3:上げ膳、据え膳、釈然とせん

 森円もりつぶ 英翔えいしょうの構える別荘改め本拠地は、3階建の一軒家。

 駅やスーパー、シネコン、『漫画博まんがはく』、『トクセン』からも程近い好条件の立地。

 リビングやダイニング、いくつかの寝室など、共有スペース兼ゲスト・ハウスとして機能する1階。

 そして、風呂やトイレ、自室や倉庫、小型キッチンは勿論、視聴覚室や休憩室、カラオケの他、アトリエとグッズ置き場も完備してある、10部屋からなる広々とした2階。



「じゃあ、友灯ゆいさん。

 ここは今日から、友灯ゆいさん専用のフロアってことで」

「……はい?」



 そんな、明らかに一人用の仕様、規模ではない場所を、たった今、友灯ゆいは充てがわれた。

 ただの一戸建て住まいのもりが、アパートやリゾート・ホテルどころの騒ぎではない。

 こんなの、どう贔屓目に捉えても、都心の超高級マンションの独り占めレベルである。



 フレンドリーかつ大雑把で、英翔えいしょうとは何かと気の合う友灯ゆいでも、今度ばかりはぐにはうなずけず。

 驚きと申し訳なさで涙目になりながら、

カチコチになった首をギギギギギッと鳴らし、友灯ゆい英翔えいしょうの方に振り向く。



「え? 待って、英翔えいしょう

 いくなんでも、冗談がぎない?」

「……もしかして、足りなかった?」

あたしのレベルってか社会的地位がね!?」

友灯ゆいさんは充分、ここに値すると思うけど」

「それって英翔えいしょう基準の話だよね!?

 うれしいけど、あたしそこまでじゃないからっ!

 てか、英翔えいしょうは!?

 英翔えいしょうの部屋は!?」

「ん」



 友灯ゆいとは正反対に、微動だにしないまま上を指差す英翔えいしょう

 つまり3階も、ここに劣らない好条件らしい。

 どう考えても、年に数回のイベントに参加するために作られただけの別荘のクオリティではない。

 そもそも、どうして自分は、鷺島さぎしま退治に出掛けるさいに、ここを見落としていたのか。



「……なんで、ここまでやった?」

「イベント参加する前って、それにちなんだ視聴会とかカラオケとか、したくならない?」

「まぁ」

「でも、人目とかあるし、施設だと若干、抵抗い?」

「うん」

「だから、作った。

 完全に自分用、自分好みの、予習復習専門の遊び場を。

 でも、ひょっとしたらいずれ、誰かと仲良くなれるかもだから、その時のために、余ったお金でマシマシにしといた」

「ラーメン感覚で豪邸オーダーしないでくれない?」

「現に、こうして役に立った。

 俺は、どこも間違ってない」

「結果オーライでしかないから、胸張り腰当てドヤ顔止めろ」

「ちな、昨日まで友灯ゆいさんが二人暮らししてた家から私物、生活雑貨は余さず運搬済み。

 ここに着いた辺りにようやく呂律周り始めた友灯ゆいさんから聞き取れた住所を参考に、女性スタッフを手配した。

 鷺島さぎしま退治に行ってる内に」

「あーたあたしと話すもりるってか、昨日のあたし英翔えいしょうに気ぃ許し過ぎくない?

 でも、グッジョブ。女性なのが特にポイント高い。

 後で引越し代、立て替える。

 てか、せめてフロアだけ入れ替えない?

 高いとなにかと不便でしょ?」

「エレベーターもエスカレーターもるから、別に」

いんだわぁ普通、そんな便利なの。

 田舎の一軒家には、ず間違いく」

「あと俺、高い所好きだし、上からの景色も悪くないから」

「うん。

 英翔えいしょうさえいなら、もういや」



 こんな調子で、押し問答染みた質疑応答が続いた結果、最終的に友灯ゆいが根負けした。

 


「折角だし、探検したら?」

「そだね。

 でも、自宅探検って謎だし、実際に探検レベルな自宅ってなんだろね」

「ねー」

「いや、あんだの所為せいじゃろがい、ありがとよ」


 

 そんなやり取りを挟んだ後、えず自室に向かう友灯ゆい

 そして、茫然自失となって数分後、部屋を去り英翔えいしょうの元に戻って来るや否や。



「ねぇ。

 なんか、無駄に広いしリッチなんだけど。

 部屋にまでトイレとお風呂、洗面所が有るんだけど。

 あと、買った覚えの無いカプセル置いてるんだけど」

「リラクゼーション・カプセル。

 酸素と水素を同時に取り込める。

 睡眠不足、疲労と怪我の回復、アンチ・エイジングに病気予防、二日酔いの改善、脳の活性化やダイエットにも繋がる。

 1時間で1日分の睡眠になる」

「『ショート・スリーパー』とか言ってたの、それか。

 てか、そこじゃない。

 あれ確か、普通に買ったら何100万と飛ぶ代物だよね?」

「バニラ、フルーツ、フローラル、ハーブ、エキゾチック、チョコレート、メープル、ハニー、パウダーのアロマも出せる。

 Bluetooth対応で、音楽は流せるし、180°までなら映像も映せる。

 勿論、本やスマホも持ち込める」

「普通に店開けよ。

 それはそうと早速、試して来てオケ?」

「まる」

「よしゃ言質取った、もうあたしのもんだ、誰にも文句は言わせない」

「最初から。

 あと、その前に用足し済ませとくべし」

「りょ」



 英翔えいしょうとのズレに慣れつつある友灯ゆい

 その事実に彼女が気付いたのは、カプセルに入った後だった。





「1階は共有スペース兼ゲスト・ルームとし、2階は友灯ゆい、3階は英翔えいしょうのテリトリーとする」



「互いの生活スタイル、考え方、自由、知識、価値観、仕事、習慣、癖、好み、交友関係、趣味、休日、時間、事情、差異、その他諸々(特にプライベート)を考慮、尊重し合う」



