5:卒・業・切・苦
「あ、ユーさん。
いらっしゃーい。
いや……おかえり?」
思いっ切り、店内に。
「何やっとんじゃ、おめぇぇぇぇぇ!?」
「
いつも、ユーさんがお世話になってます。
これ、つまらない物ですが、お近付きの印に、良かったら受け取ってください」
「話聞かんかい、グォラァ!!
大体、『ルパパ◯まんじゅう』と『ユグドラ汁』って
「え!?
もしかして、お手製でござりますですか!?
少なくとも前者のアイテムは、
「この前、
てか、
1位は、満面朱を注いで蒸気出しながら、
2位は、強気でドSなフィジカル中のギャップ萌え
3位は、ツン
4位は、スーアク中のキレッキレな
5位は、
6位は、優しく穏やかに寄り添ってくれる
7位は、無邪気で楽しそうに美味しく料理してくれる
8位は、一人で
9位は、年甲斐も
10位は、雷と虫と注射と暗所と高所と閉所を怖がって泣きじゃくる
以上、
あたしのかんがえたさいきょうの
「リオ
恥ずかしいし、その比較とランキング、要る……?
ボーボ◯さんみたいになってる……。
その盤の石、薄紫しか
もぉ……リオ
あと、ありがと……」
「今時は、料理上手の男も多いんだねぇ。
時代は変わったねぇ」
「カラフルおにいちゃん、ごちそうさまー」
「ちゃんとお礼言えて偉いわよ、
「いや、揃いも揃って、適応性の高さっ!!
てか
そして、シオコン極めれり、アドリブ力ヤッバ、
盛大にズッコケそうになったのを
サポート役と
「あのぉ……結局、どちら様で?」
「
自分以外にもストッパーが
先程、
相変わらずの、自分勝手さである。
「失礼します」
困りながらも満更でもなさそうな顔を
彼女は、そのまま
「結局、司令とは、どういったご関係で?
いや、私は別に
今のだって、閑話休題したかっただけで、『
いや、思ってるだろ、どう見ても。
この場に
「……あんた
「羨ましいんですか?
あげませんよ?」
「要らんわ。
「オブラート!」
「リオ
「同居人です」
「お前ぇ!
今この場で一番、重要な
「はぁぁぁぁぁ!?」
「あ。
化けの皮、剥がれたわ」
「Ad◯さんみたいな声だったね」
「ジャジャジャジャーンヌー」
「それ、他人の空似よ。未発表だけれど」
「そんなの、どうでも
てか、
「捨てたな!?
衆人環視の場で、ついに呼び捨てレベルまでベタ踏み込んで来やがったな!?
ルール違反者ばっかだなぁ、
「ユーさん、おまゆう、おまつみ、ダウト」
「それです!
その人ばっか、
私という親友がありながら……!!
私でさえ……
「ケルる覚醒条件、増えたわよ。
ホビホビ、イロイロと来て、ユイユイね」
「悪魔の◯染みて来たね。
しかも案の定、建前だったね」
「難儀だねぇ、若者は」
「おい、援軍ぅ!!
はよ助っ人せぇやぁ、キャンセラーせぇやぁ!!」
「初めまして。
「
「そうだったんですね。
すみません、気付かなかったか忘れてしまいました。
その時点では、あなたにまるで興味も用も
で、先程、私の
「
「上述の通り、同居してます」
「っても、部屋どころかフロアさえ別な、アパートみたいな感じだけどね」
「『同棲』じゃなくて、『同居』なんですね?
つまり、恋愛、フィジカル関係ではないと?」
「どーせいっちゅうねん、この状況」
「うん。
「おかっ……はぁぁぁぁぁ!?」
「エイト、貴っ様ぁぁぁぁぁ!!
断トツで
「ちょっと黙ってて、
「ごめん、
話が進まないのは確かなので、
「さぁ、始まりました、第1試合。
実況は私、世紀のイケビジョオー、
「おめーも黙れ!
面白がりたい時だけ
無理だった。
「だって、あれでしょ?
