4:嘘と本音と謎理論
だが彼女とて、尊重されるべき一人の女性であり、ロボットとは違う。
例えば、「身内に不幸」「財布を無くした」「スマホが壊れた」などなど。
そういった、止むに止まれぬ事情により、ご多分から外れるのを許されるケースも
では、と
それを踏まえると、自分が今、ベスト・パフォーマンスで臨めないでいるのは、どっちに該当するのだろうと。
仕事は仕事、公私混同など以ての
そう割り切って、「
……
こうして休憩時間中に、一人でバーに
「大丈夫ですか?
お嬢さん」
気を遣ってくれたマスターが、まだ注文してもいないのにモクテルを出してくれた。
初対面でありながら見抜かれる
……
そういえば、まるっきり「初対面」ではなかった。
「あ、あのぉっ!
先日は大変、失礼致しましたっ!」
恥の上塗りと言うべきか。
またしても
マスターは、
「いえいえ。
あの時は、
ご無事で
「……?」
確かに
だからって、そこまでだっただろうか?
多分、
ひょっとして、これはマスターなりの気遣い?
自分を激励、鼓舞する
「
大袈裟ですよぉ、『ご無事』だなんてぇ!」
相手が
一方のマスターは、それまでのスマイルを崩し、少し驚いた顔色を見せ、背中を向ける。
なるほど。
あの紳士的な彼は、お嬢さんが粉をかけられた
恐らく自分が(あくまでも冗談で)鎌をかけた
その上で、『閉店だったし、住所も聴き取れずタクシーも呼べなかったから』などと、事実と嘘をミックスさせ、納得させたのだろう。
彼女に
いやはや。不器用ながら、どうして中々しっかりしている。
しからば、とマスターは再び笑顔を作る。
この場に置いては、口裏を合わせるのが男、友としての礼儀である。
「そうですね。
「お、おう?
い、いえ……
……失礼、しました……」
どうやら勘違い、拡大解釈だったらしく、再び意気消沈する
マスターは、思案に暮れた。
今の彼女をフォローするには、自分が持つ
自分は、彼女の苦労も、好みも、ルーティンも知らない。
かといって、
だからって、(業種は不明だが)仕事中、日中にアルコールを与え酔わせて聞き出すのは、マナー違反も
とどのつまり、今の自分には、彼女のオーダーを受けるか、軽食やドリンクのサービス
もっと、彼女を深く、広く理解した人物の当て、
……はて?
と、ある
自分と彼女に共通し、自分よりも多くを彼女と共有してそうな知人が。
「申し訳ありません。
少々、失礼しても
「あ……は、はい。
どうぞ」
スマホを掲げつつ、確認を取るマスター。
物思いとも自己嫌悪とも取れる状態にあった
スマホを操作するマスターに当てられたのか。
特に目的も意図も
無意識の
そこに表示されるは、こういう時、決まって連絡を取り、愚痴なり相談なりに付き合って
地元を離れ共に働いていた時は
今となっては、会う
物理的にも精神的にも距離、遠慮、溝が
「……」
思考の末に、コールせずホーム画面に戻す。
そのまま、ボーッとしつつ、ドリンクで体を潤わせる
心の渇き、
ふと、店の外からバイク音が聞こえ。
少しだけ雑に開かれたドアから、自分の同居人が駆け込んで来た。
「え……エイトォ!?
