 女は元来、恋バナを主食に生きている動物。

 人によりけりだろうけれど、大人になっても恋バナが好きなレディーは一定層、るわ。

 更に聞く所によるとボスは、小学校から大学までエスカレート制の女子校だったとのこと

 そして卒業後は、故郷を離れており、帰郷するまで交際経験もし、つまり。

 くだんの友達は、ほぼ間違いく、同性。

 だとすれば、訴え掛けるのにベストなのは、恋愛シーンなのよ」

「ふむ……」



 これもまた、中々に魅力的なアプローチ。

 しかも、友灯ゆいの友達が女性でるのも見抜いている洞察力。

 流石さすがは、シナリオ経験者といった所か。

 否が応でも、期待が高まる。



 と、英翔えいしょうが思った矢先。



「という訳で、あたしがオススメするのは、『ジェットマ◯』と『昼ドライダーキ◯』よ」

「ボッシュート」



 肝心の恋愛シーンがドロドロしぎていたので、不許可となった。



なんでよぉ!?

 クラシカルだから、駄目ダメだってのぉ!?」

「そういうんじゃなくて。

 あれが、特撮のスタンダードだと思われるのは、不味まずいと思う……」

「じゃあせめて、ゴーカ◯やゼンカ◯のジェットマ◯回だけでも観させて頂戴ちょうだいよぉ!」

「それ、途中の一回だけ……。

 あと、ゼンカイ脳が通常運転だと誤認されるのは、困る……」

おっしゃる通りだわぁ!」



 前者は、戦隊で四角関係になったり、デートで戦闘に遅刻したり、敵幹部が元カノだったり、身を引いた男性が一般人に刺されて最終回に退場したりと、ちょっとトレンディぎる。

 そして後者は、SF要素も癖も強めで、おまけに不倫や浮気も描かれており、危険過ぎる。



 なにはどうあれ、却下である。

 却下ったら却下である。



「最後は、ボク、です……」

「の前に、紫音しおんさん」



 紫音しおんの前に移動する英翔えいしょう

 ちなみに、紫音しおんは優しいので、彩葉いろはの白衣や眼鏡を強引に奪ったりしない。 

 また、璃央りおが着させようとしているのも、しっかり拒んでいる。



「は?

 うち紫音しおんに、なに仕出かそうってのよ?

 ことと次第によらずに、間髪入れずにボコるわよぉ?」

「せめて、よってあげようよ、リオねぇ

 それで、英翔えいしょうさん……。

 ボクに、何か……?」

「それ」

「……?」



 趣旨が分からず、小首を傾げる紫音しおん

 対する英翔えいしょうは、いつものアンニュイな声で告げる。



「俺のこと、怖がらなくて平気。

 遠慮とか、『さん付け』とかせずに、リラックスして。

 その方が、こっちも気楽」

「……」



 まさかの展開に、紫音しおんは目をパチクリさせ、恥ずかしがる。

 が、やや経ってから、目を閉じ顔を真っ赤にし、明後日の方を向きながら返す。



「……ありがとう。

 えっ……『エー、くん』……」

「……」



 エーくん。

 =愛称。

 =友達。

 =もっとみんなと親しくなりたい。

 =エンムス・ビム太郎たろう(運命の赤)の乱射待った無し。



「『シーくん』、ズッ友」

「ちょっとぉ!

 いきなり、なんなのよぉ!!

 てか、あたしの許可く、勝手に紫音しおんと仲良くなるなぁ!

 あんたからのあだ名呼びも、全面禁止ぃ!!

 てか、なによ、これぇ!?

 なんでいきなり、あんたのIDが入って来てるのよぉ!?

 さては、岸開きしかいね!?

 それ、あいつの発明品ね!?」

「わ~、常備してくれてるんですねぇ。

 プレゼントした甲斐かいが有りましたよ」

保美ほびぃ!!

 あんたか、渡したのぉ!」

「え、えへへ……。

 エーくん、エーくん……。

 シーくん、シーくん……」

「な……!?

 英翔えいしょう、あんた……!!

 あたしの眼前で、あたしを差し置いて、あたし紫音しおんに、こんなデレ顔させるなんて……!

 い度胸、趣味してるじゃない!!

 屈辱だけど、褒めてつかわすわ!!」

「どっち?」

「ちょっ……!?

 り、リオねぇ

 無断撮影、めぇっ!!