男慣れしてなさそうなボスの
お金云々はともかく。
なら、
「だとしても少しは同性、同僚として気にしてくれないかなぁ!?」
「知らないわよ。
だから、さっさと事実確認だけ済ませて、本題に入りましょうよ。
我関せずっぽく振る舞いながらも、要点は掴んでいる
不承不承としていたが、納得したのか、
「『お金』って、
「特撮トーク聞いて
「
意味不明ですけど、至って健全じゃないですか」
「俺達、『トモコイ以上シンエン未満』、略して『トコシエ』だから」
「更に意味不明ですが、分かりました。
つまり、
プラトニック以下の、
キスとか、それ以上とか、ワン・ナイトとか、特に
まぁ? 私はぁ? 親友だからぁ?
抱き合ってましたけどぉ?」
「……ハグは、
あと、一夜は明かした?」
「ドアホォォォォォ!!」
「ハァァァァァグゥゥゥ!?
一夜はぁぁぁぁぁ!?」
「地味に使い
「持ちネタにしてるね」
「まちゃまち◯染みて来たねぇ」
「はぐた◯みたい」
「あ、あのっ、あれですよ、きっと!
友達としての、親愛のハグですよ!
ね!? 店長さん!」
「
あ……アネキ〜!!
俺と結婚してくれ」
「え、えぇっ!?
すみません、もうしてます、無理です、不義理になるので、娘も
どうか、平にご勘弁を!」
「同性云々、スルーしたわね」
「ユーちゃん、やさしいもん。
ユーちゃんになら、マーマ、あげる」
「多様性の時代だねぇ」
「い、一夜は、スルー……。
は、恥ずかしい……」
「そこ!!
親密度と悩みの種、増やさないでください!!」
「おめーの
あと
それから
「なーんだ。
どこも怪しくないじゃないですか。
現代的で、
と、長きに渡る攻防戦の末、最終的には満面の笑みで受け入れる
一方、騒動の元になった
「……妹?」
「まぁ……かなぁ?」
「把握。
「SNSのフォロー感覚で友達増やすの止めろや。
リアア◯でもしたいんか」
「
その方が筒抜けで、私も色々と安心なので」
「おめさん、本心隠さなくなって来たな」
「
今の所、単なる愉快な愉快犯でしかないけど?」
「目的は、幾つか
そこには、QRコードとURL、『特トーク』という名前が記されてあった。
「近日、サ開。
特撮専門の、顔出し自由のラジオ、動画配信アプリ。
色んな会社が協賛してくれてて、無料で合法的に、実況動画とかも挙げられる仕様にする
他にもレジェンドのキャスト、スタッフのオーコメも導入予定。
スパチャやコメントなども設けるけど、無法地帯になるのを避けるべく、配信自体は、
その
「
特濃な情報量、一言でギッチギチに詰めるキャリー・バッグ
「つまり、多かれ少なかれ特撮通な私達を、ベータ・テスターとしてスカウトしたいと?」
「面白そうじゃない。
イケビジョ脚本家の腕が鳴るわね」
「イケビジョ、要る?
でも、顔出し無しなら、ボクもしてみたい、です……」
「ほんでもって
まるで
てか、あんたそれ、どうやって用意したのよ」
「……頑張った」
「入居して当日、即フローリングから和室に作りを違くした轟少年か、おめーは!」
「つまり、詮索無用って
でも、
お恥ずかしながら、私は特撮について不案内だからねぇ」
「問題ありません。
「ほう?
面白い
一体、どういう魂胆だい?」
「こういうのです」
特撮の知識こそ薄いが、客商売の大ベテランではあるオカミさん。
事実上の『トクセン』のドンに対し、正面切って向き合える辺り、こやつメンタルお化けだな、と
「『トクセン』同様、『特トーク』も、ご新規様への門を広くしたい。
故に、新鮮なリアクションを見せてくれるビギナーの配信者も仲間入りして
特撮に詳しくないけど、興味は
そして……」
彼と衣食住を共にしている
彼が『特トーク』を用意した、真の意図が。
「ーーユーさんみたいな、新人を」
流れる静寂。
注がれる視線。
遅くなる時間。
止まりかける呼吸。
ああ、そうだ。
不器用で、不鮮明で、長々しくて、辿々しくて。
でも、
これまで幾度となく卑怯な選択を繰り返して来た自分に代わって、その罪を一身に背負い、償う
それが、自分が出会い、選んだ、
「……
不格好に、
「ユーさんも、割と一言、余計」
「『この件に関しては、何もしない』って、明言した
「『この場では』って言った。
今は、この場ではない。
場所は、同じだけど」
「屁理屈も、ジョークも、ド下手な
計算だけは、外さずに当てやがってやぁ……!!」
誰よりも性格、都合、察し、用意、
「ユーさん」
心も顔も頭もグシャグシャな
ポンポンと背中を叩く。押してくれる。
「……頑張ろ?