え、な、
驚いた拍子に立ち上がり、マスターと
「どうやら、注文が届いた
「『発注』って、そうゆうぅ!?」
ここに来て、
どうやらマスターとエイトの間には、自分が知る以上の
「……『
ユーさん……」
アンニュイな彼にしては
「……『ピンチの時は、助け合おう』。
そういう、ルールだったじゃん……。
俺……
もっとさぁ……俺を、便利に使ってよ……。
使い込んでよ、使い倒してよ……。
使おうよぉ、頼むからさぁ……。
俺……嫌なんだよ。
ユーさんが落ち込んでる時、助けられないの……。
ユーさんが困ってる時に、何も知らずに、のほほんとしてるだけなんて……。
もう……耐えられないんだよ……」
自分の声だけが目当てだった
いつだって、「!」を使わないし、本来の
でも、そのデバフ範囲は、あくまでも声だけ。
彼の表情、言葉、行動、涙には、彼の心境が如実に表れている。
迷惑を掛けまいとした結果、周囲に心配、負担を掛け、それ自体が
不満やストレスを溜め込み過ぎて暴発させてしまいがちな、頑張り
事実、前の職場で、そうストレートに言われた
なのに自分は、
遠慮はしないと、確かに誓った
余計な心配を掛けたくなかった?
まだ出会って日が浅く、慣れてないから?
いや、違う。そうじゃない。
自分は今、軽い人間不信となっているのだ。
同僚に友人、家族にすら嘘を
それが起因し、肝心な時に、
果たして、それは正解なのだろうか?
これが、店長としてのあるべき姿なのだろうか。
そんな
そんな
そうやって、笑顔をバラ撒き、表面上だけ付き合っている八方美人がトップに立つ職場が、立ち行く道理は
「エイト……。
ごめん、エイト……。
色々、ホント……ホント、ごめん……」
貰い泣きしている場合じゃない。
彼を追い込んだ、巻き込んだ自分に、そんな資格は
自分が今、最初に、最速でしなければならないのは。
頬を伝う雫を拭い、引き締めた凛々しい顔で、心機一転した
「……エイト。
まだ若干の抵抗、後ろめたさが垣間見える、まるで
ポンッと
なけなしの勇気を振り絞り懇願する彼女の健闘を讃えるかの
「……聞かせて?
ユーさんの、話。
でも、その前に」
「……『その前に』?」
「……ご飯に、しよっか」
「……」
緊張感の
でも、彼の言う
健啖家な自分が、お昼休憩の真っ最中なのだから。
精神的にも危ないのに、体調的にもコンディションを整えられないのは思わしくない。
「……せやな!
ちゃんと、食べにゃあな!」
「うん。
折角、丹精込めて作ったのに、勿体ない」
「あんがと!」
「お話の最中に、失礼します。
当店は持ち込み可ですが、ワン・オーダー制となっておりますので、ご注意を。
それと、そちらの男性も、
「……ちゃっかりしてるなぁ。
この
「お褒め頂き、光栄です」
「どういう関係なの!?
こうして
※
特撮を知らないが
特撮に明るいスタッフと、プライベートでの交友が
特撮が門外漢なのをオープンにしつつも、自分とは対象的に溶け込んでいる、羨ましい人も
特撮が専門外なのをバレたくない
特撮の話題に付いて行けないが
そんなスタンスだから、やっかまれても仕方の
そういった暴露を、聞き役に徹した
時折、説明不足だったが
こんなに好印象な同居人に、自分にも特撮にも
いつもは唐突、言葉足らずながらも、こういう時は真摯に向き合ってくれると、信じていたのに。
自分が
「多分、齟齬が
食事と話を一通り終えたタイミングで、
「
彼女の修飾部分を、きちんと把握していない。
それ
「要は、
「大っぴらには言えないけど、端的には、その可能性が
「ううん、言って。
エイト、割と鋭いから、凄く参考になる。
それにエイトだったら、きちんと配慮してくれるから、そんなにキツくない」
「ユーさん。
あらぬ誤解を招きそうな発言は、慎んで。
無遠慮になって来たのは、
ただでさえユーさんには、『立場』って物が
「あ、あはは……。
ごめん……」
確かに今のは、ちょっと怪しい、危ない一言だった。
ともすれば、妙な噂を囁かれ兼ねなかった。
時間帯、立地、客層が味方し、店内が
「ところでさ、ユーさん。
プレ・オープンって、いつまで?」
「……2月末……」
「俺の偏見かもだけど。
3月までの営業成績で、『トクセン』の来季の存続が決まるんじゃない?
