第3話
-2015年5月-
「転校生を紹介します。」
朝礼で校長先生が言う。この人私のお兄ちゃんがいた時からこの学校の校長なんだよな…何歳だ?そんなことを考えながら先生の話を聞いていた。
「では自己紹介を。」
「はじめまして。」
声の主が気になった。すごく好きな声だったから。顔を上げると、小さな男の子がいた。
「シンガポールから転校してきた國村湊です。よろしくお願いします。」
「はい。有難う。國村くんは3年生に入ります。みなさん仲良くしてあげてね。」
その後校長先生が今週の目標とかいろんなことを話してたけれど、全く耳に入ってこないぐらいあの子が私のクラスだったらいいなとかそんなことばかり考えていた。
「あの子うちのクラスらしいよ。」
ハルちゃんが椅子から後ろを向いて言う。
「そうなの。」
興味ないふりをしたけど、私の心は高鳴っていた。
「はいみなさん。転校生がうちのクラスに来ましたー!!」先生が声を張り上げる。私は緊張しながら先生の後ろを気にしていた。すると後ろから現れたのは、大量の荷物を持ったさっきの小さな男の子だった。
「じゃあ國村くんは…あの後ろの席にしようか。1人席だけど明日ちょうど席替えなのよ。」
「わかりました。」
クラスメイトの視線が集中する。私は可哀想だと思った。3年生で新しくなったこのクラスも運動会が終わってやっとまとまってきたのに、そのクラスに放りいれられるなんて可哀想だ。きっと本人も不安だろう。
「では授業を始めます。」
そういってみんなの関心は始まったビデオに釘付けになった。そんな中私は端っこの席の彼を見たくて振り向いた。けど、目が合った気がしてすぐに前を向いた。
次の日、席替えをします。と先生が朝一番に発表した。
「円佳ちゃん次も近くの席なろうね!」
ハルちゃんが楽しみそうに言った。
「そうだね。どこにしようかなー。」そう言いながら席を立って女子は外に出た。
席替えはお見合いという方式だ。男女が隣になるようになった席。先に女子が教室の外に出て男子が好きな席を選ぶ。次に男女が入れ替わって、女子が好きな席を選ぶ。その席の前にたったまま、男子が入ってきて隣の席の人がわかるのだ。
私とハルちゃんは窓際の後ろの席を選んだ。そして男子が入ってくる。ハルちゃんの嬉しそうな声が聞こえる。
「えー隣中本ー?最悪ー。」
嘘だ。ハルちゃんは中本翔太の方が好き。何回も聞かされている。
「は?なら村山に席変えてもらったら?」
中本が食い気味に私に言ってくる。ハルちゃんが分かってるよねと目配せする。
「ごめん中本。私も中本の隣やだから。」
「はぁー?おい村山!」
「はい中本静かにする!」
そんな声を聞きながら私は廊下の方を見て隣の席の男子を待っていた。するといきなり気配がして、後ろを振り向いた。そこにはあの男の子がいた。
「よろしくお願いします。」
嬉しかった。本当は隣になれたらいいなと思っていたから。その気持ちを抑えるように落ち着いて、でも印象良くなるよう明るく
「村山円佳です、よろしくね。」
と言った。
「村山さんよろしく。」
國村くんがそう言いながらゆっくり椅子に座った。私は嬉しかった。多分この学校で國村くんの笑顔を見たのは私が初めてだと思ったから。
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