一緒に」
待ち望んでいた言葉を、絶好のタイミングで届けてくれる。
だって、迷ってる暇なんて
誰が、いつまでも相棒に、自分の重荷を背負わせてばかりいるものか。
大丈夫。
勇気も、元気も、好機も、
嬉し泣きは、
いや……やれなきゃ、ならないんだ。
「
……ごめんっ!!
特撮、全然、知らないのっ!!
子供向けだろ、カラバリ出し過ぎ、薄利多売の4番エース、子供向けと大人向け何が違うんだよ、値段バグってる、ちょこちょこダサい、
店長に抜擢されたとか訳分からんけど、成り行き上、『トクセン』に入っただけなのっ!!」
しかも、目の前にはお子様、自分達が最も大事にすべきお客様が
これ以上、
いや……ひょっとしたら、これも単なる言い訳、自己満足やもしれない。
自分が想像するより、
でも、知った
だから、
どんな形、姿勢だろうと、これも自分の心。
真実はどうあれ、今は誠心誠意、全力で謝り通すのが筋だ。
実際の所なんて、どんだけ考えても分からない。
迷宮入り、堂々巡りを繰り返すだけだ。
ならば、そんなのは後回し。
優先すべき場面は、ここじゃない。
「それだけじゃない……!!
してたのは、
休憩室やお昼もそうだし、飲みにも映画にもカラオケにも行きたかった!!
でも、無理だった!!
しかも、形だけ、名ばかりの最低男を優先したからじゃない!
偽りだらけのポスト、ちっぽけでどうしようもないプライド、時代遅れの世間体の
やろうと思えば、あんな
好都合な理由が、それしか
自分の罪深さ、欠点の多さ、未熟さに
エイトに出会ってから自分は、己のダメダメ加減を思い知らされてばかりだ。
一体、上層部は何を考えているのか。
真相は
自分の
でも、きっと、自分にはあるのだ。
上が、エイトが認める、期待してくれる、
伊達や酔狂、一時の気の迷い、見栄えなどで選ばれた
なれば自分には、与えられた職務を全うする義務が
店長に任命された以上、従業員にもお客様にも、それらしい毅然とした態度で接しなくてはならない。
だから自分は、たった今、それまでの自分をかなぐり捨てるのだ。
自分だって、どんどん追い込まれ、ドツボに嵌まる一方だ。
ヒート・アップしていた精神を落ち着かせ、深呼吸し、
ひょっとしたら、これが終わりかもしれない。
最後
「……
今まで、
今朝、
正直、かなり複雑だし、次の食い
全部、
本音を言えば、とか。
今までありがとう、とか。
そういった未練がましい言葉を、
そんな思わせ振りな、みっともない発言が許される立場にはない。
それだけの裏切りを、自分は重ねて続けて来たのだから。
これから向けられるかもしれない罵詈雑言も、自分は聞き入れなくてはならない。
これでも、仮にも、曲がりなりにも、自分は店長。
普段の困らされっ
あくまでも仕事、同僚の範囲内で、ラインを超えた部分まで誹謗中傷が及ぶ
そう思い、
故に、気付かなかった。
「……あー。
これ、もしかして……」
「もしかしなくても、リオ
「な、何よっ!?
「悪かったのは、言い方とタイミングだけど。
リオ
「さ、さぁ、
「
二人揃って、背中押すなぁ!
てか、
あんた
「『今は様子見、泳がせときましょう』って言い続けてたの、リオ
「『
「ここで全部、きちんと正面切って言えたら、リオ
「あんた
ここぞとばかりに、この
……
謝っている都合というか態勢上、
気付けば
どうやら、彼女が一歩、前に出た? 出された? 模様だ。
「あー……ボス?
「え?