俺も前、接客業やってた
「……当たり……」
「現状、ユーさん、他の皆をコントロール
て
「……かなり……」
「てなっと、3月が勝負、ラスト・チャンスって
「……はい……」
「だったら、それまでの間、残り1ヶ月弱で、諸々の企画考えるなり、施設揃えるなり、スパートかけるなり、親睦深めるなり、一致団結しなきゃだよね?」
「……そうです……」
「結論述べっとさ。
そろそろ、カムアしないと、本気で
特撮明るい、明るくない以前の問題として。
どっちつかず、パッとしない、コウモリのままだと」
「……そうだげど……!
……そうだげどさぁ!!
そごまで言わずとも
突然、そんな一度に言われでも、おどげでないわ!!」
「……ユーさんが、自分から言ったんじゃん」
「ああ、言っだどもさ!
それはそうどしで、も少し優しぐ接しろや!!
こちどら、豆腐メンタルなんじゃい!!
そんなには傷付かないげども、多少は傷付くんじゃい!」
「この人、かなり無茶言うよぉ……」
「だって、そんなに
「俺かて、そこまでユーさんが不発弾
「『不発弾』言うなぁ!!
てか、油断すんなし!!
「ねぇそれ、大見得切ってまで、この場で流れで言う
ガシッ、ガシッ、ガシッと
波は引いたのか、
「……ごめん、エイト。
八つ当たりして、かと思いきや急に沈んで、ごめん。
全部、分かってる。
そろそろ本気で、皆ときちんと向き合わなきゃな
ロジハラ気味ってかキャパイけど、エイトが言ってくれてるのは全部、間違ってはいない
全部、
マジで、ガチで、
全部……ちゃんと、分かってる」
「……ん」
俺の手だって、ユーさんの物だよ。そう、主張する
「
そりゃあ、てんで特撮は知らんし、ちょっと前まで食わず嫌いしてたし。
話とかノリとかネタとか、まるで分からんし。
商材だって、場所とかは
そもそも、これまでと業務内容まるで異なるし。
シームレスに発狂したり、売れない変なの作ったり、所構わずイチャイチャしたり、新しい扉開かせかけたり、造語だらけで言葉通じなかったり、
……心地
お客様も、悪い人そんな
「……ん」
「正直、ギリのギリッギリも
それでも、9ヶ月は営業
あとちょっとで、1年……ううん。
だから」
決意に満ちた表情が、妙に晴れやかだった。
「……話すよ。
これから『トクセン』をどうしたい、どう変えて行く、存続して行きたいのか。
全部……ちゃんと、話す。
そんで、謝った上で、お願いする。
これからも、一緒に働いて
「……手伝おっか?」
「ちーがーう〜。
ここは、『そうだね』『頑張ってね』って背中押す所でしょぉ」
「分かり
「そゆ
笑うだろ」
「
「うっさい」
「……そこは、『バーカ』もセットで」
「だから、知らんて!」
「……責任感強いユーさんなら、そう言うと思った。
だから、今回に関しては、この場ではもう、何もしない。
でも、やっぱり心配だから、サポート・アイテムを用意した。
ユーさんが
意地っ張りな、ユーさんの
「一言、余計だな!?」
言いながら
起動された、謎の画面。
「……『特トーク』?」
※
数時間後。
すっかり常連となりつつある『エスペランサー』の前で、
「お疲れさまです、司令。
本日はお招き頂き、ありがとうございます。
初めて司令からお誘いして
私、感激です」
何やら大荷物を
聞き上手で
ホビーの心得を網羅しており、その道なら右に出る者は
……なのだが、熱が入り過ぎたり、トロトロ、キラキラ顔で脱線しがちな、天然寄りの、少し困った人。
また、デザインやプレイ・バリューは
本人曰く「好きな相手は自分色に染めたくなる」的な心理で、お気に入りの玩具のメイン・カラーをオレンジやスカイ・ブルーにしていたりもする。
