番外編 京都試練場異聞録⑧
>第五階層
「九綾流星刃(ナインエッジ)・四の型、斧状形態(アックスモード)<橙夏>!」
「メ〇ンテ~」
ゴンゴン
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「ばあああああああああああああ!!」
>第六階層
「九綾流星刃(ナインエッジ)・五の型、弓状形態(ボウモード)<碧海>!」
「メ〇ンテ~」
シュシュ
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「ひあああああああああああああ!!」
>第七階層
「九綾流星刃(ナインエッジ)・六の型、爪状形態(クロウモード)<黄塵>!」
「メ〇ンテ~」
ズスズス
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「ぶあああああああああああああ!!」
>第八階層
「九綾流星刃(ナインエッジ)・七の型、根状形態(ロットモード)<伽藍>!」
「メ〇ンテ~」
ビシビシ
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「へあああああああああああああ!!」
>第九階層
「九綾流星刃(ナインエッジ)・八の型、槍斧形態(ランスモード)<白闇>!」
「メ〇ンテ~」
ドスドス
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
「ほあああああああああああああ!!」
>第十階層(最深層)
「ぬははははははははははははは!
よくぞ来た、人の子よ。
そして我らが業魔の血筋に連なるものよ。
我はこのスザクダンジョンを司るダンジョンマスター。
お前達の絶望を糧とし我が主へ――」
「絶賛前口上の中、大変申し訳ないのだけど……
ミドリ、いつものお願いね」
「――了解。
いきなりメ〇ンテ!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
悦に入るダンジョンマスターを遮る様に発動するミドリの自爆呪文。
各階層をくぐり抜けてきた必殺の呪文。
なんだか階層を追うごとに威力を増している気がする。
ただ――威力に比例して爆煙も増してるのが難点だ。
盛大に立ち上った白煙が邪魔をして、良く見えない。
「やったかな、アヤカちゃん!?」
「ミドリ……」
「な~に?」
「貴女、どうしてそうフラグを立てるの?
ダメージを与えた敵に「やったか」は、失敗フラグでしょ?
あっ、ほら立ち上がってきたし」
「ごめ~~~~ん」
「まあいいわ。
打ち合わせ通りいきましょ」
「うん!」
白煙が晴れた先――
そこには全身ズタボロになりながらも立ち上がるダンジョンマスターがいた。
さすが階層主兼迷宮主。
今までどんな敵もほぼ一撃だった自爆呪文に耐えれるなんて。
耐久性だけじゃなく様々な能力値も高いのだろう。
でも――効いているのは間違いない。
「ぬううううううううううううう!!
小癪なり、人の子よ。
だが我がこれしきの事で斃れるとは思うま――」
「――アヤカちゃん!」
「任せて、ミドリ。
舞刃姫固有特技【再行動】発動。
技後硬直に陥った魔法及び特技の連続発動を可能とする。
はい――もう一度いけるわ」
「うん!」
「なにいいいいいいいいいいいいいいい!?
まさか――貴様ら!
ず、ずるいぞそれはあああああああああ!!」
「もういっかい――メ〇ンテ!!」
「ぬわああああああああああああああああああ!!」
チュドドドドドドドドドド~~~~~~ンン!!
再び炸裂する自爆呪文。
驚いたことにこれだけしても奴はまだ生きていた。
全身から魔力を放出している以上、致命傷なのは間違いないけど。
「はっ……はああああああああああ!!
た、耐えたぞ……
お前達の様な脆弱な存在にやられる我では――」
「その割には瀕死そうだけど?」
「う、うるさいぞ小娘!
これも時間経過で回復するはず――」
「――ごめんなさい。
そんな悠長な時間はあげれない。
窮鼠猫を噛まない様、ここで終わりにさせてもらうわ。
九綾流星刃(ナインエッジ)・終の型……
全形態発動(オールウェポンズ)<黒昏>!」
相手は業魔、しかも迷宮主……油断はしない。
全部の形態を同時に発動させ叩き込む九綾流星刃の最終奥義。
まさに流星のごとくダンジョンマスターに突き刺さる数多の波状攻撃。
それは確実に奴の身体を、そして心を打ち砕いた。
「ば、馬鹿な……
我がこんな者達に敗れるなんて……」
ありきたりな悪役セリフを吐きながら――
ダンジョンマスターと内包されていたコアは砕け散った。
瞬間、ダンジョン中を揺るがす大地震。
レイカねーさんの話通りなら、コアを喪ったダンジョンはこのまま緩やかに崩壊に向かっていくのだそうだ。
「さっ――帰りましょう、ミドリ。
これでこのコアの欠片を持ち帰れば――
私達念願の、自堕落な引き篭もり生活ゲットよ」
「……アヤカちゃん」
「どうしたの、そんな深刻な顔をして」
「本当に――ありがとう。
ボク、ダンジョンを攻略したんだよね?
夢なんかじゃないよね?」
「ええ、間違いなく貴女の力でダンジョンマスターは斃れたわ。
私はその手伝いをしただけよ」
「そっか……ボクはちゃんと勇者の役目を果たせたんだ」
「そうね。
しかもこの上ない最高の結果で、ね」
「ねえ、アヤカちゃん」
「ん?」
「勇者ってさ、特別なダンジョン討伐報酬が超越者(オーバーロード)から贈られるんだけど……
その内容がなんだか知ってる?」
「? 知らないわ」
「報酬はね……願い事が叶うんだって。
因果律に無理のない範疇なら、どんなことも」
「それは……凄いわね。
お手軽ド〇ゴンボールって感じかしら」
「うん」
「ミドリはなにを望むの?
さらなる力? それとも美貌や名誉や彼氏?」
「ううん。
ボクはね――この勇者の力の譲渡」
「――え?」
「これだけレベルが上がればこれから先も苦労はしないし……
結局これだけ使ってもボクじゃこの力を使いこなせなかった。
だったらもっと有意義に使ってくれる人がいい。
だからボクの勇者としての力(自爆魔法)、これを誰かに譲りたい。
ボクと同じで、自分の無力さに悩んでいるどこかの誰かに」
「……貴女らしいわね。
いいんじゃないの、それ。
どんなバグだか仕様だかは知らないけど……確かに死なない勇者と必殺自爆呪文の組み合わせは最凶だしね」
「賛成してくれるんだ」
「勿論よ。
規格外勇者である貴女が政治的利用されない内に、さっさと一緒にスローライフに移行しましょう」
「そうだね……うん、ありがと」
「じゃまずは地上に戻ろうか。
これから報告やら何やらで面倒よ、私達」
「ふふ……これからもよろしくね、アヤカちゃん」
「ど~んと任せなさい。
万全な引き篭もり生活の為なら……私は無敵よ?」
おどけた私の返事に嬉し涙を浮かべ感謝するミドリ。
そんな彼女に私は極上の笑顔で応じるのだった。
(そんなアヤカちゃんだから――言えない)
(だからこの気持ちには固く蓋をして隠していこう)
(でも……だからこそ――
ボクの力が受け継がれる人は自分の心に素直になって結ばれてほしいな)
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