「洗濯物や水回りは自分で管理する」



「なるべく遠慮、無理はしない」



「最低限の節制は心掛ける」



「水道光熱費は各自で負担する(階ごとに分ける)」



「食料、生活必需品などは無くなり次第、気付いた方が適時、補充する」



「家賃は無し」 



「体調が悪い時などは素直に申し出る(言い辛い理由は伏せるのも可)」



「互いの部屋への無断侵入はNG(緊急時は例外)。

 また、入る時は必ずノックする。

 フロアまではセーフ」



ほうれんそうは欠かさない(目的などは伝えずとも良い)」



「予定、シフトはカレンダー、共有のアプリ、ホワイト・ボードのいずれかにメモしておく」



「人を招く時にはあらかじめ連絡し許可を取る」



「意見交換、擦り合わせをする定例会を開く」



「余程だらしなくなければ、服装は自由」



「過度なスキンシップ、過干渉、無理強いはしない」



「無人の時はロックし、鍵は常備する」



「相手が困っていたら迷わず、全力で助ける」



「『イジり』と『イジメ』を履き違えない。

 親しき仲にも礼儀あり。

 最低限の敬意を払う」



 以上が、フロアを案内されリビングで夕食がてら話し合った、二人で暮らす上でのルールである。

 


「で、友灯ゆいさん。

 友灯ゆいさんは、どれくらいしい?」



 食べ終え紅茶を挟みつつ(英翔えいしょう特製の)デザートを頬張っていた友灯ゆいに、謎の質問が向けられる。



 彼の虫食い言葉を読み取るのに長けている友灯ゆい

 かといって万事、意思疎通が出来できわけではない。

 彼女の理解、予測が及ばないケースもまた、存在するのである。

 丁度、今のように。



「どれくらいって、なにが?」

「給料」



 和んだムードを台無しにする、まさかの殺風景ワードに、吹き出しそうになる友灯ゆい

 が、そこは大人、いっぱしのレディーとしての根性、矜持により、どうにか耐え忍ぶのだった。

 念の為、口元をティッシュで拭き取るのも怠らない。



「な、なんこと?」

友灯ゆいさんに、特撮トークを噛ますから。

 好きでもないのに解説されるのは、しんどいし、立派な仕事でしょ?

 だから、賃金。

 バキサブスクみたいな物」

「……」



 ゲンド◯ポーズを取りつつうつむき、熟考する友灯ゆい

 言いたいことも言うべきことるが、ず彼に話しておくべきなのは。



「……ねぇ、英翔えいしょう

「なーに?」

あたしって、家賃しで、ここでお世話になるんよね?」

「お世話、だなんて。

 それじゃ、友灯ゆいさんに失礼だよ。

 一緒に暮らす以上、対等じゃなきゃ」

「……ねぇ。

 ごめんだけど、なるべく静かにしててくれる?」



 一向に進まなそうなので、恥も外聞もかなぐり捨て、ともすれば反抗的な態度に出る友灯ゆい

 当てられた英翔えいしょうも、訳は分からないが、大人しく従った。



英翔えいしょう

 ルール決めてた時も気になってたけどさ。

 君、あたしに対して甘ぎない?

 さっきだって、『水道光熱費は自分が持つ』とか、『英翔えいしょうのフロアはあたしも出入り自由』とか、『あたしはラフな格好で構わない』とか言ってたよね?

 あたしが頼まなきゃ、あのままだったよね?

 今だって。

 英翔えいしょうにとっての意義、重要性は理解したけど、『話を聞く』だけでギャランティが発生するのは、いくなんでもヌルゲーぎるでしょ。

 なんで、そこまであたしを優遇するの?

 正直に、教えて」



 意見を求められているのを察した英翔えいしょうは、やや決まりの悪そうに答える。



「……友灯ゆいさんは、女性だから。

 男よりなにかと大変なんだから、優先するのは自明の理だよ。

 それに、俺の我儘わがままに付き合わせるんだし」



 押し黙りつつ、友灯ゆいは考えを巡らせる。



 知っていた。

 英翔えいしょうが自分を手厚くもてなしてくれているのは、『自分をのがさんとするため』だけではない。

 あくまでも、『自分をおもんぱかる、敬っているがゆえ』なのだと。

 


 正直、その申し出はうれしい。

 友灯ゆいとて、本音を言えば、お金はしい。

 彼のマメな気遣いも、ありがたくはある。



 でも。

 


「……気付いてる? 英翔えいしょう

 そうやって『優先』してる時点でさ。

 あたしと君は、間違っても『対等』じゃあないんだよ」



「……あ……」



 ここまで来てようやく、友灯ゆいの言わんとする趣旨を、英翔えいしょうは正確に受け取った。

 


 この際、はっきりさせておこう。

 勢い付いた友灯ゆいは、それ以外に気になっていたポイントを指摘する。



「それだけじゃない。

 英翔えいしょうって、喋り方ゆっくりだし、ちょくちょく疑問形になるよね。

 目覚めたあたしにポップコーンくれた時も、今日の帰りにメニュー聞いた時も。

 それに、言葉を選んでいる節もる。

 どうして?

 ひょっとして全部、同じ理由?

 要するにさ……英翔えいしょうあたしに『遠慮』してない?