主に玩具、色にしか興味が無く興奮もしないので、生涯独身を貫く
元々は『パンダイ』で働いていたが、「
と、問題点を
「あ、う、うん。
お疲れ様、
ごーめん……一瞬、気付かなかったわ」
「無理も
今の私、私服ですし。
このスタイルだと、ギャップ
普段着のゴーグル、差し色だらけのカラフルな白衣から一転し、モコモコした
でかい
などと思っていたら突如、
(少なくとも今は)まるで心当たりの
「ほ、
ど、どした!?」
「す、すみません……。
私……ずっと、司令に塩対応してたかな、ぞんざいだったかな、ご迷惑だったかな、空気読めてなかったかなって……。
飲みに誘う度に司令、断ってたし、
司令……私の
ここに入るまでだって、『あざとい』とか、『
今だって、いつもいつも、やらかして、司令に怒られてばっかりだし……。
でも、今日、声掛けてくれて……私の
この袋ばりに、色んな感情が詰まってて……」
「……もしかして、それを分かり
「いえ……これは、ただの趣味ってか、布教です……」
「ああ、そう、良かった……のかな?
てか、違う、そうじゃなくて。
あぁもう、
そんな
てか、今まで不参加だったのも、完全にこっちの都合ってだけで。
「……
友灯さん、私の
「ガッ!?」
ここに来て、まさかのタメ口、名前呼び。
まるで、NGワードゲーム回での、氷の姫と対象Fを彷彿とさせるやり取りではないか。
ポヨ味が強肩アンパンでエグすぎるというか、カンブリア宮殿というか、そもそもイング系で
要は、人目が気になるし、真冬に外では寒いから、そろそろ中に入りたいのだが。
それを忘れる
にしても、ヤバい……!
まだ『さん』付けだったお陰で、
このままだと、
具体的には、百合が百花繚乱する底無しの暗黒面に落ち兼ねない……!
いや、自分で言っといて、てか伝わるけど、何だそれ……!
ここで雑に否定、はぐらかすのもミステイク……!
こんな、
自分の中に眠る欠片ばかりの良心は、そこまで落ちぶれてなどいない……!
……であれば。
「あぁ、もぉ!
おだずなよ、っこの!
い、いぎぎっ……いぎなり好ぎに、決まってぺさぁ!!」
リンゴーン……リンゴーン……
何やらウェディング・ベルみたいな音が響く、
「……嬉しい。
私も、司令が、好き……!
感慨も
年上、店長の意地を見せ、どうにか受け止める
賢者の
果たして自分達は今、
自分と
そして、
自分達はいつまで、HUGっとしているのだろうかと。
「あ、あのぉ……。
「
「なして!?」
「私の
正直、興醒めです。
百年の恋じゃないですけど、急冷です」
「あーもぉ!
分かったよぉ!
タメ口も!
じゃないと、示しが付かないから!」
「『二人きり』の時もセットじゃなきゃ、
「もう、それで
今後とも
「雑。
言わされた感、
リテイク、改善を要求します」
「あーた結構、めんどいね!?」
「今まで、多少は猫被ってたんですよ。
てか私かて、ここまで
まぁでも、いきなり多くを求め過ぎるのは欲たかりですよね。
しからば後日、『どういった趣旨で私を好んでいるのか』について、レポートの提出を求めます。
なお、拒否は認めません」
「やっぱ、めんどい!!
いや、やっけどもさぁ!!」
「よく
偉いですねぇ、司令」
「た・ち・ば!!
たちば、た・ち・ば!!
今の
あと、どういう立場ぁ!?」
「コンボボイス風に仕立てたのは、ポイント高いですね」
「大体分かった!」
「世界の破壊者の追撃ですか。
これは、加点ですね。
ところで、私へのナデナデは、まだですか?」
「やっぱ、分からんっ!!
