いや、待て、違う。



 そういえば、怜奈はコーヒーが苦手なんだった。味は好きだけど、飲んだら体調が悪くなるんだったっけ。確か、以前そんなことを言ってはずだ。



 となると、おごるのはコーヒーではなくコーンポタージュあたりにしておくか。



 そうすれば怜奈の心が温まり口も潤って、普段は引っ込んでしまいがちな言葉もよく出てきてくれるに違いない。



「怜奈、ちょっとコンビニ寄っていいか?」


「……うん。じゃあ、外で待ってる」



 と頷いた怜奈をコンビニの駐車場で待たせて、俺は一人コンビニへ入り、他へは目もくれず温かいコーンポタージュだけを買って外へ出た。



 のだが、怜奈から目を離したのはこんな一瞬だというのに、どこからかやって来ていた男二人組が怜奈にナンパを仕掛けていた。二人に囲まれる怜奈は、まるで凍りついたように肩を縮こめている。



 すぐそこに停まっている車のアイドリング音がやたらとうるさい。俺は若干、声を張り上げながら言う。



「なんか用すか?」


「ああ?」



 と、こんなに寒いにも拘わらずTシャツ姿の金髪男が俺を見下ろす。かなり背が高く、体格もゴツい。



「なんだお前? 関係ねーだろ」


「いや、関係なくはないでしょ。俺たち家族なんで」


「家族……? チッ」



 と舌打ちして、男たちはコンビニの中へ入っていった。



 それを見届けて、怜奈は一分ほどずっと呼吸を止めていたかのように深く息を吐いた。



「あ、ありがとう……」


「別に、よくあることだろ」


「あなたは怖くないの? ああいう人たちのこと……」


「怖いに決まってるだろ、何するか解らん連中だし。ただもういい加減、慣れただけだよ」


「ご、ごめんなさい……」


「なんでお前が悪いわけじゃないのに謝るんだ。ほら、飲めよ」




 と、俺は怜奈にコーンポタージュの缶を手渡す。



「え? どうして……?」


「俺一人で温かいもの飲むわけにはいかないだろ? ほら、冷めないうちに飲みながら帰ろうぜ」



 そう俺が歩き出すと、怜奈も小走りについてきて俺の隣を歩く。


「……ありがとう」



 カシュッ、と気持ちのいい音を立てて俺と怜奈は缶を開け、それに口をつける。その味は、舌から全身へ染み渡っていくように温かくて、甘い。幸せな白い息が夜空に立ち上る。



 さて、問題はここからだ。



 打算的ではあるが、これで怜奈は俺に借りができたわけだし、怜奈としても俺に相談をするキッカケができたというものだろう。



 というわけで、怜奈に悩み事はないかと訊いてみようか?



 Which would you choose?


  Yes. / No.
























 Yes:⑧へ。


 


 No:⑫へ。

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