番外編 京都試練場異聞録④
『名前 鈿女ミドリ
職業 勇者(特技特化型)
LV 3
HP 6
MP 3
筋力 1
速力 3
体力 1
賢明 2
幸運 3 』
ステータス用紙に書かれていたミドリの能力値。
そのあまりの低さに――私は驚いた。
普通、勇者は高ステータスで無双する職業なのに……
なんの間違いか、彼女のステータスはかなり低い。
レベルが3まで上がっているのに、能力値の上昇がなかった様なのだ。
ものによっては最低値である1しかないものもある。
これじゃあ職業を授かる前の一般の人とそう変わらない。
だから、か――
私はその瞬間、おおよその事を理解した。
勇者は通常行政側であるダンジョン省に手厚く保護される。
一部のエリート探索者を除き、勇者の数こそがその地域の業魔侵攻に対する趨勢を決めるといっても過言ではないから当然だ。
それ故に探索初期の勇者に対しはパワーレベリングをしたりもする。
無理やりパーティを結成し強引にレベルを上げる手法。
ミドリのレベルが3なのもおそらくそうだと思う。
ただ……ミドリはそこで『切られた』のだ。
このまま保護対象にしてもリターンが少ない。
ダンジョンマスターを斃せるほどの成長を遂げるのは難しい、と。
それはある意味仕方のない事かもしれない。
他の都道府県はいざ知らず、京の都は人材が豊富だ。
羨望の的である勇者すら30を軽く超える。
となれば有限であるリソースを彼女に注ぐより、他の勇者に回した方が得策なのだろうから。
勝手に期待して煽て上げ――
勝手に失望して放置する――
私の時とまったく変わっていない。
突如行き場を失った彼女は幼馴染である私に助けを求めてきたのだろう。
縋るもの、頼るものが少しでも欲しくて。
そう考えれば先程からミドリが情緒不安定なのも理解できる。
「ミドリ……これって」
「やっぱり――ダメかな?
ボクじゃ役に立たないかな?
ごめん――ごめんね。
せっかく勇者に選ばれたのに――こんな情けなくて」
責められると思ったのか、卑屈に謝るミドリ。
きっと周囲からも散々言われてきたのだろう。
役立たず、この恥知らず。
過去に私が言われたセリフが脳内をリフレインする。
この娘は私だ。
過去の私と一緒なんだ。
いたたまれなくなった私はミドリの手を取る。
こんな反応は予想外だったのか、驚くミドリ。
「あ、アヤカちゃん?」
「――大丈夫よ、ミドリ。
私は貴女を見捨てたりしないわ」
「だってこんなステータスじゃアヤカちゃんの足手纏いに……」
「それに関しても大丈夫。
ステータスの数値だけが探索者の優位性じゃないもの」
「――え?」
「特技によってはレベルアップ後、すぐに発現しないものもあるの。
多分――貴女の場合がそれね。
だから行政側も見過ごしてたんだわ」
「ど、どういうこと……?」
「心配はいらない、っていうことよ」
不安そうに瞳を揺らすミドリを安心させる為、ウインクをする。
ステータスの書かれた能力値の下、そこにはこう書かれていた。
『特技 自爆魔法L1 メ〇ンテ 自己犠牲呪文
生命力を攻撃力に転換し、敵全体に大ダメージ。術者は死ぬ』
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