第7話 こんなはずじゃなかったのに。

ドクン…ドクン。お母さんの声からして相当大切な話らしい。お母さんは深呼吸をする。

「あのね、お父さん出ていっちゃったの。」

正直、え?とはならなかったけどなにか反応をしなければ…と思っているとお母さんがまた口を開いた。

「それでね、由菜には学校を退学してアルバイトを始めて欲しいの。」

え、アルバイト…って。怖くて外にも全く出てなかった私がアルバイト?え…

私は頭が混乱しているにも関わらずお母さんはバイト候補の写真を見せる。1つ目はコンビニ。2つ目は喫茶店。3つ目は音楽機器専門店。どれも接客だ。(そりゃ、そうだけど)どれも私に似合いそうにはなかったけど私は音楽が好きだから音楽機器専門店でバイトをすることにした。

バス10分と徒歩5分という私が前けっこう行ってたところだ。

「今日からここでアルバイトをさせていただきます。倉岡由菜です。まだ分からないことも多いですがよろしくお願いします。」

面倒くさそうに下を向いている私より少し下くらいの男の子、愛想の良さそうな女性、店長…などなど。結構大変な1日になりそうだ。

「ほら、倉岡さんっ!!!これはこっち!!!」

「あ、はい!!ごめんなさいっ…」


はぁ、今日はずっとこんな感じだった。疲れた。従業員の方たちにありがとうございましたと挨拶をしてから外に出る。

「わぁ、雪だ。」

久しぶりに外に出て気がついた。もう、雪が降っているのか。久しぶりの雪だ。そういえば、昔は友達と集まって鍋とかしてなぁ。なんてことを考えながらバス停で待っているとあっという間にバスが来た。

もう遅い時間だからか人がまばらだった。座ってからはずっと外を眺めていた。信号機の色、いろいろな車…

そのときおばあさんから話しかけられた。

大丈夫ですか?と。

あれ、私泣いてんだ。大丈夫ですとハンカチで目元を拭きながら言った。

全てはお母さんのせいだ。お母さんからいつも喧嘩を始めてた。

私はお母さんが許せなくなった。許さない。絶対に。

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