第28話 滅びた原因その2

 俺は廃墟となった街の後を一通り眺めると、ルイーダを睨みつける。滅んだ原因はルイーダが負の魂を解放し、モンスターを創り上げたと思ったからだ。あの街の兵士では、とうてい凶悪なモンスターには対応できないだろう。どの世界でも大抵雑魚扱いのゴブリンでも全滅させられたに違いない。


「ルイーダお前は何をした?」


「えっ、私ですか。何もしてませんけど」


 ルイーダは、突然俺に詰め寄られて、ビックリしている。本当に知らないのかもしれないが、こいつは無意識で世界を作り変えられる奴だ。言葉をそのまま鵜呑みにすることはできない。


「ユニ。なんでこの街は滅んだんだ?」


 俺は傍らに立っているユニの方に聞く。


「伝染病ですね。それとこの街は滅びましたが、村レベルで人間は残っているようです」


「伝染病?それだけか?」


 それならば、未発達な文明レベルでは、度々起こることは分かる。だが、それでも生き延びたものが集まりまた都市が出来たはずだ。


「それだけですが、対応の仕方が余りよろしくなかったと思われます」


「一体どんな対応をしたんだ?」


 伝染病の一番の対応は隔離である。善人ぞろいの人間たちは非情な決断が出来なかったのだろうか。だが、飢饉を乗り越えるだけの非情さはあったはずだ。


「指導者の子供が率先して看病にあたったのです。それで指導者も病にかかり一族が全滅しました。指導者がいないため、対策もままならず、そのまま滅んでしまったようです」


「これは、何回か繰り返したら、また発展すると思うか?」


 伝染病で滅んだ文明も数多い。だが人類は、そこから立て直し別の文明を築いてきた。まだ人間は残っているようだ、ここから立て直しが効くのなら、この世界は成功といえる。


「いささか難しいかもしれません。宗教?というか生活習慣に、余り人間が集まりすぎない事が取り入れられてます。おそらく遊牧の民と村が点在する世界になるでしょう」


 人間が生き残っているから、一応成功とはいえるのか?俺はこんな世界で暮らすのは嫌だけどな。


「だそうだ、ルイーダとしてはどうなんだ?」


「んー。そうですね。やっぱり駄目だと思います。せっかく変化を取り入れたのに、これから先、発展が望めないのでしたら、意味がありませんから。それに、あの街で食べた料理よりもっと美味しいもの、というのも食べたいですし」


 あまり深く考えてなさそうな感じでルイーダは答える。これで、今の人間たちはまた消えることが確定した。余りにも簡単に決まるので、消える人間たちに憐れみを覚えてしまう。


「ヴィル様は今回、何が足りなかったと思うのですか?」


 ルイーダに聞かれて、俺は少し考える。善人過ぎたというのはあるだろうが、もっと根本的なものが足りなかったような気もする。


「ガッツかな。若しくは貪欲さか。物に対してもだが、生に対する執着が無ければ、やはり厳しいんじゃないだろうか」


 野生動物だろうとなんだろうと、生に関する執着は貪欲だ。寧ろ野生動物の方が貪欲かもしれない。それから進化した人類も、基本的には生には貪欲だった。命より大事なものがあるなんて、ある程度文明が発達してから、言われるようになったことだ。


「貪欲さも、負の感情です。ルイーダ様に魂の拘束を更に緩めていただかなければなりません」


 ユニの言葉に、ルイーダは少し嫌な顔をする。しかし、直ぐに諦めて頷く。


「ああ、それとやり直すなら、俺から注文がある」


「なんでしょう」


「時間を進めるのは構わないが、必ず千年単位に進むんじゃなくて、滅びそうになったら、そこで一旦作った世界を見せてくれ」


 学者じゃあるまいし、崩壊した後の世界で色々と推測するのも飽きてきた。考古学は嫌いじゃないが、それにのめり込むほど好きなわけじゃない。


「それは構いませんが、それで手助けをして滅亡を防いだとしても、成功とは言えないのではないでしょうか。何度も手助けが必要になりますし、それを元に全世界が生まれたとしたら、何時もどこかで滅亡する世界が出て、安定しないと思いますけれど……」


「どうするかはその時の状況によるが、推測じゃなく、生身で感じたいんだ。多分その方が確実だ」


「主様がそうおっしゃるのであれば私は構いません。それでは」


 またユニが一瞬集中すると。最初と同じ村の外れに立っていた。人々の様子は前回とあまり変わりは無い様だ。


「では千年先に行きますね」


 まるで3分クッキングだな、と感じてしまう。何だか頭の中にリズミカルな曲が流れる気がする。


 千年後の世界に行くと、かなり立派な城壁を備えた大きな都市が、そこにはできていた。

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