 これって、すでにルール違反だよね?」



 無言になり、目を逸らす英翔えいしょう

 自分のピリピリした重苦しいオーラが原因なのを悟り、友灯ゆいは雰囲気を改める。



「……ごめん。

 こういう、キツいの言いたいんじゃないの。

 ただ……英翔えいしょうにも、なるべくリラックスして、あたしに接してしい。

 この場でのあたしの望みは、それだけなんだ」



 彼の横に移動し、気不味きまずそうな面持ちの英翔えいしょうの手を取る友灯ゆい。 

 穏やかな物言いに誘われ、まだ気後れしながらも、英翔えいしょうは語り出す。



「……引いたり、しない?」

「なーに言ってるんだか。

 あたしなんか昨日、初対面の時点で、無駄に長いヘビーなの噛ましてたじゃん。

 それくらい、どーってこといって」



 空いていた左手で自身の胸を叩いてみせる友灯ゆい

 その頼もしい姿に、英翔えいしょうは破顔。

 ほどくして、話し始めた。



「……俺さ。真面まともに話せる友達、ずっとなくてさ。

 なんか……色々、合わなくって。

 小中高大と適当に過ごして、なんとなく就職して。

 そうやって生きて来たから、友達とかもなくって」

「……うん」

「でも大人になってから、スマホのラジオ・アプリやってたんだ。

 そこでなら、特撮トーク出来できる相手、最初の友達が作れるかな、そういう居場所が増えるかな、って。

 でも……全然で。

 俺の声にしか興味い人とか、大して聞いてもいないのに付き合いだけで、アップしたと同時に『いいね!』くれる人とか……そればっかりで。

 どれだけ調べても復習しても、怪文書シナリオ読み上げても、ほとんどコメントもらえないし。

 誰かからの、ラブコメっぽい台詞セリフのリクエストに答えた時くらいしか、ちゃんと話せなくってさ。

 ……1年経つ頃には、嫌気が差した」

「……うん」

「俺、何やってるんだろって。需要と供給が、まるで合ってないなって。

 そしたらなんか、途端に恥ずかしくなって来た。

 おまけに、仕事も立ち行かなくて。

 向こうもハードなのに、なんでオフまで苦しめられなきゃいけないんだよ、ってなって。

 飽きたし、辛いし、時間も実入りもメリットもモチベも意義もいから、止めちゃった。

 思い知らされたんだ。友達でもないファンが500人近くても、誰も俺に、俺個人に俺本人に、俺の本音や趣味に、興味なんか持ってくれないんだな、って。

 辛くて、悲しくて、寂しくて……。

 ……怖くて、怖くて、たまらなかった」



 友灯ゆいではなく、過去の自分を見詰めながら、ゆっくりと明かす英翔えいしょう

 その双眸そうぼうわずかに潤わせながら、英翔えいしょうは弱々しく友灯ゆいに微笑む。



友灯ゆいさんを特別扱いするのは、そういう理由。

 俺……いつだって、不安なんだ。

 絶望の淵に追いやられ続けてた孤独な俺にとって。


 友灯ゆいさんは最後の砦、希望だ。

 この人にまで見放されたら、どうしよう。

 俺が次に放つ言葉で、友灯ゆいさんにまで愛想尽かされたら。

 俺にも特撮にも繋がりの友灯ゆいさんが俺とてくれてるのは。

 ラジオの時みたいに、俺の声目当てってだけなんじゃないか、って。

 その内、また前みたいに、どこまでも一方通行の、都合のいだけの神様にされるんじゃないか、って。

 そしたら、俺……もう誰とも、一番したい話、出来できなくなっちゃうんじゃ、って……。

 そう考えるだけで、もう……一杯で、さぁ……」



 言葉通り、英翔えいしょうは一杯だった。

 止めなく溢れた感情が、言葉となって、涙となって、こぼれ落ちて行く。

 ここに来るまでの友灯ゆいが追い詰められていたように、彼も限界だったのだ。



 友灯ゆいは、必死に考える。 

 恐らく全てではないにせよ、メインを曝け出してくれた彼に今、すべきことは。

 彼の飾らない告白に応えるには、なにが直通なのだろうと。


 

「……英翔えいしょう、ごめん。

 ちょっと、ルール破る」



 悩んだ果てに答えが見付からなかった友灯ゆいは、捨て身の戦法に出る。

 傷付いた彼の心を癒やし、守るべく、彼を優しく抱き締めたのだ。



友灯ゆい……さん?」

「……『過度なスキンシップは禁止』、だったけどさ。

 つまり、『過度でさえ無ければセーフ』ってことだよね。

 それに、これは『異性』としてじゃない。

 徹頭徹尾、『親友』『同居人』の範囲内。

 だったら、有りだよね?」

「まぁ……そう、かなぁ?」

「そうなの。

 そんで、英翔えいしょう

 君、あたしを甘く見過ぎだし、誤解しぎ」



 ハグを解き、英翔えいしょうの頬を抓り、友灯ゆいは出たとこ勝負に臨む。



「その1。

 あたしは、個人的にも特撮に興味を持ち始めてる。

 よって、君の一番したい話題にも関心を寄せてるから。

 断じて強制、矯正じゃないし、ましてやビジネスでもない」

「その2。

 あたしは、君の声に関して、そこまで興味無い。

 てか、『トクセン』には君以上のイケボがる。

 確かに、格好かっこいとは思うけどね」

「その3。

 あたしは、あまりにご都合主義染みてる英翔えいしょうに若干、食傷気味な人間だから。

 そこまで君を好都合がりたくない」

「その4……は、特にいな」



 大胆なアピールに出た羞恥心を遅れて覚え、おまけに計画と言葉に詰まった友灯ゆい

 やや紅潮こうちょうしつつ立ち上がり、ビシッと英翔えいしょうを指差す。



「と、かくっ!

 今の聞かされた上でも現状、あたし英翔えいしょうから離れる理由は、万に一つもい!

 別に、どっかの鷺島さぎしまみたいにモラハラれたり、結婚詐欺られたりしたんでもないし! 

 だから、あんま不安がるなっ!

 自分から『なるべく遠慮しない』って言い出したんだから、責任果たすためにも、あたしに気ぃ遣いぎんな!

 家事や女性力はともかく、イエスかノーかの判断くらいあたしかて出来できるし、ちゃんと言うわ!

 普段は溜め込んでから暴発するタイプだけど、あんたの前では、きちんとするわい!

 大体、あんたがてくれなきゃあたし、家も講師も家具も一遍に無くすでしょうが!

 って、あーいや、そうじゃなくってぇ!

 あー、もぉ……あたしの高慢チキンー……」



 咄嗟にエゴな発言が出た所為せいで自己嫌悪に陥り、屈み込む友灯ゆい



 今まで散々さんざん、自分を抑え、縛り付けて来た反動か。

 英翔えいしょうる時は、どうも自己中心的な言動、思考が目立つ。

 素直になれるのは助かるが、なにもここまで露骨にならずとも……。



「あははっ」



 などと落ち込んでいると、不意に上から笑い声が聞こえた。

 見上げれば、それまで暗かった、平時でさえ無表情な英翔えいしょうが、屈託なく笑っていた。



友灯ゆいさんてさ……結構、自己中だよね。

 だからこそ、嘘を感じない、信用に足る人だって確信したし、再確認出来できてるんだけど」

「お、おめぇっ、このぉ!!

