第4話 子分

「……じゃあオレ様の子分共を紹介してやるか。大事な仲間になるんだからな。」

 椅子に座り直したカンダタは、勝手にどんどん話を進めていく。

 もう今更か。

「端から順番にいくか。アリサからだ、自己紹介してけ。」

「はい、ボス」

 右端に立っていたフードが一歩前に出る。

「アリサと申します。」

 フードを外したその顔を見て驚いた。

 めっちゃ美人だ。

 ストレートの銀髪、キリッとした目、まさにクールビューティ。

「次。」

「……ヴィクター。」

 甲冑姿の人もやはり女性だった。

 そして、この人もちょー美人だ。

 ややショートの金髪で、ちょっとキツそうな感じがM心をくすぐってくる。

「次だ。」

「キャシーだよー、よろしくねー。」

 ノリが良さそうな女性、ていうか女の子だ。

 可愛い系でくるくる巻き髪も萌えポイントになっている。

「最後。」

「改めまして、ドネアよぉ。」

 最後にここまで連れてきてくれた女性がフードを外す。

 おお、ここにきて黒髪。

 やや肌黒で、まさに南国美人って感じ。

 ……凄いな、カンダタはこんな美人を4人も囲っているのか。


「4人ともオレ様が付けた名前だ。」

 ……どういうことだ?ひょっとして、親子?

「こいつらの本名は別にあるが、このグループではオレ様が付けた名前で通ってる。」

 なるほど、コードネームみたいなものか。

 素性バレを防ぐため、みたいな。

「ちなみに、オレ様がなぜこんな名前を付けたかわかるか?」

 カンダタがニヤリと笑う。

「いえ、見当もつきませんが。」

「1人目の子分だからAでアリサ、2人目はBでヴィクター、3人目はCでキャシー、4人目はDでドネアってわけだ。なかなかだろ?」

 ……この世界にも元の世界と同じアルファベットがあるとしてだ。

 ヴィクターは「B」じゃなくて「V」だと思うんだよなぁ。

「テメェは5人目だからEか・・・エロガキとかどうだ?」

「断固拒否します。」

「ノリが悪ぃヤツだな。……じゃあエルスだ。」

「まぁ、それなら。」

 ……かくして、今日からカンダタ子分E・エルスとして生きることとなった。


「……それで、これからの話だが。」

 カンダタが立ち上がる。

「オレ様は暫くの間、テメェがもたらした情報の裏取りをやる。それまでテメェ……エルスは他の仲間と一緒にここいらのモンスター相手に鍛えてレベルを上げておけ。」

「裏取りって……これから世界各地を回るおつもりですか?」

「そうだ。」

「時間がかかりそうですね。」

「オレ様はルーラが使えるからな。ほとんどの国にはルーラで飛べるさ。」

 へぇ、ルーラが使えるのか。

 行ったことのある場所にワープできるという、とても便利な呪文だ。

 ゲームでカンダタがルーラを使うシーンなんてあったかな。

「エルスの話がマジなら、オルテガの息子が勇者としてここにやって来るまで、少なくとも2ヵ月の猶予がある。確かめておくべきことは今のうちにやっておかねぇとな。」

「えっと、そもそもここから逃げないんですか?」

「別に逃げてもいいんだが、その勇者様はバラモスもゾーマとやらも倒す存在なんだろ?だったら一度は相まみえてみてぇもんだ。」

 凄い自信家だ。

「じゃあ早速行ってくる。アリサ、後は任せた。」

「承知しました、ボス」

「じゃあまたな。ルーラ!」

 一瞬でカンダタの姿が見えなくなった。随分とせっかちな人だ。


「……さて、改めまして。よろしくお願い致します、エルスさん。」

 アリサと呼ばれた女性が話しかけてくる。

「ボスがおっしゃったとおり、明日から我々と一緒にモンスター退治をやってもらいます。我々の生活の糧となりますので、他に何もなければ毎日モンスター退治をやることにしてます。今日はこの拠点内をご案内致しましょう。」

「……モンスター退治ですが、この私にもできますかね。」

 正直、それが一番不安なところだ。

 異世界人である自分のレベルがどれくらいあるのか、そしてレベルが上がって強くなれるのかもわからない。

「やってみなければわかりませんが、ある程度は強くなれるでしょうし、大丈夫だと思いますよ。」

 その言葉に少し救われる。

「装備一式は、後でエルスさんのお部屋にお持ちします。」

「あ、私の部屋も用意してくれるんですね。」

「ええ。無駄に広いですからね、ここは。」

 確かに塔を丸ごと拠点化しているなら、かなりの広さになりそうだ。


「それではまず……」

「あ、その前に。」

「なんでしょう?」

「申し訳ないのですが、何か食べるものを頂けませんでしょうか。」

 さっきから腹の虫が鳴り止まない。

「……失礼致しました。いい時間ですし、これから皆で食事にしましょう。食堂までご案内します。」

「ちなみに今日の食事当番は私だけど、そのうちアンタにも作って貰うからねぇ。」

 ドネアさんも会話に入ってきた。

「その辺りもエルスに説明しておいた方が良いわよねぇ、アリサ。」

「そうですね。食事がてら、私から説明させて頂きます。」

 どうやらアリサさんは凄く優しくて頼りになりそうな人だ。


 それにしても、これはハーレムルートってヤツを期待しても良いのだろうか。

 だとしたら……元の世界でDTを卒業しておくべきだったなぁ。

 

 ……そんな度胸なんてないけど。

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