第32話 思考ステイシス

 

 読んでいる内容に理解が追い付かない。

 見慣れない特技の数々。

 ネット検索でも似たものは見受けられなかった。

 さすがは唯一職のスキル……

 と褒めたいところだが、実際使えなくては意味がない。

 遊び人の【遊び】に比べればかなり有能そうだが……

 これらはいったいどういった特技なのだろうか?

 記載通りに読み取ってみるとするか。

 まずパラメータジャグラーだが……

 これは文字通りステータスにパラメータ分を付与できるのだろう。

 いつでも自由自在にL×10Pもの数値を付け加える事が可能……且つ変動出来るなら、その時の戦況に応じたステータスで戦闘に臨めるという、まさにチートに相応しい特技だ。

 数値が10も違えばまさに世界が違う。

 特技の上限であるL5まで鍛え上げれば50Pもの付与が可能だ。

 これは戦闘において圧倒的なアドバンテージを得る。

 しかし問題は――どうやって行う?

 先程から身振り手振りで発動をさせようと試してみるが……発動しない。

 なので色々と試行錯誤してみる事にする。

 頭で念じる・・失敗。

 口に出す・・失敗。

 紙に書いてみる・・失敗。

 頭に浮かぶパターン、そのことごとくが全て失敗に終わった。

 何だ、これ。

 どうすればいいんだ?


「な、何をしてるの……ショウちゃん?」


 恐る恐るといった感じで問い掛けてくるコノハ。

 しまった――衝撃の内容にすっかりコノハの存在を忘れていた。

 一人ぶつぶつと呟きながら怪しい動きをする俺。

 それは傍からみれば変質者以外の何者でもない。

 俺はまず誤解があったと弁解を行う。

 その後コノハにもクラスチェンジ後のステータス用紙を見せ、特技の発動条件は何かを施行中である旨を説明する。


「おめでとうショウちゃん♪

 唯一職なんて、ボク聞いたこともないよ。

 かなりのチートっぽい性能をしていると思うけど」

「――ああ。

 ありがとうな、コノハ。

 思ったよりステータスの低下もなかったしな。

 全部お前のお陰だ。

 マジで――感謝してる」

「――ううん。

 それはショウちゃんが諦めなかった結果だよ。

 だからさ、胸を張らなきゃ――ね?」

「まったくお前って奴は……。

 ああ、そうだな。

 あいつらに顔向け出来るよう胸を張らなきゃな」

「その意気その意気☆」

「まあクラスチェンジにより邪魔な【遊び】スキルも消えたし、これでやっと前衛に復帰できるんだが……この特技がなー」

「発動しないの?」

「う~ん……どっちもな。

 まずはパラメータジャグラーなんだが……

 発動条件がどうにも分からん。

 さっきから試しているんだけどさ」

「やっぱ……あれじゃないの?」

「――あれ?」

「ほら、異世界ものお約束のヤツ。

 転生者なり転移者なりで条件は違うけど……

 大概は一緒。

 皆、必ずやるでしょう?」

「ああん?

 それってまさか――【ステータスオープン】か?

 そんなん叫んで発動する訳が……」


 その瞬間、目の前に浮かび上がるステータス窓。

 ホログラムの様に宙に描かれたそれはまさしく俺の能力であるステータスだ。

 おい、マジかよ。

 今までどんな職業にも誰にも出せなかったというのに。

 驚愕の展開に、俺は再度思考停止するのだった。

 

 


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