 めぇや、そういうのっ!」

「あと、唐突に出る方言も、ウケる」

「おだずなよ、おめぇ!」



 立ち上がり、最初こそ怒っていた友灯ゆいだったが、やがて彼に釣られ。

 気付けばダイニングは、喧騒とは無縁の空気に包まれていた。



「……ケーキ、おかわりする?

 まだ冷蔵庫に入ってる」



 ややあって、突拍子も英翔えいしょうが言う。

 友灯ゆいは、少し呆れながら返す。



「あんま甘やかすなってば」

「これも俺流の息抜きだから」

「おめーさては、そう言えばあたしが負ける、撒けると思ってるな?」

「ご注文は?」

「レモン・チーズ・ケーキ!」

「いや、なんで冷蔵庫の中身ちゃっかりしっかり把握してるのウケる」



 込み上げる笑いを堪えながら、キッチンに向かう英翔えいしょう

 


 なんとかなったかなぁなどと思いつつ、友灯ゆいは背凭れに身を預け、伸びをする。



 きっと、これからも、こんなイベントは待ち構えていることだろう。

 自分と英翔えいしょうは、性別も、趣味も、金銭感覚も、得意分野も異なる。

 遅かれ早かれ、衝突は避けられないだろう。

 


 けど。

 それでもきっと、自分達は大丈夫。

 喧嘩するのも食い違うのも、互いを思うこそのことなのだから。

 互いを敬い、求め合えば、自ずと同じ、理想の答えに辿り着けるはず

 


「うーん……」



 でも、なにか物足りない。 

 もっと、自分達だけの、自分達らしい特別感がしい。

 相手が同性だったら、こういう時は自然と愛称とかで呼んだりするが……。



 ……愛称?



「それだっ!!」

「え、うん。

 レモン・チーズ・ケーキ」

「違う、そうじゃない!

 合ってる!」

「どっち?」

「そっちは正解だけど、あたしが言いたいのは違う!」

「よく分からんけど、とりま座って。

 あと、ずは食べて」

「せやな!」



 英翔えいしょうに諭され、大人しく座る友灯ゆい

 デザートを完食し皿洗いも済ませたタイミングで、友灯ゆいは切り出す。



「これから英翔えいしょうこと、『エイト』って呼ぶ。

 その方が、なんい」

「どこの夜明けの刑事?

 でも、そっか……」



 友灯ゆいの提案を受け、英翔えいしょうくすぐったそうなリアクションを見せた。

 友灯ゆいには、それが不可解だった。



「……それ、俺の父親が付けようとしてた名前。

 俺の父親も、根っからの特撮好きでさ。

 だから、ライダーや戦隊、ウルトラの生みの親の名前から取って、『英翔えいと』にした。

 ヒーローの半分だから、『英翔えいと』だって」

「んぅ?」

「『16』って書くと、『ヒーロー』って読めなくもないでしょ?

 だから、その半分の『8』、つまり『エイト』。

 父親曰く、『ヒーローなんて、助けたいと思える、応援してくれる誰かがなきゃ所詮、半人前だ。だから、いつかそういう大事な存在に出会えるように』って」

「……ちょっと独特だけど、由来もセンスもいのにさ。

 この親にしてこの子あり?」

「かもね。

 で、母親に糾弾されたらしいんだ。

『ここまでお腹痛めて、死に物狂いで、やっとの思いで産んだ我が子に対して、とはなんですかっ!?』って。

 産後に、病室で」

「全面的に同意だけど、それはそうとバイタリティすごいな!?」

「ねー。

 そんなわけで、読み方だけ変えて『英翔えいしょう』になった。

 まぁその甲斐かいあってか、呪文の『詠唱』みたいに話が長くなりがちな人間になったわけだけど」

「ノー・コメント」

「いや、それ自体がコメント」



 依然として赤らんだ頬を掻きながら、英翔えいしょうは続ける。



「だからさ。

 大袈裟かもだけど、『運命みたいだな』、って。

 俺のルーツ知らない状態で、俺の大事な人が、最初の異性の友達が、俺にヒーローの話をさせてくれる人が、俺を『エイト』って呼んでくれたのが。

 こう……俺をヒーローたらしめる存在にしてくれる、ってーか……。

 特撮の話を聞いてくれる友灯ゆいさんを介して、こんな俺でも、少しはヒーローに近付けるかな、なんて」

「なーに馬鹿バカこと言ってるんだか。

 あんたはもう、あたしの人生、物の見事に拾い上げてくれてるじゃないのよ。

 あんたとの出会いが、あたしにとってのリスポーン地点だっての」



 英翔えいしょうの髪をグチャグチャにしつつ、友灯ゆいは満面の笑みを見せる。



三八城みやしろ 友灯ゆいにとって、森円もりつぶ 英翔えいしょうは。

 紛れもくヒーローであり、揺るぎくヒーラーだ。

 あんたに聞く耳持たない、正面から見ようともしない、有象無象の、正論染みた戯言なんか、知ったこっちゃない。

 そんなアンチ共、見付け次第、あたしが全員、根こそぎ蹴散らしてやる」



 自らの両手を突き合わせる友灯ゆい

 蹴散らしたいのか殴りたいのか曖昧なのはさておき、その姿は英翔えいしょうには、とても頼もしく映った。



 同時に、思った。

 俺も、彼女に応えたい、と。



「……『ユーさん』。

 これからも、どんどん俺を、助けてね」



 ユーさん。

 それは、英翔えいしょうにとって、特別な呼び方であり。

 彼には知る由もいだろうが、友灯ゆいにとっては殊更、意味を持つ愛称。

 自分が憧れてならない、とある人物を想起させる物だった。



 ……本当ほんとうに、出来でき過ぎた偶然だ。

 英翔えいしょうと出会えたのも、その名前で呼ばれるに至ったのも。

 運命を通り越して、なにか、作為的めいた物を感じるような気さえする。



 ……いや。

 きっと、自分の勘違いだ。そうに違いない。

 そう結論付け、友灯ゆいは勝ち気に微笑む。



「おう!

 任せとけ!

