第15話 対決

「僕とソフィはカンダタを相手だ。サラキアはそっちの子分を頼む。マールはサポートと回復に専念してくれ!」

「了解よ、子分は私に任せて!」

「支援します、スクルト!」

 いきなり守備力アップの呪文とかズルいなぁ。

「じゃあこっちもサポートしますよ、ピオリム!」

「ふん、オレ様にはサポートなぞ必要なかったがな。まぁいい。」

 ……ちょっとは有り難がってくださいよ、ボス。


「……さてと、アンタには悪いけどさっさと倒れて貰うわよ。アルスを助けなきゃだし。」

「えっと、私を殺したりはしないですよね?」

「そのつもりはないけど、死んだって責任は取らないわよ。」

 安心して良いのかわからない返事だ。

「私、所詮はサポーターですので、手加減してもらえませんか。」

「そんなの知らないわよ。」

 まぁ敵同士ですからね。

「……では生き延びるために頑張ってみることにします。ボミオス!」

「なっ!」

 つい最近覚えた、敵の素早さを下げる呪文だ。

 どうやら効果があったみたいだ。

「ちっ!くらえっ!」

 女戦士サラキアが斬りかかってくる。

 ピオリムで素早さを上げていたお陰もあって、なんなく避けることができた。

 ……てかこいつ、よりにもよって頭を狙ってきやがった。

「ちょっ、殺す気満々じゃないですか!」

「うるさい!てか、うざったいわね、これ!」

 どうやらボミオスの効果でうまく体を動かせないみたいだ。

 ……正直言って補助呪文を舐めていた、ここまで効果があるとは。

 とりあえずは逃げ回りつつ、ボスからの合図を待つことにしよう。


「ヒャド!」

「おっと、当たるかよ。」

 女魔法使いソフィの攻撃呪文をカンダタは難なく交わす。

「おりゃあ!」

「ふん、あめぇよ。」

 カンダタは勇者の剣を交わしつつ、カウンターで勇者に拳をぶち当てる。

 勇者が壁際まで吹っ飛んだ。

「アルス!ホイミ!」

 女僧侶マールが慌てて勇者を回復する。

 カンダタは腰に差してる刀を使わないでいるが、それでも強い。

 ……刀を使わないということは、勇者を殺すつもりはないようだ。

「くっ、まだまだっ!」

 立ち上がった勇者が再度カンダタへ突入する。

「バカ正直すぎるんだよ。ちったぁ頭使えや。」

 カンダタは勇者の剣を屈んで交わすと当時に、足払いを放って勇者を転倒させる。

「こんのぉ!ギラ!」

「そっちのお嬢ちゃんも、狙いがわかりやすすぎるんだよ。」

 カンダタは後ろに飛んで呪文を避ける。

 ……凄いな、たった1人で勇者達3人を手玉に取っている。


「よそ見してるなんて、随分と余裕ね!」

 おっと、ヤバイ。

 サラキアの剣を躱す。

「いや、ボスに助けてもらいたくて、さっきから合図を送ってるんですがね。」

「ふん、その前にアンタを倒してあげるわよ!」

 サラキアの剣は鋭い。

 けど、今のヴィクターさんほどではない。

 まだ勇者達のレベルがそこまで上がってはいないのだろう。

 ……でなきゃ、自分なんかが勇者のパーティに敵うはずがない。

「くそ、ちょこまかと逃げ回ってばかりで!戦いなさいよ!」

「所詮はサポーターですからね。戦うのは専門外なんです。」

 しかし、こっちにはカンダタほど余裕があるわけではない。

 こうやって剣を躱し続けるのは精神的にもちょっとキツい。

 ……とはいえ、自分なんかの素人の剣でやり合えるとも思えない。


「ボスー!まだですかー!」

 いい加減終わりにしたくて、カンダタに大声で尋ねる。

「あーん?もうへばったのかぁ?」

「もうクタクタです!」

「その割にはまだまだ余裕があるみてぇだがな。まぁ、もういい頃合いか。」

 そして……

「飛ぶぞ!エルス!」

「待ってました!」

「あばよ、勇者様!精々もっと鍛えるんだな!」

 一目散にルーラで退散したのである。


 ――― 勇者達はどう思っただろうか。

 カンダタにいいようにあしらわれて、その上でまさかの逃亡だもんな。

 恨みを買ってなきゃいいけど。

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