非常に巧みに配置された人物とエピソード、そして台詞の数々。
山本菜摘と遠藤蓮花、シュペルエタンダール、二人の男。東京と静岡……
登場人物が、場所が、すべての要素がコインの表裏のように、対決し、組み上げられていく。おそらく、モデルにした実際の出来事とこの小説も。
暗めのタイトルに少し飛び込むような気持ちで最初のページを開いたが
読み始めたら後はぐいぐいと文章のほうから読ませてくれて
読んでいる間に感情が激しく揺さぶられる。前後左右に、上に下に。
主人公もそうだろう。激しく揺さぶられ、そしてたどりつく。
読んだ人間にしかたどり着けない感情に必ず到達できる。
そういう心を動かしてくれる小説です。