第19話 和解

 アリサさんがグプタさん達2人を勇者の所に連れてきてくれた。

 勇者たち御一行は、グプタさん達からの話を聞いて、やはりショックを受けているみたいだ。

「……皆さん、本当に申し訳ありませんでした。僕たちはどうやら騙されていたみたいです。」

 勇者が真摯に謝罪してくる。

「いえいえ、誤解が解けたようでなによりです。」

「あの、エルスさん。差し支えなければ、カンダタが言っていたロマリアの冠に関する事情も教えて貰えませんでしょうか?」

「……エルスさんは、冠の件について何か御存知なのですか?私はボスから何も聞かされていないのですが。」

 ……ア、アリサさん? か、顔が怖いですよ?

 ……ていうか、アリサさん達はカンダタから事情を聞いていないのか。

 どうしよう、こっちの一存で話しても大丈夫なのかな。

「……あー、それについては秘密だ。まだ言える状況にないからな。」

「あ、ボスだー。おかえりー!」

 ここにきて我らがボス、カンダタ様のお帰りだ。

「久しぶりだな、勇者様。元気にしてたか?」

「え、ええ。おかげさまで。」

 ちょっと前までは敵対していたのに、その暢気なやり取りを見て思わず吹き出しそうになった。


「ついさっき、ポルトガ軍とダーマの連中がバハラタに到着してな。無事に黒幕どもは一網打尽になったところだ。」

「あ、ありがとうございます、カンダタさん!」

 グプタさんが涙ながらにお礼を言う。

「ターニアといったか、実家のこと、あんまし気ぃ落とすんじゃねぇぞ。」

「……はい、大丈夫です。私にはグプタさんがいますから。」

「ターニア……任せてくれ、君は僕が守る!」

「グプタさん……。」

 ……あのぉ、そういうのは余所でやってくれませんかねぇ。

 ドネアさんはこういうのが大好物なんだろうか、ニヤニヤしながら目の前で繰り広げられているラブロマンスを眺めている。

「良かったですわね、ターニアさん。」

 アリサさんもニコニコだ。

 ……さっきまでの怖い顔からは想像もできないぐらい。

「はい!アリサさんにも皆さんにもホントにお世話になりました、ありがとうございます!」

 うんうん、感謝されるってのはいいものだね。

 タダっていうのもいい。


「……でも、どうしようアルス。これじゃあ私達、船が手に入らないんじゃない?」

 サラキアが不安そうに勇者に尋ねる。

「仕方ないよ。他に手段が無いか探してみよう。」

 流石は勇者だ、こういったことにもへこたれない強さは持っているということか。

「ああ、それについては心配すんな。今回の件はオレ様と勇者様が協力したってことでポルトガの王にも話をつけてある。」

 マジか。

 手回しの良さといい、ボスの行動には驚かされてしまう。

「ど、どうして僕たちに?」

「勇者様の目的はバラモスの討伐だろ?こんなところで躓いてもらってちゃあ困るんだよ。」

「でも……」 

「オレ様みたいなヤツに借りなんぞ作るのは気に入らねぇかもしれんがな。オレ様は貸しだとは思っちゃいねぇよ。遠慮せずに受け取っておけ。」

「す、すみません。ありがとうございます。」

 ……いやぁ、ゲームには無かった展開だな。

 本来は敵同士になるはずが、こうやって手を組むなんて。

 こういうのはムネ熱で大好物だ。

「……そん代わり、勇者様が手に入れるはずのアイテムの一部は、このオレ様が頂いておくがな。」

 ……勇者に聞こえない程度の独り言を聞き逃さなかった。

 ……さっきのムネ熱を返してくれ。


「じゃあ、グプタ達は勇者様にバハラタまで送ってもらいな。その姿を村にいるポルトガ軍が見れば勇者様の貢献度も見てとれるだろうしな。グプタもさっきの話を踏まえてうまくやってくれ。」

「はい、わかりました。では、勇者様、村までお願いしてもよろしいでしょうか。」

「ええ、僕たちにお任せください。」

 キリッとした顔で勇者が答える。

 そしてこちらに向き直った。

「この度は皆さんに御迷惑をおかけしたことを改めてお詫びします。さらに、僕たちに手柄を分け与えてくれたこと、感謝してもしきれません。いつか、必ず御恩をお返ししたいと思います。」

「バラモスを倒してこの世界を平和にしてくれりゃあ、恩返しとしてはそれで十分すぎるってもんだ。まぁ精々頑張りな。」

「はい!必ず、バラモスを倒してみせます!」


 まだまだ不安なところもあるけど、勇者には頑張ってほしいものだな。

 さっきは説教じみたことを勇者に言ってしまったけど、これで勇者が成長していってくれたなら、自分がこの世界に来た甲斐があるってもんだ。

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