 せめて、ポーズとか構図とか決めてからにしてっ!」

「あ、他はいんですね。

 そこさえクリアすれば、OKなんですね」


 

 ツッコミとボケが代わる代わる展開させるリビング。

 すでに滅茶苦茶な様相を呈している作戦会議。



 しばらくして落ち着きを取り戻し。

 ようやく、紫音しおんがスピーチを始める。



「ボクの掲げたテーマは、『ストーリー』です。

 エンタメである以上、最重要視すべきは、屋台骨の設定やシナリオ。

 そこでボクは、数る特撮作品の中でも特に骨太な、この作品を推します。

 他の特撮と比べて、そこまで長くもなく、配信にも強く、話も大人向けなこの作品は、きっとお気に召すと思います」



 自信を持って前説する紫音しおん

 英翔えいしょうに頼られたからか、その瞳には、いつものナヨナヨした雰囲気が無くなっている。



「あぁ、紫音しおんあたし紫音しおん……。

 いつの間にか、こんなにも立派になって……。

 ママ、うれしいわ……。

 あんなにも、凛々りりしく、もう、もう、もぉ……。

 ……抱かれてぇ……」

「セフィロ◯参戦が発表された時の、やしろ◯ずき家ばりに世界一喜んでますね。

 あと、そっちなんですね。

 相変わらず、ドS受けですね。

 それと、何度でも言って差し上げますが、紫音しおんくんにとって璃央りおさんは、ママでも年上でも保護者でもありませんよ」



 横で号泣し、授業参観みたいなスタンスで、今まででもっとも直接的に直情的な発言をしながら、恍惚として聴き入る璃央りお

 一方、慣れているのか、冷静かつ的確に拾う彩葉いろは



 一方の英翔えいしょうは、すでに嫌な予感がした。

 紫音しおんの口から『配信に強い』というワードが出た時点で、なんとなく察してしまったのだ。



「以上の観点から。

 ボクは、『アマゾン◯』をオススメします」

「ノー」



 すでに読み切っていた英翔えいしょうが、即座にペケを出す。

 対する紫音しおんは、首を傾げる。



「どうして?」

「色々とキツいから」

「どこが?」

「全部」

「……?」

「……」



 アマゾン◯。

 例えるならば、東京喰◯(特撮版)。

 サブスク的にも話数的にも見易い環境は整っているが、中身はてんで見易くないヘビーっり。

 絵面的にも、展開的にも、グロいしハード。

 普通に死人とか犯罪者とか裏切り者とかわんさか出て来るし、ハンバーグは勿論もちろんなんなら水すら含めなくなってしまう危険性までる。



 もし、友灯ゆいの友達がエンタメ慣れしていないのであれば殊更、不向きである。

 これは、流石さすがに容認、素通り出来できない。

 二度と観たくない傑作という二つ名は、伊達だてじゃないのである。



 まったもって、予想外。

 一見、人畜無害そうな紫音しおんが、まさか断トツで血みどろな作品を出して来るとは。


 

 なにはともあれ、不採用。

 まさかの、総ボツ、沈没である。



 ここに来て、英翔えいしょうは初めて気付きづいた。

 これは最初から明らか、致命的な人選ミスだったと。



 職業にもしている都合上、自分と比べて三人は、特撮に触れている時間が長い。

 日常として染まり過ぎているがゆえに、一般人にとっての『普通』とは掛け離れてしまっているのだ。

 自分がアキバレンジャ◯レベルだとするなら、三人はシーズ◯痛レベル。

 あまりに特撮に通じ過ぎた結果、彼女たちの常識は、特撮に触れていない層には通じづらくなってしまっているのだ。

 これでは、手詰まりである。



 こうなった以上、共感ポイント多そうな『トクサツガガ◯』、特撮要素が控え目な『初恋芸◯』、ジャニー◯揃いの『ザ・ハイスクー◯ ヒーローズ』で無難に済ませようか。

 全部、話数も短いし……。

 などと英翔えいしょうが思っていた、その頃。

 


「皆さん、お疲れ様です。

 話し合いは、順調ですか?」

「ニーナが、来たー」

「マーマも……マーマも忘れないであげて、新凪にいな……」

「ニーナとマーマが、来たー」

「ありがとう……。

 マーマ、頑張るから……。

 次は、気を遣わせずに、最初から呼んでもらえるよう、精進するから……」

「マーマ、がんばえー」



 ヤンデレ彼女の父親ばりに、なにやら頼もしくさそうな様子で、現れる親子。

 友灯ゆいの友人が訪れる数時間前に、『トクセン』への正式加入が決まった新メンバー、若庭わかばが、新凪にいなと共にやって来たのだ。

 二人に視線を向けたタイミングで、今度はオカミさんが登場する。



「帰りが遅くなるのを伝えたら、『どうしても差し入れしたい、力になりたい』って聞かなくってねぇ。

 結果的にとはいえ、勝手に招いてしまって、すまないねぇ。

 みんなにも連絡していたんだが、相当、白熱していたようだねぇ」



 一同がスマホをチェックすると、確かにオカミさんから通知が入ってしまっていた。

 四人は、ぐに頭を下げる。



「すみません、オカミさん!」

「ごめんなさい……」

「申し訳ありません!」

「お手数、ご心配お掛けしました」

いってことさ。

 それより、あまり奮わないと見た。

 ずは、腹拵はらごしらえと行こうじゃあないか。

 じゃないと、戦は出来できないからねぇ」



 オカミさんの言うことも、一理る。

 時刻は、すでに夕方ぎ。

 そろそろ、夕食時である。



 代表して、この家の主である英翔えいしょうが、若庭わかば新凪にいなに声をかける。

  


