第81話 純粋フェミニスト
「スライム魔法はアレっすよ。
念〇力でいうとこの具現化系。
オレ自身の魔力をぬるぬるに具現化できるっす」
俺の疑問に爽やかに応じる関城。
じゃあ何か?
お前、スライム以外で嗅いだり触ったり遊んだりしてこなかったのか?
可哀想に……日常がスライムになるほどスライム浸けだったね、
とか憐れまれたりしたのか?
色々突っ込みたい気持ちは多々湧き上がる(例え方とか)。
だが、まずはどういった性能なのか実際に確かめることが必要だ。
コノハの時でお馴染みとなった仮想魔法室に入る。
そして検証と実証。
結果、判明。
スライム魔法は関城が思ってる以上、あるいは俺の想定以上の代物だった。
本人は、パーティメンバーや行政からも全然期待されていないと言っていたが……とんでもない。
これは使い方次第で大化けする。
さっそくダンジョンで試してみるとしよう。
とはいえ……タガジョウダンジョンに来たばかりで装備の受領やら何やらで実際のアタックには少し時間が掛かる。
30分後に転移ゲート前集合で関城とは一旦別れることにした。
「じゃあ、師匠。
また後程よろしくお願いするっす」
「ああ、後でな」
礼儀正しく一礼するやいなや、朝早い為か暇そうにしている受付のおねーさんの下へ話し掛け(口説き?)に向かう関城。
受付嬢も手慣れたものだ。
手間のかかる悪ガキを相手するように苦笑しながら応対している。
通り掛かる周囲の者達も気軽に関城に声かけや突っ込みを入れていく。
当初の最悪な印象とは裏腹に、ここであいつは人気者のようだ。
まあ確かにああいう裏表のない奴は見てて気持ちいいものだ。
本能に忠実でストレート過ぎなのは人としてどうか、と思うが。
「凄い人だったね、関城さん」
「まったくだな……」
「どうだ、ふたりとも。
三日間だけとはいえ、やっていけそうか?
成り行きで同行を決めてしまって今更だが」
「大丈夫、かな?」
「――うん。
関城なら私も構わない」
「へえ。
昔から男女関係なく付き合いのあるコノハはともかく、女子高出身で堅物なミズキもすんなり了承したのは意外だな。
理由を聞いてもいいか?」
「至極簡単な事だ。
普通、男が私を見る時――身体を撫でまわすように見てくることが多い」
「ミズキちゃんプロポーションいいもんね。
核兵器クラスが二つ。
それに比べてボクは火縄銃……(はあ)」
「お、落ち込まないでくれコノハ。
その分お前は――可愛いじゃないか」
「えへへ。
そうかな~?」
「そうだ。私が保証する。
え~っと、話を戻すぞ?
さっき言った通り――普通の男ならそういういやらしい視線を感じる。
だがな、あいつはストレートなんだ」
「ストレート?」
「――そう。
私の身体じゃなく私自身に向かい、好意をぶつけてくる。
今回はコノハがメインだったが私自身にもすさまじいくらいの好意だ。
お目付け役の子がフェミニストって言ってたろ?
多分――あれは本当だな。
ショウは男だから分からないかもしれないが……
何があっても絶対女性を裏切らないというオーラがバンバン出てた。
女気の少ない私でもそういう気持ちは嬉しいものだ。
まあ、そういう理由もあって関城が一緒なのは悪い気しない」
「ふ~ん。
ただのスケベ野郎ではないと思ったがそういう一面もあったのか」
「あれ~ショウちゃん?
もしかして妬いてる?」
「アホ、誰が妬くか。
俺の見る目が無かった訳じゃないと確証出来ただけだ。
――と、着いたぞ。準備はいいか?」
「うん。
ボクは全然OK]
「私もだ。
しかしドキドキするな」
「肩の力を抜け、ミズキ。
もっと強くなるんだろう?」
「ああ、勿論」
「ならばこれは必要な通過儀礼だ。
大丈夫、怖いのは最初だけだ」
「ショウちゃん……なんかエロい」
「やかましい。
ほら、行くぞ」
寺院とは名ばかりの簡素な礼拝堂内部に入った俺達。
扉に施錠したのを確認後、据えられた女神像に触れ祈りを捧げる。
次の瞬間――
俺達は荘厳な雰囲気で満たされた煌びやかな寺院へと転移する。
正確には身体でなく精神のみが。
そこは俺達の深層心理を下に描かれた仮想現実の世界。
ならば待ち受けるのは勿論――
「お待ちしてましたよ、狭間君。
それに皆様も」
神々しい美貌を持った麗人。
寺院の管理者を務める亜神アリシアその人だった。
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