第12話 乱入してきた
リリアが爆弾を落とし、その衝撃をモロに喰らった青髪の少女。
彼女は震えるながら呻くように言った。
「こ、これが……婚約者? グレイロード家の人間が、よりにもよってマリウスが……あなたの婚約者!?」
「これって……」
随分と失礼な奴だな。
ゲーム通りだ。
「失礼ですよセシリア。いくら同じ公爵家の人間であろうと、マリウス様をこれ呼ばわりは私が許しません!」
「しかもベタ惚れ!? 一体なにがあったのよ! 私が知らないここ数日の間に!」
「——聞いてくれますかセシリア! 幼馴染であるあなたにはぜひ聞いてほしかったんです!」
あーあ。
リリアの心に火が点いた。
猛スピードでセシリアの手を握る。組んでいた腕が離れた。
「え? そ、そうなの? 聞くからちょっと落ち着きなさいリリア……こんな所で大きな声を出すとさすがに目立つわ」
リリアの言葉を聞いてか、周りの視線がちらほらとこちらへ向く。
人が多いだけに視線の数もまた多い。
「あ! す、すみません……」
「次からは気を付けてね。あなたはこの国の王女様なんだから。……それで、マリウスとの
改めて話を戻す。
「わかりました。まずは何から話しましょうか……そうですね、セシリアは私がこれを大切にしてることは知ってましたよね」
そう言ってリリアは首元に下げたペンダントを見せる。
「ロケットペンダント? たしか、今は亡き第二王妃の形見だっけ」
「ええ。実はこの形見のペンダントを城下を歩いてる時に落としてしまって……」
「は? あなたがいつも肌身離さず持ってるそれを? ……ということは、まさか?」
「流石にセシリアは察しがいいですね。恐らくあなたが考えてる通りです。ペンダントを失くして困ってる私は、たまたま同じように城下へ来ていたマリウス様と出会いました」
リリアの頬が赤くなる。
彼女は更に続けた。
「マリウス様は困ってる私に手を差し伸べ、見事、このペンダントを探し当ててくれたのです!」
「……信じられない。自分のことしか考えてないあの男が、リリアのペンダントを一緒に探した? むしろ、そのペンダントを隠したんじゃないでしょうね。あなたならやりかねないわ。リリアと婚約するために」
おい。
「酷い言いがかりだ。俺だってリリアと婚約するとは思ってもみなかった。正直、荷が重いと今でも思ってる」
「リリア!? 呼び捨て!? 不敬よ不敬!」
「お前だって呼び捨てにしてるだろ……本人からの希望なんだよ。嫌なら本人を説得してくれ」
そう言ってリリアの方を見るが、彼女はニコニコと笑ったまま淡々と告げる。
「ダメです。例えセシリアの頼みでもそれは聞けません」
「だそうだ」
「ちょっとムカつくから一発殴ってもいいかしら」
ザ、理不尽。
「やめろ」
いくら女でも殴られたら痛い。
しかもこいつの性格上、狙うのは顔面一択だろう。
「……にしても、ペンダントを見つけてくれたから婚約? いくらなんでも早計すぎない?」
「そんなことはありません。あの時のマリウス様はまるで絵本に出てくる王子様のようでした」
いや美化しすぎだろ。あったらいいね、くらいの会話だったぞ。
どうなってんだリリアの脳内マリウスくん。
「こいつが、絵本に出てくる王子様、ね。そう言えばこうして話してても案外普通ね。あの時の鬱陶しい高飛車な台詞はどこに言ったのかしら」
「道端に捨ててきた。恐らくもう帰ってくることはないだろう」
「なにそれ、犬か猫? 自分がまともになったとでも言いたいの?」
「さあな。一応、ワガママではないつもりだ。どう思おうがお前の勝手だがな」
「ふーん……まあいいわ。その化けの皮がいつ剥がれるか、私が見極めてあげる」
「見極める?」
どういう意味だ。
「あなた達、どうせデートでもしてるんでしょ? 一緒にいるってことは」
「はい。これから洋服屋に行ってマリウス様に服を選んでもらう予定です!」
服を選ばされる予定です。
「そう。ならそのデートに私も混ぜてもらうわ。ダメかしら、リリア」
「セシリアが私たちのデートに……?」
「ダメに決まってるだろ」
常識的に考えて。
「構いませんよ」
構いませんの!?
これが異世界の価値観か……。
地球なら間違いなく修羅場になってるぞおい。
「ありがとうリリア。安心して。離れたところで見てるから」
「別に近くでもいいですよ?」
「そこまでワガママは言えないわ。それに、遠くから見てる方がよく見えると思うの。ねぇ、マリウス」
俺を見るな。
「知らん。リリアがいいなら俺は何も」
「ふん。クールぶっちゃって……取り合えずそういうことだからデートを続けてちょうだい」
それだけ言ってセシリアはメイド達がいるところまで離れた。
再びリリアと二人きりになる。
「はぁ……わかりました。では改めて行きましょうかマリウス様。メイ、店まで案内してちょうだい」
「畏まりました。こちらです」
更に大所帯になった俺とリリア一行。
もはや数が増えすぎて集団になった俺らは、デート? という名の買い物へ出かける。
どうでもいいが、さっきから背後で俺を睨むセシリアがすごく鬱陶しい。
少しは遠慮しろよと言いたかった。
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