 ガンガン甘えろ!」

「家事以外は」

「そっちは頼んだ!」

「頼まれた」



 やはり、どこか言葉の足りない二人。

 


 他者から見れば、所々がいびつながらも。

 こうして英翔えいしょう友灯ゆいは、また少し近付いて行くのだった。





「ユーさーん。

 ゲームしよーぜー」

「サザエさ◯か。

 で、何するん?」

「テェテーブル」

「て……あんだって?」



 食事後、自分のフロアに戻らずリビングのソファでくつろいでいた友灯ゆいに、唐突に提案する英翔えいしょう

 彼が持っているカゴには、なにやらライダー系統とおぼしきソフビが大量に入っており。

 英翔えいしょうは、それをテーブルに置き始める。



「テェテーブル。

 俺が考えた、多分オリジナルのゲーム」

「おめさん本当ホントに万能だな。

 で、概要は?」

「ガイヨォアーパカッ」

「スト○feat.関ジャニ○止めろ。

 無駄にクオリティ高いし」

「これが本当ホントの関ジャ○英」

「言わせんよ?」

「ユーさんなんでも拾ってくれるね」

「フリスビーやボール取りに行かされる犬の気分。

 て、何の話?」

「ん」


 

 友灯ゆいのツッコミを流し、英翔えいしょうは、準備済みのマニュアルを渡す。

 どこまでも入念だなぁと笑いつつ、友灯ゆいは黙読を開始する。



「ゲーム内容

 ボードゲーム感覚でグッズ(フィギュアなど)を用意し、より強く相手に『てぇてぇ』と思わせた方が勝ち」



「1:コマの数は無制限、自由」



「2:コマの後出しも可能」



「3:1ターンにつき1体コマを召喚出来る(これを『アドベント』と呼称する)」



「4:ターン毎に動かせるコマは1体だけ」



「5:アドベントした直後はアクション不可」



「6:劇中での関係性、能力などによりコマを強化したり、相手のコマを弱らせたり倒したり奪ったり出来る(これを『イベント』と呼称する)」



「7:相手プレイヤーも理解した上で初めてイベントが起こせる」



「8:イベントを起こす為に補足説明も可能(これを『ベント』と呼ぶ)」



「9:相手が飽きたり拒否した場合はイベントは起こらない。

   但し、最初からパスは出来ない。

   少しはベントを聞くこと」



「10:スマホをコマとして使い、音楽や写真で自陣を強化する事も可能。

    ただし、相手の意向によりキャンセルになる場合もある」



 読了した上での感想。

 ちょっと本格的過ぎる。

 そして、固有名詞を『ベント』で統一してるのがすごぎる。



 が、これではあまりに無能丸出しなので、さらことにした。



「これ、つまりボドゲか」

「そゆこと

 まだβ版だし、今回はコール無しにする?

 それはあくまでも罰ゲーム的な要素だから、オミットしてもスポイルはされないし」

「エイトくん。

 なんか、意識高くなってる。

 ギリ通じるけど、ちょっと気になる。

 横文字ばっか使われてるから、当てられた?」

「ごめん。

 モディフィケーションする」

出来できとらんわ。

 前半はきちんと出来できてたのに、惜しかったな」



 そんなやり取りを挟みつつ、落ち着きを取り戻した英翔えいしょうが、再び解説に入る。



「今回のテーマは、ビル◯です。

 理由は、昨日『ベストマッチ』言ってたらスイッチ入ったからです」

「あ、これ、あれだ。

 赤楚◯二や犬飼◯丈だ。

 ぐらんぶ◯、まほチェ◯観てた友達から教わった」

「知ってる&活躍してくれるのうれしい反面、別ベクトルで嫌過ぎるけ」

「てかこれ全部、1年で出たの!?

 そんな、カゴ満たされる感じで!?」

「1回しか出番無いフォームも、その商品化も今時、珍しくないから。

 なんなら、1回しか使われなくて、後はBGM、小さい音量でしか流されない挿入歌とかもザラだから」

「切なっ!!」

「そう。刹那せつななの」

「合ってるけど違うパート2」

「とりま、早速やってみるべし」

「あいよ」



 話が纏まったタイミングで、特に示し合わせずにジャンケンする二人。

 友灯ゆいが勝ったので、彼女が先行である。



「こん中から選ぶんよね?」

「サー」

「ってもなぁ。

 まだ知らんから、分からんのよなぁ。

 とりま、なんか明らかにデザイン違うの選んどくか」



 友灯ゆい、ジーニアス◯ボルトのソフビ(英翔えいしょう謹製)をセレクト。

 英翔えいしょう、初手でラスボスの(事実上の)最強形態を出され、自分のターンが回る前から、まさかの大ピンチ。

 こんなん最初から出されたら、控えめに言って打ち切り驀地まっしぐらである。



「何?」

「な、なんでもない……」



 英翔えいしょういぶかしむも、何も知らない友灯ゆいは無罪。

 そして英翔えいしょうは提案者。

 よって、退しりぞく道はく、続行する他い。

 


 英翔えいしょう、苦し紛れに、ラビット◯ラゴンをチョイス。

 ベストマッチ枠であり、劇中でエボル◯(究極体)を追い詰めた最終回フォームである。

 しかし、これは失策。ここは、ジーニア◯エボルトを打ち倒したクローズ◯ルドを出すべきだった。

 すで英翔えいしょうは、ショックで冷静さを欠きつつあったのだ。

 


「金銀で格好かっこー!

 じゃあ、あたしは……この真っ赤のにする!

 そんで、こっちで攻撃だ!