まぁ、やりますけどぉ!」
後半は何が何やらだったが、
その結果、二人組の女性が互いに頭を撫で合っているという、摩訶不思議な光景は出来上がったが。
それはそうと。
「……
「呼び捨ては?」
「そこはまぁ、追々?」
「疑問形かぁ。
しょうがないなぁ、
「情に流されるとロクな事にならない、
で、本題だけど。
「……悪いのは、
私を、
この、魔性の女……」
「人聞き悪いな、とんだ言いがかりだな、誤解だらけの結果論でしかないんだけどなぁ!?」
「言っとくけど、違うから……。
ここまでするのは、相手が
他の人には、するのもされるのも御免だから……。
「それ聞いて安心した!」
「
まぁでも、今日の所は、これ
「
「ん〜?」
「……彩葉の
勇気を出し、話し合いの席を設けて正解だった。
「良かったですねぇ、司令。
最後の最後で、赤点免れられて。
私に、愛想尽かされずに済んで。
危うく、これから延々と、塩分高めの業務対応され続ける所でしたよぉ」
……その
彼女がより笑顔、素直でいられるのなら、安い代償だ。
と、思う
「ところで私、遅刻しましたか?
すみません。お待たせしてしまって。
以後、気を付けます」
平静を取り戻し、
「ううん、もう全っ然!
「分かりました。
でも、司令。
それが無理なら、せめて店内で待っててください。
司令の
それに私も皆も、到着間近になったら
司令に倒れられたら、
「あ、ごめん……。
「なるほど。
道理で、未読スルーだった
いつからなのか分かりませんし、消した件については、追求もお咎めも無しで構いませんが。
であれば、早めに知らせて頂きたいです。
「痛み入ります……」
「いえ。
司令の因果応報とはいえ、私こそ、いきなり不躾な発言、失礼うひょぉはおはぁぁぁぁぁ!!
シレー、シレー! 今の、見ました!?
「えと……ごめん、見てなかった」
「なんと!?
あんなに綺麗なオレンジが実在しているというのに、知らずに呑気に生きていたと!?
シレーだけに、シレーっとしてたってんですか!?
まだ、あの車を見てないって? 損だぞ!!」
「そこまで言う!?」
「紛れもない事実です!
いえ、それは
あんなにビビッド、ビビッと来るサイキューちゃんが現存しているとは……!
地球は、オレンジかった!」
「宇宙飛行士!?」
「すみません、ちょっとチェキ
さぁ、張り切って……振り切るぜぇ!!」
「待って!?
今は、
今だけは、ね!?
後生、後生だからっ!!
止まって、
「『
「マルチ・タスク、
キレ合戦を始める二人。
また、マシマシで特撮ネタを口にする失礼キャラになり、一人称も変わる。
といっても数分前から、「
それはそうと。
まさか、業務中以外でも学ばされるとは思わず、
ただでさえ
といっても、あれは
それとも、
……いや。
それは、
※
「おまたせ、ボス」
「遅くなってすみません、キャップ……。
は、恥ずかしい……」
中々に失礼な
体は細くクビレもあるが、身体能力が高い細マッチョで、素手で林檎を握り潰すなど容易い。
それでいて、磨き抜かれた運動センスが売りという、アンバランスさ。
個人的には、運搬係としても積極的に働いてくれるので、男手の少ない『トクセン』では、そういう意味でも重宝されている。
優しく気遣い屋だが、怒らせたら一番怖い(という噂)。
やや内気で人見知り気味で、慣れるまでは「……」を多用する。
懐くと構ってちゃん。
年齢とか性別とかをガン無視した、
もう一人が、宝◯に所属してそうなハスキー系イケジョ、
クールでストイック、マニッシュでスタイリッシュな立ち振る舞いにより、周囲から
特撮のセリフやキャラ名を完コピしており、作品知識はトップ・クラス。
自分を芸術視しておりナルシスト気味だが、
褒められたがりで、
そして特筆すべきは、度を超えた
余談だが、
二人は元々、遊園地でヒーロー・ショーの劇団員をやっていたが、職場が廃園してしまった
息ぴったりなのだが、
「二人共ぉ!
