ビギンズナイト⑳
第一階層にある草原の果て。
いかにもダンジョンらしい岩で区切られた洞窟を下り抜けると……
まるで世界が変わった様に堅牢な城塞が姿を現す。
それこそが第二階層城塞(ロ〇リア)エリアである。
中世ヨーロッパの世界観が丸出しというか、ファンタジーと聞いて人が思い浮かぶ景色の一端が具現化されたような風景だ。
延々と続くこの城塞は本当に長大で、中国にある万里の長城に匹敵する広さではないだろうか。
俺達はミーティング(DTネタで散々弄られた)後――
装備を整え、初の第二階層へと足を踏み入れていた。
「新しい防具の調子はどう?」
「上々です。
軽い上に丈夫ですし……これなら負担になりません」
「カッコよくなったのです」
マリカさんの言葉に応じた俺にルリアからお褒めの言葉を頂く。
そう、今回得た魔核売却の報酬で俺は装備を一新した。
使用していた刀はそのままだが……防具の重要性を痛感した俺は報酬を全て遣って新しい防具を購入したのだ。
頭部を守る鉢金。
皮鎧を超える防御力を持つ胴丸。
指先~手首をを守る小手に脛当て等の部分鎧。
完全オーダーメイドになったので高くはついたが……その甲斐あって動きに不便を感じることはない。
俺は前衛でも金属鎧を纏い大盾を構える重戦士(タンク)ではなく、技とスピードを売りにする軽戦士――所謂サムライ型――なので、装備の重さと防御力のバランスの見極めが重要になる。
その点あの工房の主は素晴らしい腕前をしていたのだろう。
凄い美人だったけど……同席したパーティの女性陣を見てから、急に蛇の様なねちっこい瞳で見つめてきたのがよく分からなかったが……
「確かによく似合うミコ。
ただあれミコね……その姿で幟を持つとまるで……ぷぷw」
「ああ、やっぱりミコもそう思う?
あたしもさっきから何だかそう思っちゃって(笑)」
「日本一ぃ~なのです♪」
「それを言わないで下さいよ。
俺にとって最強のイメージは何? って訊かれたから、正直に答えたらこんな姿になっていたんですってば」
そう、俺の姿は傍から見ればアレである。
誰しもが知ってる日本一の太郎さんっぽい恰好になっていた。
「じゃあ、あたしたちはさしずめ三匹のお供?」
「ルリアはワンちゃんがいいのです」
「んじゃミコは優雅で美しいから雉担当。
残りのマリカがお猿担当、と。
なるほど……よく考えられてる配置ミコね。似合うミコよ?」
「ちっとも嬉しくない!」
「ははは」
そんなじゃれ合いをしてる内に、俺達は城壁に着いた。
本来であればここから延々と歩き、城門に陣取る中ボスを斃して通行証を手に入れるなどのフラグ立てがあるのだが……
「それで、ショウ君。
君の言う裏技って何?」
「はい。
ここから3時間掛けて城壁を巡って制覇してもいいんですけどね。
実力的にもここはもう問題ない階層ですし……
それは面倒なので、ショートカットしようかと」
「ショートカットって……?」
「ええ、外ならぬルリアの力を借りて、ですが」
「ルリアの力……どういう事なのです?」
自分を指差し小首を傾げるルリア。
俺は彼女の力を見た時から思い付いた秘策を皆へと説明するのだった。
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