第27話 相談ヴァリデーション
「何だよ、これ。
マジでありえないだろ……」
クラスチェンジをする為、寺院へと歩きながら俺は愚痴た。
想定外の内容に混乱呪文をくらった様な状態な俺の後を、???でいっぱいな顔をしたコノハがアヒルの子よろしくついてくる。
何が問題なのか分からないという感じだ。
コノハの特技である自爆魔法は、本来僧侶系に属する魔法の一系統であり――俗にメガ系と呼ばれる。
自己犠牲自爆呪文(メ〇ンテ)に始まり自己犠牲復活呪文(メ〇ザル)、奥義である全MP攻撃転換呪文(マ〇ンテ)等が有名だろう。
この系統の特徴は何と言っても使いでの悪さ。
威力に反比例するようにデメリットが凄まじい。
ボス戦などの決戦なら余力を使い切ってもいい。
しかしダンジョン内は連戦が基本だ。
一戦闘にパーティメンバーが命を懸けている様では、まともな支援状況を作り出す事が適わない。
だからこそ習得しても使われることはそうそうない。
だが――コノハ別だ。
勇者は死なない。
死ぬような目にあっても因果律すら歪め復活する。
伊達に超越者の恩寵は受けてないって事だろう。
自爆呪文をコノハが使ってもデメリットは無いに等しい。
そんなコノハだからこそメ〇ンテは必殺の呪文足り得るのだ。
「しかし、だ……」
俺は再度ステータス用紙に目を落とす。
そこに掛かれている自爆魔法L2の欄を注視する。
メ〇ルーラ 街犠牲呪文
行った事のある街を犠牲にダンジョンに大ダメージ 街は死ぬ
「どういうことだよ、これ……」
何だよ、街犠牲って。
何だよ、ダンジョンにダメージって。
古今東西こんな特技は聞いたことがない。
間違いなくコノハだけの唯一無二(ユニーク)スキルだ。
基本新しい特技(魔法含む)は行政に届け出る義務が探索者には課せられる。
でも――厄介ごとに巻き込まれぬ様、秘匿する者が実はかなり多い。
今回のこれもどうしたものか。
「ショウちゃん、さっきからどうしたの?
ボクの身体(ステータス)、どこか変だった?」
揺れた瞳で俺を見上げながら尋ねてくるコノハ。
いかん、仲間を不安がらせてどうする。
ちゃんと説明しないとな。
俺は歩きながら上記を説明、前例がない旨を話してやる。
「そうなんだ……
じゃあ使ったらどうなるかも分からない?」
「文面通りダンジョンにダメージがいくんだろうな。
もしかしたらコアを砕かずにダンジョンを潰せるかもしれない」
「それって、すごいじゃない!
それなら早速使って――」
「あほう」
「いたっ!
だからショウちゃん、デコピンは酷いよぉ」
「お前が悪いからだ。
よく見ろ、特技の一覧を」
「あっ……街犠牲呪文。
行った事のある街を犠牲って……どういうこと?」
「分からん。
俺こそ聞きたい。
簡単に検証する訳にもいかないだろうしな」
「だよねー。
う~ん……どうしよう」
「まあ基本黙っておけ。
何か不都合があったらその時は開き直ろう」
「あ、悪党だね、ショウちゃんは」
「ふっ……狡猾と呼べ。
さて、着いたぞ。ここが【寺院】だ」
俺の前には寺院とは名ばかりの簡素な礼拝堂があった。
中には人種の定かでない女神像が据えられているだけで椅子も装飾も何もない本当に簡単な造りだ。
「ここ……何もないけど、本当にそうなの?」
「ああ、コノハは初めてだもんな。
ここには凄い仕掛けがあってな……驚くなよ?」
共に寺院に入り、扉に施錠したのを確認。
コノハに声を掛けた後、女神像に触れ祈りを捧げる。
次の瞬間――
俺達は荘厳な雰囲気で満たされた煌びやかな寺院へと転移していたのだった。
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