う、うん……」
気付けば彼女の周囲には、バツの悪そうな顔をした3人と、どことなく訳知り顔な
静まり返った店内。
やがて、後頭部を掻き、腹を括った
「実を言うとさ、ボス。
ボスが、特撮に不案内なのも。
ボスの彼氏が、人でなしっぽいのも。
ボスが、
朝に語ってたのも、『何度も陰でコソコソと3人で、ボスと仲良くなる
なんてーか、その……色々、悪かったわね」
「……。
……ぇ……」
不測の事態に、金魚みたいに口をパクパクさせる
「だってキャップ、ティ◯とトリ◯ーの見分け付かないし……」
「司令、ウルトラマンセブ◯撲滅委員会に狙われそうでしたし……」
「ボス、顔だけだと、マンと新マンとゾフィ◯とネオ◯とリブッ◯の違いも分からないし……」
「最後だけ、やったらハードル高くない?」
「そうですよ。
せめて、V1とV2とスプリー◯
「それ言ったら、ブレイ◯とバーニングブレイ◯の方が分かり
「浜田◯二と松田◯二、イモトアヤ◯と井本◯香、岩永◯也と岩永◯哉、中村◯一と中村◯一、甲斐◯真と町井◯真、中井◯哉と吉井◯哉、福山◯と福島◯
「何言ってるのよ。
トウサ◯魂、アーマー無しのレベル99、アナザーアギ◯(2019)、リアライジングホッパ◯、オールマイティセイバ◯
「全部、同じじゃないですか!?」
「違いますよーーっ」
「これだから、しろうとはダメだ!」
「
あと、言いたいだけでしょ!?」
「最初に始めたのは
「誘発させたのは、
ご丁寧に数まで揃えて!」
「やるからには、徹底的かつ完璧かつ忠実に。
それがイケビジョオーたる、
「合体ロボ?」
やいのやいのと騒ぎ出す三人。
すっかりスペキャ顔になった
「要するにさ。
ユーさんが願ってる
ユーさんが思ってる
「……おめさん、もしかして……?」
「睨んでたよ。
だって、ユーさん分かり
未だにユーさんが店長やれてる時点で、そういう
でも、ユーさんの成長を促す
「先に……!
先に、言えやぁ……!!
「『損』はしてないじゃない。
お陰で、杞憂で済んだし、スッキリもしたでしょ?
ちゃんと、自発的に解決
「ちょせぇ……!!」
朝から引っ切り無しに続いていた苦悩は一体、
蓋を開けてみれば、単なる取り越し苦労ではないか。
こんなの、公開処刑も
穴が
堪らず
「ユーちゃん、だいじょーぶ?
おかお、いたいの?
とんでけー、する?」
無垢な
というか、
※
台風一過の店内。
肩の荷が下りた
「お疲れ様です、店長さん。
相席、
おかずの追加を持って、不意に
断る理由も特に
「
でも、
「
言われて見てみると、確かに
が、やや
「立場、逆じゃないですか?」
「『持参したのは試作品だけだから』との談だったんですが。
それはそれとして、複雑みたいで……。
すみません、
「いえ。
そういう話なのであれば、本人の責任ですし。
まぁ、
話が一段落したタイミングで、
「それで?
どうかしたんですか?
「お礼を……言いたくって」
羞恥:嬉しさ=3:7。
みたいな顔で、胸の前で腕を組み、
「……
私の
それについて改めて、謝辞を述べさせてください。
あなたが私に伝えてくれた言葉は。
きっと、店長さんが思ってる以上に、私の胸に届いたので」
でも、
「……間違ってたら、ごめんなさい。
間違ってなくても、ごめんなさい。
こんな
ーー
数秒、目を見開いた
「……やっぱり、気付いてたんですね」
「
そこスルーしても
それに、アラフォー成り立ての
「……店長さん、前職ガンマンさんだったりします?
または、アーチェリー選手さんとか?」
「昔ちょこっとギャルゲー囓ってただけですよ。
あと、境遇が似てるからか、どーも
事情聞かずとも、ビビッと来るってーか……。
それが、確信ですかね。
手放しじゃ喜び切れませんけど」
「なるほどです。
慧眼、お見逸れ致しました。
それと、嫌な
「こっちこそ、いきなりアレな尋問して、すみません。
でも、大事な
「どうやら、『トクセン』さんにはイケビジョオーさんのみならず、イケジョ探偵さんも
「止めちくりー。
不毛な争いが始まってまうー」
「あははっ。
口元を丁寧に隠し、
そろそろ頃合いかなと、
「
どうして
「……?
