第18話 判明コンフュージョン


 自己犠牲自爆呪文。

 それは――僧侶系に属する、最大にして最終の殲滅魔法である。

 ほとんど魔力を消費しないが、己の生命エネルギーを爆発力に変えて、術者を中心に防御耐性を無視する大爆発を巻き起こす。

 その威力は凄まじく、勇者系の降雷呪文を除いてはほぼ最強といってもいい。

 無論――威力に伴うデメリットも凄まじい。

 自己犠牲の名の通り、使用したらまず間違いなく死ぬ。

 僧侶以外が使えば蘇生はできず、バラバラに砕け散り欠片さえ残らない。

 徳(賢明・幸運値)の高い僧侶なら万が一の蘇生は期待できるが……

 それだって復活呪文(ザ〇リク)がなければ死んでしまう。

 比類ないくらい高威力だが――

 生半可な覚悟では使用できない禁断の呪文。

 それが自己犠牲自爆呪文だ。


「――っていうのに……

 何故、勇者のお前が覚える!?」

「えっえっえっ?」

「普通勇者なら火炎(〇ラ)とか治癒(ホ〇ミ)とか浄化(ニ〇ラム)だろ!

 何で勇者が僧侶の最終殲滅魔法を覚えるんだよ!」

「ボ、ボクだって分からないよー!?」


 俺の気迫に押されたのか、壁際に後退し困惑するコノハ。

 勢いに任せて迫ったせいか、コノハの顔脇に両手をついてる俺。

 腕の中で怯える様に震えているシチュエーション。

 ――いかん、これはアレか?

 少女漫画御用達――壁ダァンってやつだ。

 慌ててブースから顔を出し外へ視線を向ければ、こちらを指差しひそひそ話し合う女性探索者達の姿が見えた。気の早い事にスマホを片手に通報しようかどうか迷ってるっぽい奴も見受けられる。

 ……まずい。

 このままでは終わる。

 色々な意味で――社会的にも終わる。

 俺は深呼吸すると話を切り替える事にした。


「……すまない。

 衝撃的過ぎて少し取り乱したようだ」

「ううん――

 普段ノリ突っ込みをしないショウちゃんがそんなになるまで驚く程の事なんだね、これって」

「ああ、間違いない。

 これが事実ならまさに革命的だしな。

 っていうか……ホントに使えるのか、それ?」

「うーん……これ見る限りは問題なさそうだけどね。

 直感的にはイケると思うよ?」

「そうか?

 なら――まずは試してみるか」

「え? ダンジョンで?」

「いきなり本番する奴がいるか!

 それでお前が砕け散ったらトラウマになるわ!

 来い、こっちだ」

「あう~」


 ブースから出た俺達は装備準備室とは真逆にある部屋へ向かう。

 その名は仮想魔法室。

 名前の通り、術者の実力に比例した魔法を、実際にシミュレーション出来る部屋である。詳しい構造は良く知らないが、この中は高密度な霧状の魔力(マナ)で満たされているらしい。

 MP切れや怪我を負う事はないも、この中で起きたことは現実でも実際に起きる事である。

 一般的に【職業(クラス)】を得るまで日常的に魔法を使う人はいない。

 だからまずはここで自分の持つ魔法がどういう効果をもたらすのか、しっかり把握する必要があるのだ。

 幸い今の時間はダンジョンにトライするべく探索者が出払っている。

 俺は探索者証をルームキーに通し開錠するとコノハと共に中に入る。

 上記を改めてコノハに説明。

 オプションで扱う事が出来る、業魔達の幻像(耐久性は実際の業魔と一緒~レベルによっては動き回る)を展開後、コノハに呪文を使ってもらった。

 そして――もたらされたその結果に愕然とした。

 


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