そういうの
特に、
「ご挨拶ねぇ。
それに、ボス。そんな
ボスさぁ……そんな身空で、地獄を楽しまされたいの?」
「間違っちゃないけど、
「まぁまぁ、リオ
こういう時は、
「
「あー。
あの、『ホゴーグル』とやらの出番ね。
ボス。ちょっとそのまま、
「ねぇ
「ボスが、きちんと対
身から出た錆、自業自得」
「そもそも、
唐突にフィンガー・スナップを決めた
瞬間、それまで暴れていた
「あ、あれ?
暖色だけが分からない
彩度が、低い?
「あんたが暴走した時用に、
「なるほどです。
私の
「……世界広しといえど、そうは
ここまでの本性バレRTA最速記録の保持者」
「必要なのが、『綺麗な色』だけだもんね」
「違いますよ、
色は、私にとっての『命』。
言うなれば、分霊箱です」
「そこら中にあるわ!
大問題だわ!
7巻どころの騒ぎちゃうわ!」
「そしてホビーは、私……いいえ!
ホビーは、
「いや、効力、
「こいつがスイッチ多い上に早押し、長押し過ぎるのよ!
イメージだけで
「ボク、チョッパ◯!?
手刀ならぬ足刀で峰打ちを貰い、気絶する
「さて、と。
ボス。ちょっと
「
「当たり前でしょ?
有象無象がちょっかいかけない
となれば、この場で動けるのは、ボスを置いて他に
「いつもみたいに、
「そしたら、
「
「ここ、ボスの行き付けなんでしょ?
だったら、今に始まった
それにボスには今日、
「分かったよぉ!
やれば
「物分りが
「
こうして、
今日が貸し切りで本当に良かったと、
余談だが、マスターは平然としていた。
※
「おや。
もう着いてたのかい」
タイムリーに声を掛けたのは、『トクセン』の良心その2、
接客業の大ベテランで、高校の卒業式と同日に結婚式も済ませた猛者。
メンタル最強で臨機応変、にこやかながらも徹底的に屈しないし動じない重鎮、守護神的なポジション。
そんな立ち振舞から、本名より一部抜粋し、「オカミさん」と呼ばれるに至る。
特撮方面は
PTAの会長をしていた
困っている人は見過ごせない世話焼き気質である故に顔も広く、彼女に教えられた行き付けの穴場では、後に皆が一人で行っても負けて
そんなオカミさんこと
彼女の手は現在、見知らぬ少女と
「
「オカミさんの、娘さんですか?」
「『お世辞』としては正解だが、残念ながら、『解答』としては不正解だよ。
ほら、
オカミさんは、苦笑いしつつ、手を閉じさせる。
「惜しい。
それは、
「ニーナ、わかんない」
「じゃあ、
ちょっと、私を呼んでくれるかい?」
「バーバ」
「そうだよ。
店長という都合上、
まさかの三世帯バレにより、
既に息子、娘も就職しており、家族で仲良く暮らしていた。
可愛い孫や義子、老後のために貯金すべく『トクセン』に入った、二回りは若く見られる美魔女である。
「すまないねぇ。
出掛けるって言ったら、『付いて行く』の一点張りでねぇ。
少し前まで停職して、共働き夫婦に代わって面倒見ていたら、すっかりお婆ちゃんっ子になってしまったんだよ」
「ニーナ、バーバ、いっしょー」
「こんな調子でねぇ。
最近は祖母離れ
いきなりで申し訳ないが、孫も同席して構わないかい? 店長。
見ての通り、トラブルとは無縁の
「ええ、
お姉ちゃんとも、仲良くしてねぇ」
いつも通り、子供と目線を合わせて会話する
人柄の良さが伝わったのか、
「ユーちゃん」
「そう。
その様を、オカミさんが不思議そうに眺めていた。
「いつも思っていたが。
店長、妙に子供慣れしてるね」
「