 えい、えい!」



 友灯ゆい、キルバ◯をセレクト。

 ここに来て、まさかのラスボスの兄の登場。

 劇中では肩透かしに終わった夢のシーンが今、こうして現実となった。

 本当に未視聴なのか疑わしいレベルの攻撃である。

 しかも、兄弟バフにより、すで英翔えいしょうの心には尊さが芽生えつつある。

 おまけに、ジーニアス◯ボルトにラビッ◯ドラゴンをキックさせる友灯ゆいの無邪気な姿に、悶絶寸前。

 敵ながら天晴あっぱれ

 これは、不味まずい。



「じゃあ……。

 俺は、これ……」



 英翔えいしょう、マッスル◯ャラクシーを召喚。

 これで、どうにか◯ルバスは切り抜けられる。

 あとは、どうにかパーフェクト◯ングダム、プライ◯ローグ辺りを出し、この4人の並びが如何いかに尊いかガイダンスさえすれば、行ける。

 つまり、友灯ゆいの攻撃を2回凌ぎさえすれば、一発逆転を図れる。 

 勝利の法則は決まった。



 と、次の瞬間。



なんか、ちょっと派手だなぁ。

 シックなのにしよーっと」



 友灯ゆい、◯ラッドをアドベント。

 宇宙のあらゆる星を食い尽くすブラッド族の中でも選りすぐりの三巨頭の、まさかの揃い踏み。

 とてつもない恐怖と、とんでもない興奮を覚えずにはいられない、激アツ展開である。

 現に英翔えいしょうも、すでに思考が回らなくなりつつある。

 最凶トリオとの最終決戦シーンが脳内再生され、そっちにしか意識が向けられない。

 というか、これを計算無しで仕上げられる友灯ゆいが、実は最も恐ろしかったりする。

 ひょっとしたら英翔えいしょうは、物凄い人材を同居人に選んでしまったのやもしれない。

 さながら、メダル集めの才能を持つ火野◯司を選んだ◯ンクのごとく。

 ガイア◯モリと使用者のように、『自分達は惹かれ合った』とでもいうのだろうか。



「……」

「いや、しゃべれよ」



 スッと、英翔えいしょうは、手後れながらクローズ◯ルドをスタンバイ。

 すでに頭はろくに機能していないので、完全に条件反射である。

 おまけに、これで4大ライダー勢揃い、形勢逆転は遠のいた。

 ちなみに、自陣に同一人物が揃ってしまっているのは、セーフである。

 ゲームにキャラ被りは付き物。



「……あははっ」



 突然、友灯ゆいが笑い声を挙げた。



なんか、楽しいね。

 あたし、ビル◯は全然、知らないし、キャラもストーリーも関係性も、ちんぷんかんぷんだけどさ。

 でも、それでも楽しい」



 ゲームとはいえ真剣勝負中にもかかわらず、友灯ゆいは伸びをし、スッキリした表情を見せる。

 


「こんな風に、誰かと気楽に遊べたのも、羽伸ばせたのも、超久し振りで。

 しかも、その相手がエイトなんだもん。

 こんなん、楽しくないわけないもんね。

 それとも、あたしのツボが浅いんかなぁ。

 それにエイト、さっきから珍しくフェイシャル変わり捲りだし……。

 もう、可笑おかしいのなんのってやぁ……」



 感情と一緒に方言の出る友灯ゆい

 気付けば彼女は、無意識に心からの笑顔を浮かべていた。

 心から楽しんでいることを、嘘偽りく表現していた。

 かと思えば、友灯ゆいは少し膨れっ面になり、ビシッと英翔えいしょうを指差す。



「でも!

 エイト、まだあたしに遠慮してる!

 どうせ昨日みたいにヘビーなの噛ましたくなくて、手始めにゲームでライトにレクチャーしようと画策したろ!

 あたし、ちゃんと気付いてるかんね!

 そもそも昨日だって、あの回をエイトがさきに見せたのは、やられ役の湯島を鷺島さぎしまに見立ててあたしにスッキリさせるためでしょ!

 で、それについてエイトがまったく触れないのは、あたしに嫌な思いをさせないためでしょ!?

 そんな風に気ぃ回せるい奴、他にないってか、そもそも嫌いになれっかっての!

 もう絶対ぜったい、あんたを解放してやんないんだから!

 あんたが拒否っても、地獄の果てまで相乗りしてやるんだからっ!

 だから、そのっ……色々いきなり覚悟されたし、おめーっこの!」


 

 照れ隠しか、何故なぜかツンデレ調で、強気に宣言する友灯ゆい



 彼女は夢にも思わなかったことだろう。

 一連のさまが、数々の言葉が、どれだけ英翔えいしょうの胸に響いたか。

 裏でひそかに、すでに雌雄を決しているなどとは。

 


「……ユーさん。

 ちょっと、右手挙げて」

「え?

 ほい」

「んで、ここに置いて」

「こう?」



 友灯ゆい三八城みやしろ 友灯ゆいを召喚。

 これにより、英翔えいしょうの中で尊さが絶賛ピーク中の友灯ゆいがフィールドに出る。

 よって。



「てぇてぇカンスト、ダイレクト・アタック、クリティカル・ヒッ。

 ウィナー。

 ユゥゥゥゥゥイィィィィ。

 ミヤシィィィロォォォォォ」

なんでぇ!?」

「いやー、見事な連携プレーでしたねー。

 まさか、猛者もさを揃え恐怖のどん底に陥れたタイミングで、あんなエモい台詞セリフでハット・トリックを締めるとはー。

 相手プレイヤーも、流石さすがに為す術もく、胸を打たれた模様です。

 あれは、大人には余計に響く、実に強烈な一撃でしたねー」

「エイトが、壊れたぁぁぁ!?」



 こうして、最初から最後まで無計画、無知、無垢に圧倒したまま、友灯ゆいが圧勝した。



 本日のテェテーブル。

 友灯ゆいの、勝利。



「ところで、これ、あんま動かんくない?」

「……そっちは、ソフビ。

 安価で、倒れにくい。

 反面、塗りが浅かったりする。

 特に背面」

「じゃあ、エイト的には、アクション・フィギュアの方がい感じ?」

「……そうでもない。

 アクション・フィギュアは、とかく直立させるのが難しいし。

 俺は基本的に、置いて飾ってるだけで満足するし」

「なるほど。

 なんか、直立させるコツとか、いの?」

「……慣れ?」

「身も蓋もないな!!」



 試合後に、そんなレクチャーを受ける友灯ゆい

 英翔えいしょうの瞳に、一抹の寂しさが見え隠れしたが、友灯ゆいは気にしないことにした。

 なにやら、決して触れてはならないと、胸騒ぎがした。





 「エイトー。

 相性診断と自己紹介も兼ねて、Q&Aやっぺしー。

 互いに質問、出し合ってさー」 

「やるー」

「んじゃ、こっちー」

「来たよー」



 テーブルの上を片付け英翔えいしょうが戻って来たタイミングで、友灯ゆいが誘いをかける。

 

 

 言葉通り、英翔えいしょう友灯ゆいの隣に来る。

 まさかの、クマのパジャマ姿で。



「……」

「ユーさん?」

「おめっごの……不意打ち、止めろ……」

「変だった?」

「大変、結構です……」

「ならかった。

 早く、やろー」

「おめー本当ホンドに30がぁ……?

