第96話 埋葬インヴォーク


「吾桑……マフユよ。

 成り行きとはいえパーティを組んであげるわ。

 光栄に思いなさい」


 先程まで見受けられた弱々しい感じはどこへいったのだろう? 

 傲岸不遜に胸を張り、フンっと皆に自己紹介をするマフユ。

 これが彼女なりの虚勢という事はメンバー全員重々理解している。


「勿論、OKだよ。

 ボクは咲夜コノハ。よろしくね、マフユちゃん。

 ぶしつけだけど抱き着いてもいい?」

「倉敷ミズキだ。私も宜しく頼む。

 しかし君は可愛いな……愛でても構わないか?」

「関城タダオっす。

 アニキ、もとい師匠に弟子入り中っす。

 いや~同じ勇者としてマフユちゃんの事は知ってたけど……間近で見るとマヂ可愛いいっすね。

 迷宮主を斃すまでとはいえ、仲良くしてほしいっすよ!」

「な、何よアンタたち……

 ふん、いいわよ。

 袖すり合うも多生の縁……仲良くしてやってもいいわ。

 って、どこ触ってるのよ!

 あっほら、駄目だってば!」 


 なので、あえて親し気に近寄り挨拶を交わし始める。

 ツンデレ気質なのかマフユも口ほどは嫌がってはいない。

 どうにか溶け込めそうだ。

 俺は内心安堵の溜息をもらす。

 彼女のパーティ加入に関して、相談もせず勝手に話を進めてしまい申し訳ないとは思う。

 ただあのまま放っておくのは俺には出来なかった。

 仲間を喪った哀しみは誰よりも理解しているつもりだ。

 絶望に打ちひしがれた者は男女問わず見過ごせない。

 我儘かもしれないが、これが俺の流儀だ。

 譲るつもりはない。

 だがまず結界が切れる前にやらなければならないことがある。


「盛り上がってるところ悪いが、一ついいか?

 先に彼らを弔ってやりたいんだが……手伝ってくれるか?」


 現実逃避ではないが戯れるメンバーたちに優しく声を掛ける。

 遺体といってもほとんど炭化しており残された断片は僅かだ。

 回収用の手袋をつけると俺は取り出した麻袋へ優しく掻き仕舞う。

 他の者たちも同様だ。

 沈痛な面差しで俺に倣い弔いを始める。

 至極ドライな様だが、俺達探索者は死に関して淡白だ。

 一般に比べ死が近いという環境も影響しているのだろう。

 しかし仲間である探索者の亡骸へは誠意を以て対応をする。

 志半ばで斃れたとはいえ、彼等は立派に戦ってきた。

 特に勇者であるマフユを支えこの最下層まで戦い抜いたのだ。

 同じ探索者として敬意を抱かずにはいられない。

 破損しながらこればかりは残された探索証を手に取り一礼をする。

 貴方達の想いは無駄ではない。

 俺達が受け継ぎ、必ず仇を取る。

 突き立てられた武具による墓標。

 俺達は深々と敬礼すると、別れの言葉を心の中で告げるのだった。



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