いえ……」
「『ここには、子供にとっての宝物が
ここで働いていれば
店内業務だけじゃなく、義母としても、祖母としても仕事が行える
堅い口調の
だから、来た』。
……らしいですよ」
「……っ!!」
驚きの
空かさず
次いで眼鏡を外し、彼女の瞳から零れる涙を拭う。
「店長さんっ……!!
私……!
私ぃ……!!」
「
……
「……っ!!」
「……ありがとう、ございます。
店長さん。
あなたには今日、2度も助けて
それだけじゃありません。
どちらも私には勿体
「あー、いや、まぁ……結果的には、ね?」
一頻り出し切った
一方、
バツイチ子持ち。
特に目立った
ツッコミもフォローも
少し内気で弱々しく、どこか儚いオーラ。
ホビホビもイロイロもユイユイもしていない、自分の理想とする
これは……ヤヴァイ。
もし自分が男だったら、
いや……ともすれば、同性すらも対象になり兼ねない破壊力ではないか。
「それで、店長さん。
折り入って、ご相談なのですが……」
あ、あれ?
あと顔、
フローラル!!
「こんな
私、もう……耐えられなくっ、て……!」
あーっれるぇー?
おーかしーぞー?
もしかしてー、
いつー、開通ー、したのかなー?
「私っ……!
もっと、あなたと一緒に
あなたと
明らかに異変を
もう、ダメなんです……!
どうにも、止まれないんですっ……!!
……だから……っ!!」
おい
頼むから、泣かないで。
泣くな、やめろ〜〜…。
「……私をっ!!
あなたに、雇って
出て来たのは火山灰ではなく、
薄れつつある思考の中、
これは、ルール違反に当たるのだろうか。
こうなった以上、
いや……そんな取り決めは
つまり……合法。
今日から晴れて、
しかし、彼女にも立場が有る。
どうにかオカミさんにも旦那にも
そう決意し、禁断の花園を進む覚悟を決める
かくして
激動の果てに、二人の女性は、どんな結末を迎えるのか。
ーーなんて
「……店長さん?」
「……
一つ、
「?
はい」
「お願いだからさぁ……。
もう少し、自覚持ってくれないかなぁ……?
そういう匂わせ的な部分、直してくれないかなぁ……?
まだ私が、
「ノーマル……?」
程無くして察した
倒れかけた所で我に返り、ヘドバンみたいな勢いと回数で謝り始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!
どうか、それだけは平に、平にご容赦ください!!
違うんです、誤解です、そうじゃないんです、
あーでも、でも! 店長さんが好きなのも、『トクセン』さんで働きたいのも
いや、でも『好き』は『好き』でも、そういうんじゃなくってですね!?」
「わ、分かってる、大丈夫。
危うかったけど、どうにか持ち
それより一旦、落ち着こ? ね?」
「あ、はい。
分かりました」
「……」
……アップ・ダウン、激し過ぎじゃない?
助かるっちゃあ助かるけど、これはこれで微妙というか……。
てか、ただでさえ共通点多いのに、そんな所まで
「確か
「はい……。
でも少し前に、閉店してしまって……。
この1年、どのお店さんも、私が入ると高確率で畳んでしまっていたので、
「それは、その……。
……お疲れ様です……」
「ありがとうございます……。
そんな訳で、
けど、『トクセン』さんなら、厳密には飲食店ではないし、
「ううん。
そんな
それに、こちらとしても助かるんです。
丁度、ダイナーの人員を補充しようとしていた所なので」
「では……!」
それを受けながら、
勘違いのままで、勘違いしなくて
「……今度、履歴書を持参の上、『トクセン』に来てください。
そこで改めて、面接……いや。お話しましょう。
「あ……ありがとうございますっ!!