 可愛かわいいがらって、なんでも許されっど思うなよぉ……」

「どうせなら、質問を書いた紙をシャッフル、裏返しにしない?

 カードを引いて説明し合おー」

「話、聞げっごのぉ……」



 英翔えいしょうの童顔りは置いておき。

 調子の戻った友灯ゆいも賛同し、二人でカードを用意し、トランプの神経衰弱のように並べ。

 Q&A、スタート。



子供の頃の将来の夢は?

「「忍者」」

「カクレ◯世代だもんね」

「先生に、『立派な忍者になってね』って言われた」

「先生、優しいな!?」


 

好きなのは寒色? 暖色?

「暖色」

あたしもー」



生活リズムは?

「「夜型」」



好きな動物は?

「「クマ」」

「デフォルメ限定」

「ヌイ限定」



夏休みの宿題は?

「サクッと倒すよ」

「以下同文」

「今の、デカイエローっぽい」

「ウケる」



好きな季節は?

「「春、秋」」

「過ごし易いもんね」

「寝るのに最適」

「それな!」



冬は?

「「辛い」」

「さては、ホワル◯2やったな?」

「ちな、かず◯派」

あたし、雪◯」

「料理得意だもんね」

なんで見抜くし言うかなぁ!?

 言っとくけど、それだけってんじゃないかんな!?」



インドア? アウトドア?

「「インドア」」



待ち合わせは?

「早め」

「目的地関係無く、前乗りしてヒトカラしてたい」

「パワフルだな!?」



風呂は?

「「長め」」



物を買う時に重視するのは?

「値段」

「と、長持ちするか」

「あと色な?」



初デートで行くのは?

「『映画館』って言ったら、友達にドン引きされたんだけど、どう思う?」

「俺的には、りよりのり」

「ならいや。

 テンキュ」

「今度、連れてって」

かろう」



カラオケに行ったら?

「「目一杯騒ぐ」」

「今度、行くか」

むしろ、これ終わったら出来できるよ?」

「そうだったな!?」

「ちな、どこの部屋も防音完備」

「至れり尽くせり!」



ヒトカラは?

「よく行く」

「よくやる」

「ここでな!」



推しコンビニは?

「「ミニス◯」」

「デザートもデリカもいしなぁ」

「惜しむらくは、店舗数」

「それな」



推しスーパーは?

「「ザ・BI◯」」

「安さ最強」



もし当日いきなり遊びに誘われたら?

「相手と場所と内容によるけど、行くと思う」

「ユーさんの誘いなら、光の速さでダッシュさ」

本当ホント出来できそうだし近所迷惑だからめて差し上げろ」



どの空が好き?

「星空」

「夕空と青空も捨てがたい」

いずれも、最強」

「質問の意味っ!」



RAINレインの頻度は?

「ほぼ毎日、お喋りしてそう」

あたし目線でも、カップル余裕で超えてる」

「トモコイ以上シンエン未満。

 略して、『トコシエ』」

「ピン・ポイントに理想的過ぎる……」

えず、ID交換する?」

「そういや、まだだった!」

「の前に、ダウンロードせんと」

「いや、持っとらんのかーい。

 あ、あたしも、鷺島さぎしま嫌いぎてアンストしてたわ。

 今度、友達と同僚のID、改めて教えてもらおう」

「ねぇそれ、別れた恋人の私物やプレゼント全部捨てる感覚?

 気持ち分かるけど、とんでもないことしてない?

 バック・アップすら残してないの?

 まぁ、それはそれで、ダメカワだけど」

「なお、家族のIDは聞かない」

「聞いたげて。

 後で絶対ぜったい、拗ねるし拗れるから。

 あと、通話代かかるから。

 おかねだいじに」



スマホの機種は?

「a◯」

「エー、ユー」

「あいさつするたび、ともだちふえるの?」

「そういや、俺達の名前足すと、『エイユウ』になるね」

「ホンマや!」



使ってるスマホは?

「「Andr◯idのフォアダブル」」



よく行く電気屋は?

「ヤマー◯電機」

「安いもんね」



家での過ごし方は?

「「まったり過ごしたい」」



休日は?

「エイトの特撮講義受けたい。

 特撮講義、略して『トッコウ』」

い名前。

 俺も話したくてウズウズしてる。

 録画したの編集してるから、楽しみにしてるがよろし」

「あり!」

「どう」



下ネタ得意?

「AVもろとも、度が過ぎるのは、この世から滅べば良いと思う」

「同意」

「ホラグロとBLも苦手」

「右に同じ」



和食、洋食、中華どれが好き?

「「イタリアン」」



好きな食べ物は最初? 最後?

「「最後」」



酒は?

「弱いし、い思い出いから呑みたくない」

「また酔ってたら、俺が拾いに行くよ」

「廃品回収みたいな言い方すんな。

 そんなに間違ってないけど」



甘党? 辛党?

「「甘党」」



たい焼きは何派?

「「チーズ」」

「大成苑、マジ最強」

「石巻民で良がっだぁ!」



大判焼きと言ったら?

「「クリーム」」



好きな中華まんは?

「「ピザまん」」



好きな寿司は?

「「炙り焼きチーズサーモン」」

「いや、さっきからうちらチーズ好きぎない?」

本当ホントにね」



ケンタと言ったら?

「「ビスケット」」



マッ◯と言ったら?

「スイートフロマージュ」

「ソーセージマフィン」

「あれコスパ最強よな」

「学生時代、めちゃお世話になった」

「分かる」



ポテトと言ったら?

「「カラオ◯合衆国」」



ちょっと奮発するなら?

「「びくド◯」」



よく行く回転寿司は?

「「く◯寿司」」



よく行くバーガー屋は?

「バーキン」

「最近、仙台に出来できたよ」

「今度、一緒に行くべし」

「異議無し。

 ちなみに、あたしはキャプカン。

 石巻にもあるし」

「あるのウケる」



唐揚げにレモンは?

