第23話 作戦
「サマンオサでの行動について話しておく。」
無事にレベルが25までたどり着いた翌日、夕食時にカンダタが口を開いた。
「基本的には2手に分かれて行動だ。オレ様とアリサとドネア、ヴィクターとキャシーとエルスだ。」
「なぜ2組に分けるんですか?」
「同時並行で動けば相手も対応しづらくなるだろうからな。オレ達がサマンオサで城への侵入経路とかを調べている間、ヴィクター達には試練の洞窟に向かってもらう。」
アリサさんの疑問にカンダタが答える。
「ラーの鏡を無事に手に入れたらその日の夜に城へ潜入する。オレ様達が本物の王を救出すると同時に、ヴィクター達で偽物の方をやれ。一気に片付けるぞ。」
カンダタの言葉にヴィクターさんがピクッと反応している。
「ねぇ、ボス。その偽物と戦うにはさぁ、少なくとも回復呪文が使えるアリサが必要なんじゃない?私はともかくとしてさぁ。」
ドネアさんがもっともな疑問を呈する。
「それについては心配ない、キャシーが使える。」
「へっへーん。僧侶の呪文も少し覚えたんだー。回復はベホイミまでだけどねー。いやー、さとりの書さまさまだねー。」
流石だなキャシーちゃん、もうそこまで解析できたのか。
「なんか転職とは違うからか能力も下がらないしさー。ホント、便利だよー。」
その辺もゲームの仕様とは違うってことか。
「エルスのレベルも25になった。これでエルスがトヘロスを使えば、辺りのモンスターも出てこねぇだろう。」
レベルを25まで上げろと言ってた理由はそれもあったのか。
ボストロールと戦うためだけに必要なのかと思ってた。
「3人ずつに分けるのはどういった意図ですか?」
「試練の洞窟ではガルナの塔と同じように穴から飛び降りる必要があるらしいからな。トベルーラでは2人までしか一緒に運べねぇから仕方がない。」
「ま、また飛び降りるの?」
ヴィクターさんが凄い焦っている。
ガルナの塔での出来事が相当怖かったんだろう。
「試練の洞窟内はエルスが把握してるだろうが、実際に行ったことのあるヴィクターも一緒にいた方がいいだろ。それに、ヴィクターはサマンオサではツラが割れてるからな、街中での活動は最低限にしておきたい。」
確かに、ヴィクターさんが誰かに気付かれたりでもしたら騒ぎになってしまうか。
「し、仕方ないわね。頼んだわよ、エルス。」
「大丈夫ですよ、お任せください。」
「大事なお姫様だもん。ちゃんと守ってあげなきゃね、エルス王子♪」
……ドネアさん、やたらと食いつくなぁ、そのネタに。
ヴィクターさんは余裕がないのか、返事すらできないみたいだ。
「……国王の救出ですが、そちらも3人で行く必要はあるんですか?ボスもボストロールを担当した方が良ろしいのではないですか?」
「国王は城内の牢獄に閉じ込められているとのことだ。オレ様はサマンオサ城内の場所についてある程度把握しているし国王とも面識がある。何より、オレ様はピッキングができるからな。」
流石は大盗賊、カギなんてお茶の子さいさいっていう感じなのだろう。
「それと3人で行く理由だが、見張りの兵士共を相手取る可能性があるからだ。……まぁ国王を助けたらすぐにヴィクター達に合流するつもりだがな。」
ボス達が来てくれれば6対1になるということか、何とかそれまで踏ん張ろう。
「……ところでエルス、その偽物は何か貴重なアイテムとかを隠し持ってたりはしねぇのか?」
ねぇカンダタさん、がめついですよ。恥ずかしくないんですか。
「偽物が持っているのは「変化の杖」というものです。これは最終的にシルバーオーブを取るために必要となるので、勇者に渡す必要があるでしょう。」
……実はもう一つ、「雷神の剣」という、ほぼ最強の武器が手に入る可能性がある。
しかしアレはレアドロップで、そのドロップ率は256分の1とかなり低かった。
入手はほぼ期待できないわけだし、教える必要はないだろう。
「変化の杖か。名前からして中々面白そうなアイテムっぽいが、それならまぁ仕方ねぇな。終わったらオレ様から勇者に渡してやるか。」
あの勇者達は無事にシルバーオーブまでたどり着けるのだろうか。
変化の杖を別のアイテムと交換して、それを使ってまた別のアイテムを入手して……と、かなり面倒な手順を踏む必要がある。
……そういえば、その過程でサイモンの死を知ることになってたよな。
ヴィクターさんの顔を見れなくなってしまう。
「大丈夫?何か心配事?」
そのヴィクターさんが声をかけてきた。
「いえ、大丈夫ですよ。あの勇者達がちゃんとやれるかと思って。」
「ああ、あいつらは意外によくやってるよ。オーブを1つゲットしてたしな。」
「順調そうでなによりです。そういえば、ボスが持ってる2つのオーブは勇者に渡したんですか?」
「いや、アレはまだだ。まぁ変化の杖とやらと一緒に渡してやるさ。」
まぁオーブは6つ揃わないと意味がないから、焦って勇者に渡す必要もないだろう。
「……前にも聞いたが、ボストロールってヤツは、攻撃呪文は使ってこねぇんだよな?」
「はい。そいつの戦法ですが、ルカナンでこちらの守備力を下げつつ、持っているこん棒で殴ってくるだけです。」
「ふん、星降る腕輪を取っておいて正解だったな。エルスのピオリムも駆使して、とにかくその攻撃を避ければいい。」
「私はピオリムをかけたらお役御免ってことですかね。しかし、そんな簡単にいきますかね。」
「オレ様が合流するまで、精々頑張って持ちこたえるんだな。」
「ボスが合流する前に私が倒してみせるわよ。任せておきなさい。」
「私もガンガン呪文をぶっ放していくからねー。」
ヴィクターさんとキャシーちゃんが頼もしい声を上げてくれる。
自分はきっと逃げ続ける一方なんだろうなぁ。
女性2人が戦って、男はその陰に隠れるって構図かぁ。
まったくもって情けない話だが、餅は餅屋だ、割り切るしかない。
「……そっかぁ、エルスがお姫様で、ヴィクターが王子様ってことね♪」
……ドネアさん、トドメをささないでください、泣きそうです。
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