第25話 殲滅デストロイ


「これは……凄まじいな」


 呟き、眼下を見下ろす。

 コノハの自爆呪文がもたらした結果に俺は驚愕していた。

 あれほど蠢いていた業魔の群れ。

 それらが全て――消し飛んでいた。

 呪文一発で、文字通り壊滅である。

 想定を超える効果に驚きしかない。

 最初にコノハの特技とステータスを確認した時――驚きと共に浮かんだのは、このモンスターハウスだ。

 業魔が密集したこの空間で自爆呪文を炸裂させたらどうなるか?

 魔法の仕様にもよるが一網打尽に出来るのではないか、と。

 その期待は良い意味で裏切られた。

 逃げ場のない圧縮された爆発。

 威力の程は盛大に立ち上ったキノコ雲を見るまでもなく明らかだ。

 魔法使い系の最上位範囲呪文ですらここまでの殲滅力はない。

 禁断の秘儀といわれる自爆呪文。

 そのあまりの力に戦慄すら覚える。

 これなら深層部の敵にすら通用するんじゃないか?

 もっと有用に活用する為には……

 ――っと、呆けている場合じゃない!

 コノハの安全を確認しないと。


「コノハ!」


 結果は分かっているとはいえ、俺は爆心地に向かい声を掛ける。

 広大な空間を覆っていた爆煙が風に乗り吹き飛ばされていく。

 その中心で――


「ショウちゃ~ん♪

 凄いよーレベルアップが止まらな~い☆」


 今の俺同様――

 連続レベルアップの光に包まれたコノハが元気に手を振っていた。


「ふう……ひとまず無事、か」


 シミュレーション通り、無傷なコノハ。

 変わらないその笑顔に心から安堵する。

 何はともあれ――こうして初の自爆呪文戦闘は何事もなく無事終了した。

 殲滅し尽くした業魔たちだが、残念なことに明日になれば全てリポップしてしまうだろう。

 しかし――それは逆に考えれば幾度でも同様の事が可能。

 またここでレベルアップを図れる訳だ。

 おそらく発光した回数でカウントすると、俺が6レベル。

 コノハに至っては9レベルも急上昇した計測になる。

 レベルアップに必要な経験値が最も多い勇者なのに――僅か半月で一気に到達者の仲間入りだ。

 自爆呪文のチート仕様に呆れるしかない。

 そして俺も転職に必要な20レベルの条件を満たした。

 訓練所に設けられた【寺院】に行けば今日にでも転職は可能だ。

 賢者になるか? それとも……

 コノハのお陰で急に開けた未来。

 持参した昇降用のロープを設置しながら、自分の行く末を考えていた。





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