ビギンズナイト④
厳重に守られたトーチカの先にあるゲートに探索者証をかざす。
生体データが付与された探索者証による承認と認識。
これは偽る事が出来ない、何よりも強固な自己の証明だ。
最近は民間にも技術が転用されるようになってきた程。
セキュリティーの事を考えれば確かに安全ではある。
高レベル所持者であれ、この手続きなしにはダンジョンへ潜れないくらい誤魔化しも効かないので信頼性も高い。
勿論問題なくスキャンは通り、勢い良くゲートが解放された。
ゲートの先にある仄暗い穴。
パッと見にはただの洞穴にしか見えないが、あれは次元の断層だ。
あの先は業魔の支配する固有領域になる。
俺達探索者の仕事とは、こちらに侵攻してくる業魔の間引きである。
存在自体が汚染物質の様な奴等。
奴等の数が増し地域への浸食率が一定値を超えると、侵攻されている場所は業魔の世界へと塗り替えられる。
そう――ありとあらゆるもの全てが。
文化も生態系も、ひどい場所では物理法則すらも。
そうなればその領域を奪還するのは至難の業だ。
奴等の世界へ逆侵攻するには人類サイドは戦力に余裕がない。
だからこそ――未然にコアを叩く。
ダンジョンを構成するコアを砕く事イコール、ダンジョンの崩壊であり浸食率の大幅な下降に繋がる。
更に一度根差した地への足掛かりが消えた場合、再侵攻は叶わない。
人類の趨勢を賭けた陣地取りゲーム。
それこそがこの探索業の本質だ。
左腰に差した刀が重く感じる。
無意識にプレッシャーが掛かっているようだ。
くそ――ここで気後れしてたまるか。
気合を入れ直すと警戒しながら洞穴の様な入口へ向かう。
ゲート守備隊である自衛隊員がソロの俺を見て咎める様な視線を送ってきたが……知るものか。
俺は憤然とした気持ちを抑えることなくゲートを潜り抜けた。
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