えず、座ってください。

 そして、一服しましょう。

 今、クッションを用意するので、もう少し待っててください」

「は、はいっ。

 お言葉に甘えさせて頂きますっ!」

「エーちゃん、ありがとー」

「に、新凪にいな

 いきなり、そんな、フレンドリーに迫っては、悪いわ!」

「エーちゃんです。

 じゃんじゃんお呼びください」

「あ。

 大、丈夫? なんです、ね……。

 ご厚意、痛み入ります」



 英翔えいしょうにとってはむしろ、ご厚意どころか、ご褒美だった。



「ところで、オカミさん。

 ユーさんの、様態は……?」

「熱は下がったし、呼吸も安定した。

 今は、ぐっすり眠っているよ。

 やっぱり、自室に来れて安心したんだろうねぇ。

 しばらくしたら、目を覚ますと思うよ」

「……良かった……。

 ……ありがとう、ございます……」

「なぁに。

 困った時にサポートするのが、最年長たる私の責務さ。

 っても毎日、困ってるけどねぇ」



 オカミさんからの吉報に、安堵する一同。

 こうして、いムードが流れ始めた、その時。



つえぇ頼もぉぉぉぉぉ!

 こちらに、つえぇ隊長殿どのつえ御座おわしまするかぁ!?」

「チィフゥ、るぅ?

 出張しゅちょぉ版『ほのぼぉの』なシィナが、デリシャスにハピネス、おとどけデリバリーしに来たよぉ。

 おいしろでしょぉ。

 あははぁ」



『!?』



 予期せぬ、騒がしい追撃。

 インター・ホン越しに、なにやら覚えのる熱気と語気、フレーズが届く。

 モニターを見れば、守羽すわ 拓飛たくと小美おい 詩夏しいなの姿が視認された。

 猪や魚を背負っている辺り、山帰りらしい。

 薬草こそ持っていないが、本当ほんとうに出向いたのだろう。



「な、なんで、ここが……」

「悪目立ちするからでしょうが。

 サイズ的に」

「キャップのお家、『トクセン』でも話題になってたし……。

 ていうか、ここの完成記念パーティに、ボクと拓飛たくとは招待されたし……」

「……なんで?」

「山からだったら一望出来できるでしょうし」

「盲点だった……」

「そもそも、そこを懸念しなきゃならない状況って、そうそういのよ。

 本来なら。

 あの二人みたいのが、規格外に企画外なのよ」

「どどどど、どうしましょう!?

 流石さすがに、無視を決め込むのは、失礼ですよね!?」

「かといって、この状況下で人数を増やすのも、悪手だねぇ。

 二人には、申し訳ないが」

「面白い人、いっぱーい!

 動物園みたーい!」



 新凪にいな以外が、慌てて打開策を模索する。

 


 と、その時。



「でっかいお城ー!!」

「おい。

 本当ほんとうに、ここで合っているのだろうな?

 なにかの手違いではないのか?」

「超合ってる系だし!

 うちの情報網、超ナメんな系だし!」

「だし!

 ママ、マジ天才!」

「サンキューだし、結愛ゆめ!」

いな

 メモとアプリに従っただけ。

 そして、にわかには信じがたいという話」

「それ言ったら、うちの現状だって大概だし。

 旦那のバーター引き受けたら、友達になったモリマルくんがユヒの知り合いとか、超ウケる系だし」

「言い得て妙。

 ところで、妻のアユ、娘の結愛ゆめ、彼の同僚で代理の私はさておき。

 なんで、ホティまで」

「知れたことを。

 あれからユヒが心配であった。

 そして、仲間外れが寂しいからである」

「あははっ!

 ホティ、今日も今日とて、超ダサカ系だし!」

「二人共。

 目的をたがえないで。

 今日のメインは、あくまでも、ターゲットへの挨拶と、ユヒの見舞い。

 失念、油断しないで」

「その物騒な呼び方こそ、目的を違えてはおるまいか?」

「ところで、あのにぎやかな二人組、なに系だし?

 新手のお笑い芸人さん系だし?

 片方、真冬に半袖て!

 温度差、ダブルで超ウケる!」

「ウケる!!」



『!?』



 予期せぬ追撃。

 パート2。



「ま、まさか……」



 心当たりがった英翔えいしょうは、急いでスマホを確認。

 そこには、オカミさんのみならず、別の者からのメッセが来ていた。

 送信者は先日、職安『アッセンボー』で知り合った友人。

 なんでも、「急用が入り不参加を余儀なくされた自分の代わりに妻と娘、同僚が挨拶に向かう」という内容だった。



 それだけなら、まだい。

 が、今は思わしくない。



 その理由は、ただ一つ。

 彼女たちこそが、友灯ゆいの友達。

 当人が目覚めていない上、まだろくに準備が整っていない状態で鉢合わせてしまった、本作戦のターゲットでもあるからだ。

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