「こちらこそ、
そして余談だけど、そういう
思わせ
ぼんやりと、そんな
そういえば、まだ
「えへへ……」
もう一生このまま離れられなくても
視線を下げれば、満点の笑顔の
「『
これで私も、正真正銘、店長さんの家族ですね。
いや……
……
「……」
まさかの追い打ちを食らい、グロッキーの
失神寸前ながらも、思った。
「ユーさーん」
などと考えていたら、唐突に
目をキラキラさせた彼の手には、幾つもの、玩具の銃が握られていた。
恐らく、『トクセン』の発明家が作ったのだろうと
「『エンムス・ビム太郎』。
また妙ちきりんな名前だなぁ。
して、今度は
てか、仲良くなるの早いなぁ。
あと、めっちゃフワフワ、フニャフニャしてる。
こやつ、はがない系だからなぁ。
それ作ったの、俺ガイル系だけど。
いや、誰がお母さんじゃい。
などと逡巡する
ここは、乗っておこう。
「
これ、
「特に言及
「あか……なんて?」
「『戦隊レッド異世界◯冒険者になる』っていう漫画」
「へー。
面白そー」
「持ってるし、まだそんなに巻数出てないし、漫画ならサクサク読めると思うよ?」
「今度、貸してくれぇい。
で、これ、
「
スマホを、スリットにセットしちゃいなさい。
宴会芸の力を使える
「確かに。
まぁ、盛り上がるってか、溶け込むネタにはなるな」
「緑が主色だけど、差し色で役割が違う。
赤は、運命。
桃は、本命。
黄色は、同盟、友達。
青は、共鳴、趣味友、チル友、親友。
黒は、不明、義理」
「最後ぉ!
止めたげてよぉ、そんな、バレンタインやホワイト・デーみたいな、地味にキツい複雑、ヒエヒエしたのぉ!
いや、確かに
「発光ギミック有るよ」
「毎度の
んで、LEDめっさ綺麗だな!?」
「様式美。
あと、変形ギミックも」
「ねぇ今、ドミネータ◯みたいになったんだけど!?
はじめしゃちょ◯が持ってた奴じゃん!?
用途に反して、お金|掛け
ドン引きさせるだけだわっ!」
「なお、試作品」
「これ以上、
却下だ、却下! 店長権限っ!」
「え〜……。
ところで、『親友』って?」
「知らんのかいっ!!
今度、教えるわっ!!
今日は、ツッコミ疲れたっ!!」
「りょー」
結局、商品化は取り止めとなった。
※
「にしても、意外だなぁ。
まさか、リオ様が付き添ってくれるなんて。
あれだけ、
二人で帰路につきながら、唐突に
「
「だって、呼んでみたかったんだもん」
「これからは、お好きになさい。
して」
それまで歩を進めていた
「
そんなにアピールしてちゃ、露呈するのが自明の理よ」
「え?」
混乱しつつも、
視線を辿った先……物陰から、何やら見るからに不審者っぽい男が現れた。
「やっぱりね。
こんな
あんた、
「そうなの!?
てかリオ様、
聞けてたの!? あの距離で!? 他の皆と話を合わせながら!?」
「
ながら観がデフォだし、12本までだったら、アニメや特撮を同時視聴
無論、きちんと聞き分け、識別、没入しながらね。
ビジーだけどイーズィーよ、そんなの。
この程度の盗み聞きなんて、訳|無いわ」
「どこのオタメガ、ピッコ◯さん!?
てか、倍速やバック・グラウンド再生で良くない!?」
「それだと、味が薄まるじゃない。
何事も、我が身を介して確認しないと気が済まない。
エアプなんて、冗談じゃないわ。
けれど、それを貫き通すには作品数が膨大だから、その特殊スキルを身に着けたって
まぁ、推してる作品は、きちんとタイマンだけれど」
「何その表現、
「それはそうと、ボス。
もうちょっと、危機感を持って
今、バトル展開よ? 一応」
「リオ様が話長いんじゃん!」
「説明責任を果たしたまでよ」
「またそうやって、詭弁使う!
リオ様の出身、詭弁論部!?」
緊張感の
一方、
「邪魔なんだよ……!
フラフラ、ユラユラしながら、説明不足で殺伐としたワードを羅列する楠目。
困惑している
「
あいつは言うなれば、
自分と
だから、
「そんな最低な理由!?」
「それだけじゃないわ。
あいつは5年、山籠りして、野生動物相手に研鑽していたらしいのよ。
長い修行留学を終え戻って来た楠目は、
「山に5年も修行留学って何!?
しかもネット頼りで、特訓の成果、
「この世には、筋肉留学も闇留学も
修行留学だって、
「てか、
「試しに調べてみたら、あいつの
自己顕示欲が旺盛なタイプなのは見て取れたけれど、あそこまでとは計算外だったわよ」
「
「
これみよがしに、ここぞとばかりに意気揚々と、同調、嘘ツイ、袋叩きして無知を知らしめるのは、SNSの悪習よね。
フォローもフォロバもしてない
「完全に警察案件じゃん!
