第30話 過去
「――― というわけでだ、次はオーブを探しに行くぞ。」
勇者御一行との食事後、サマンオサ城内でボスから今後の方針が告げられる。
「……ボス。これからのことだけど、私からも報告したいことが……」
「ああ、父親のサイモンのことだろ。実はな、今回のオーブとサイモンの件は繋がってる可能性があるみてぇだ。」
「な、何それ!?どういうこと!?」
ヴィクターさんが驚いているけど無理もない。
「エルスによると、ネクロゴンドに向かうには、ガイアの剣が必要になるらしい。」
「ガイアの剣!?それってまさか!」
「ああ、おそらくサイモンが持ってたヤツだ。」
「どこにあるの!?」
「オリビアの岬というところを抜けた先の祠にあるらしい。そこにサイモンもいるかもしれん。」
「じゃ、じゃあすぐにでも!」
「落ち着けヴィクター。そこに向かうための段取りが必要だ。エルス、説明してやれ。」
というわけで、オーブを入手するまでの手順は、以下の通りだ。
①北の島にいるじいさんに変化の杖との交換で「船乗りの骨」をもらう。
②それを使ってロマリア周辺の海を徘徊している幽霊船を見つけ出し、そこで「愛の思い出」というアイテムをゲットする。
③オリビアの岬でそのアイテムを使うとオリビアの魂が成仏し、岬の先に行けるようになる。
④岬を抜けた先にある祠で「ガイアの剣」を入手する。
⑤ネクロゴンドの火山口にガイアの剣を投げ込むと、マグマが吹き出て新たに進む道ができる。
⑥その道を通った先にあるネクロゴンドの洞窟を突破する。
⑦突破した先にある祠でオーブを入手する。
……わらしべ長者だな、こうしてみると。
「明日、オレ様が船乗りの骨とやらを貰ってくる。その後からは全員で行くぞ。」
「船がないと先に進めないんですが、船はどうするおつもりですか。」
「ポルトガに船を出させるつもりだ。胡椒の報酬としてな。」
なるほど、その手があったのか。
……ひょっとして、ボスはこうなることまで見越していたのだろうか。
流石にそれはないと思いたいけど……ボスだからなぁ。
「明日にでもボルトガに向かう。各自、出立の準備をしておけ。」
「ありがとう、ボス。」
ヴィクターさんがボスにお礼を言っている。
やはりボスが一緒に来てくれるだけで安心感も桁違いだ。おそらくヴィクターさんもそう思っているのだろう。
ヴィクターさんとの2人旅ってのも心惹かれるものがあったけど、正直に言えば自分も不安だったからボスの提案は有り難かった。
……こういったところも見抜いてそうだなぁ、ボスは。
「……ところでボス。勇者の面倒を見ている理由について、そろそろ教えて貰えませんか。」
以前約束していたことを聞いてみる。
「……はぁ、よくもまぁどうでもいいこと覚えてんな、テメェは。」
ボスは半ば呆れながらも答えてくれた。
「まぁ大したことじゃねぇよ。もう10年くらい前の話になるんだが、オレ様とオルテガとサイモンの3人で旅をしていたことがあってな。その腐れ縁が繋がってるだけだ。」
いやいや、大したことあるだろ、それ。
「ボスだけじゃなく父も仲間だったのね。父からはそのような話は聞いたことがなかったけど。」
「3人でパーティを組んでいたことは表沙汰にしちゃいねぇんだ。サイモンはサマンオサの騎士という立場を捨てちゃいなかったしな。」
「そうだったの。軍で遠征していたとしか聞いていなかったけど、一緒に旅をしていたのね。」
「……ある日、オルテガがパーティの解散を突然申し出てな。散々揉めたんだが、結局は散り散りになった。そして解散した直後にオルテガは行方不明になっちまってる。」
なるほど、オルテガはギアガの大穴の先にいるゾーマの存在に気付いたが、ボスとサイモンを巻き込みたくなかったがために、半ば強引にパーティを解散したってわけか。
「……オルテガは1人でゾーマを倒そうと腹ぁ括ったんだな。エルスから話を聞くまで、オレ様はそれに気付けなかった間抜け野郎ってわけだ。」
「ボスは間抜けなんかじゃありません!」
間髪入れずにアリサさんが否定する。
「……まぁ以前からオルテガの息子については何かあったら助けてやろうと思っていたんだが、エルスの話を聞いて尚更その気持ちが強くなったってわけだ。……ただの自己満足にすぎんがな。」
「今の勇者はそのことを知っているんですか?」
「知らねぇし、知らせるつもりもない。おめぇらも黙っとけよ。」
……この世界に来てから一番驚いているのは、ボスのことだ。
ゲームではただの小悪党だったのに、この世界では聖人君子と化している。
そんなボスの指示ならば、どんなものでも従おうって思えてしまう。
それに、かつて仲間だった男の息子を助けるなんて、王道じゃないか。
息子にはそれを明かさないっていうのもポイントが高い。
……まぁ、アリサさん辺りがいつか息子に喋っちゃいそうだけど。
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