こっちに入るに当たって、特訓も兼ねて、その子と過ごす機会を設けて
そしたら、すっかり打ち解けて、今では友達です」
「なるほど、それで。
でも、それだけでもなさそうだね。
子供ってのは、大人より
きっと、店長の優しさを、瞬時に察したのさ。
そういう意味でも、『トクセン』は店長にとって天職だったのかもしれないねぇ」
天職。
何気なく放たれた一言に、
仕方が
それを含まずとも、
そんな欺瞞だらけの自分が、『トクセン』向きなのか、本当に優しいのか、
が、
今の自分に、落ち込んでいる、自問自答している暇は
自分は今日、ケジメを付けに来たのだから。
「すみませーん」
などと覚悟を新たにしていると、再び、新参者。
現れたるは、
「マーマ。
おつかれさまー」
「ありがとぉ……
「
来れたのかい。
面接は、どうしたんだい?」
「どうにか、間に合わせて……」
「こっちの
「マーマのコキュー、シジューカタ!」
「
「もう、わけ、わかんねぇ」
「私の
今度は
目の前でコントを展開されながらも、オカミさんに従い、落ち着かせる
そのまま彼女は、改めて
「初めまして。
お……
この度は、大事な席に娘がお邪魔してしまい、申し訳ありません」
「ニーナ……おじゃま?」
「ち、違うの、
今のは、言葉の綾というか……。
でもね、
「バーバ……ニーナ、キライ?」
「そ、そうじゃなくてね、
ああ、もう……どう説明すれば……」
見るからに、子供慣れしていない
どうやら、オカミさんが
共働きが義務化しつつある昨今の圧迫事情を、身を以て知っている手前。
「じゃあ、こうしましょう!
それなら、
手を叩き気を引き、即座に折衷案を出す
まさかの誘いに、
「……
「
つまり、家族のご家族も、
「……何その、オエージ理論」
いや、そのネーミングこそ何ってか誰よ?
と思うものの、必死に耐える
ここでカムアするのは、やや早計である。
「と、
持ち直し、立て直す
「……では……
えと……」
「
「あなたが……。
話は、
聞きしに勝る、素敵な店長さんで安心しました」
「い、いやいやいや!
普通! 普通ですから!」
「そういう発言する奴って、高確率で普通じゃないのよね」
「実は一番アレだったりね」
「そこの夫婦ぅ!
ちったぁ助けろ、仕事しろぉ!」
「今、オフよね」
「残業、
「バーバー。
マーマー。
おたから」
一同が視線を向けた先に
……の中身を持った、純粋無垢な少女。
「あー!
「あのドデカ袋の中身、それぇ!?」
「しかも、あの大量のホビーの中から、
嘘でしょ!?
あれ、5万は下らない
「ちょ、ちょっと、
離しなさい! お願いだからぁ!」
「おやおや。
お目が高いねぇ、才能ありだねぇ」
「
感動してないで、
てか早速、トラブってるんですけどぉ!?
フラグ回収、早過ぎませんかねぇ!?
保証期間、どうなってるんですかぁ!?」
「ちょっと、
あんたは、そこでジッとしてなさい!」
「リオ
「こんな時までシオコン発動しないでよぉ!?」
「
あの子だって、立派なレディーでしょうが!」
「
「
こんな時
こうして、真冬に外で騒ぐ
自分を除外すると現状、7
成り立つだけで進みみはしない辺り、どうやら人選ミスも
頼みの綱だったオカミさんまで、ここに来て、まさかの家族同伴+孫バカの併発。
柔軟を装った対応と笑顔で
事実、「やっぱエイトに同席して
はっきり言って前途多難であるが、果たして
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