この町の男、
「逆ハーならぬ、逆風都って所かしらね」
「どうでも
アスファルトを殴り、
思いっ切り修行の成果を見せ付けながら、ゾンビかキョンシーみたいな不気味な動きで、二人に近付く。
「
俺さえ
子供も、親も、仲間も……!
……お
「そういう熱烈なアピールは、普段から欠かさず、本人に真正面からお伝えなさい。
じゃなきゃ、意味をなさない。
「そーだ、そーだ!
お呼びじゃないんだよ、引っ込め!
この、
そんなこんなしている
空かさず
「リオ様!?」
「
「でもっ!」
「安心なさい。
今この場でボスに迷わず捧げられる
きちんと、算段あっての
「え?」
言われてみれば
「全部、
その確率を上げる
そして、
あんたは、まんまと
「だから、どうしたぁ……!!
お前は、あくまでも脚本家で声優……!!
アクション担当でもない、ただの女が……!!
武者修行して来た、この俺に勝てるとでも……!!」
「思った通り男尊女卑、超古代の遺物、異物ね。
そんな時代は、
そして
命知らずなあんたに、
手が触れそうな距離まで迫る
それでも
「
かと思えば、
その脳天に踵落としをお見舞いし、有無を言わさぬまま、彼に白目を剥けさせた。
「紹介するわ、ボス。
戦闘モードの
「……」
二人のピンチに駆け付けたナイト、
彼は、普段の
「手は下さない。
素手で僕に触れて
いや、ピンからキリまで最高かよ。
キャラのみならず、一人称や呼び方、声や口調まで変わってるし。
てか、手袋着けっぱだった理由、それかよ。
そっちもだが今の仕草、フェティッシュてかドタイプ
具体的には、迂闊に近付けない、
が、見入ってばかりいられない。
「し、
リオ様と、示し合わせてたの?」
声を掛けられスイッチし、
どうやら、
「い、いえ……。
特に、
確証は
だから、飛んで来ました……。
具体的には、屋根から屋根へと……。
「文字通り過ぎるし、配慮が過ぎるっ!!
てか、どんな高性能レーダー!?
女の涙が落ちる音を探知
「造作も
「り、リオ
もぉ……恥ずかしい
……
てか正直、「もぉ」とか「ウマシカさん」とか言ってるのも、年齢的にも性別的にも中々キツいよーな……。
怖いから言わんけど……。
あと、抜群に似合ってるし、飛び切りに可愛いけど……。
「
もう警察は呼んだわ。
流石に、今度ばかりは言い逃れも無理でしょうね。
さっさと帰りましょう」
「りょ、りょー……」
続け様にショックを受け、気付けば腰を抜かしていた
そんな彼女に、
「おらおら、どけどけぇ!!」
「ぎゃはははははぁ!!」
そんな空気を、一気に打ち壊す不届き者。
3人から少し離れた道路に、暴走族が
交通量が少なくマークの薄い深夜を狙って、出没したらしい。
頭を抱えつつも、やがて
「……ジオン」
「御意」
たった一言。
たった3文字。
それだけで意図を察したジオンは、近くの小石を拾い、飛び上がライズ。
現在進行系でトップを激走するバイクの前に現れ、蹴った小石をタイヤに命中、パンクさせる。
バランスを崩した先頭に巻き込まれ、情けなく泣き叫びながら、ドミノ倒しとなるバイクの群れ。
一方、薙ぎ倒したジオンは、涼しい顔でシュタッと着地し、
「
そんな、「近所迷惑」みたいな感じで言われても……。
ひょっとして、シオコンよりリオコンのほうが致命的なんじゃあ……。
と思うが、
こうして
こんな、ウソッ◯とコナ◯のハイブリッドみたいな人間の怒り、恨みなんぞ買ってなるものか。
店長、危うきに近寄らずである。
こうして
まだ『トクセン』のビジョンの擦り合せは済んでいないが、理想の店舗に向けて、新たに好スタートを切ったのだった。
余談だが。
※
「ユーちゃん、見っけー!」
「マジだ、ウケる!
超
「ふむ。
以前、
さては、良き
「二人共、大袈裟。
あなたの職場、ここだったんだ。
意外。
お疲れ。
元気そうで安心した。
いきなり
「……」
親友×3と、その子供への仕事バレ。
果たして
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