「「かける」」



好きなドリンクは?

「レモネード」

「クラフィティー一択」



好きなドーナッツは?

「「チョコファッション」」



好きなおにぎりは?

「「ツナマヨ」」



少食? 爆食?

「めちゃ食べるよ!」

「腕が鳴る」

あたしはお腹鳴らしまくる!」

「相手に、

「綺麗に落ちた!」



好きなポテチは?

「エイトが昨日、作ってくれたの!」

「実は今日も、ここに用意してたり」

「ゴチ!」



好きなキャンディは?

「夏季限定の炭酸系」

「アメレオン」

「何それ?」

「色だけだと味が分からないキャンディ。

 コーラ、ソーダ、メロン・フロート、レモン、オレンジ、アップル、グレフル味の7種類」

「それ、どこの?」

DENEデーネ部英糖」

「おめーどごまで最強なの?」



好きなポップコーンは?

「バター醤油」

「イオ◯のジャガバター」

「それ同じ味だし期間限定」

「映画には欠かせんよね」

「ポテトとナゲットとナチョスとホット・ドッグとサンドとチュリトスとクレープもな!」

「モノスゲーイ」



好きな映画監督は?

「新◯誠」

「原◯一」

「誰?」

「クレし◯の戦国やオトナ帝国の人」

「なる」



入ってるサブスクは?

京映きょうえい特撮ファンクラブ、ツブイマ、アニスト、デズニー、ツベのプレミアム」

「多いな!?」

「安価なのばっかだし。

 あと、キャストでモニター繋げてるから、ユーさんも自由に観ていよ」

「スマホのプラン目じゃないレベル。

 仕事もだけど、エイトの家事力のお陰で余裕出来できたし、あたしなにか入ろっかなぁ」

「アマフラかネトフレ入ってもらえると全俺が助かる」

「どっちも加入して全お前を助けちゃる」

「ああーー。

 ぎょふのり。ぎょふのりーーー」

「微妙に意味、違わない?」

「言いたかっただけ」

「左様か。

 良かったな」

「ん」



好きな番組は?

「トリビア」

「どっちの料理でショー」

「ホットサンド回好き」

「作って来る?」

「エイトも好き。

 あと、ゴチです」



好きなジャンルは?

「「ラブコメ」」



好きなアーティストは?

「阿部 真◯」

「高◯ 優」

「似てんな!? 路線!」

「ロックとバラードの二刀流」



好きな漫画雑誌は?

「「ミドジャン」」



ガッシ◯で好きなのは?

「「テッ◯とウォンレ◯」」



キヨ◯グ? キヨ◯ズ?

「キヨ◯グかなぁ」

「高校時代、キヨ◯グ小説読み漁ってたわ」

「俺も」



ワンピー◯で好きなのは?

「「アラバス◯とCP◯」」



でびあく◯は?

可愛かわいい」 

「ジョ◯もい」

「セブン◯ーもい」

「ところで、◯びあくまの声の主、誰か知ってる?」

「胡蝶さんと、リゼ◯のレ◯やってる二人。

 前者はナレと母親、後者は主人公と掛け持ち」

うっそだろぉ!?」

「マジなんだなぁ、これが」



アドベンジャーズで好きなのは?

「あんま知らんけどスパイダーかな?」

「俺、小学生の頃、格ゲーでスパイディ使いまくってた」

「何それ可愛かわいい」

「スパイディは、最新映画神ってたから、今度紹介するわ」

「よろ!」



好きなポケモンは?

「ヒメグ◯」

「リング◯にはしない」

「その通り」



嫌いなポケモ◯は?

「バシャー◯」

「サラッとネタバレ噛ましたコロコ◯、今でも恨んでる」

「アチャ◯の進化系なの隠した上でな」



ポケモ◯、どこまでやってた?

「「ダ◯パ」」



ポケス◯といえば?

「ベロリン◯の回転寿司」

「寿司も多いな、今日!」



ファミス◯といえば?

「「雪合戦」」



スーパーモンキーボー◯といえば?

「「モンキーファイト」」



クラッシュ・◯ンディクーといえば?

「「カーニバル」」



サルゲッチ◯といえば?

「3」

「サルバト〜レ」



スイッ◯で遊ぶのは?

「スマブ◯」

「アルティメットチキンホー◯」



スーパーマリ◯RPGといえば?

「「ばくれつカブトムシ」」



エアライ◯といえば?

「「ヨコライ◯」」



キン◯ーの推しは?

「ロクサ◯」

「スマブ◯にソラ来た時、ヤバかった」

「なー」



初めて自分で買ったゲームは?

「グレイセ◯」

「からのハー◯、イノセン◯」

「分かり味」

「◯レイセスは、バトルも神」

「同意」



 と、こんなノリでQ&Aを終える二人。

 互いの相性、趣味趣向の一致具合を再確認した二人は、そのままゲームやトッコウなどで、仕事に差し支えない範囲で、賑やかに夜を明かすのだった。



 余談だが。

 七色の声と演技力と歌唱力と神ボイパと超合金製の喉を併せ持った英翔えいしょうにより、友灯ゆいは唸らされっ放しだった。





  英翔えいしょうと暮らし始めてから、最初の出勤日。

 英翔えいしょうが作ってくれた大量の弁当を引っさげ、コンディションも整った友灯ゆいは笑顔マシマシで出勤。



「……だから、この件は絶対ぜったい、ボスには内緒。

 確実に、ろくことにならないんだから。

 い加減、マジではっきりさせなきゃね。

 自分が今、どういう立場に置かれてるのか。

 どれだけ、あたしたちからヘイトを稼ぎまくってるのか」



 しようとしたら、休憩室前で不測の事態に陥り、出端を挫かれる。



 英翔えいしょうのお蔭で、生活面、精神面、プライベートも解決出来できた。

 ゆえに、友灯ゆいは油断、遮断していた。



 自分の身の回りは依然として、根本的な改善はなされていない。

 クリアすべき課題が、まだ山積みだったこと

 恨まれてもしかるべき嘘を、態度を重ね続けて来たこと



 それを思い知らされ、思い出させられ。

 自分の無力さ、無頓着さ、厚顔無恥さに押し潰され、友灯ゆいは泣きそうになっていた。

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