台無しの顛末

 時間は戻って現在。と、まぁ、これがエラさんと出会ってから今に至るまでの、凡その顛末てんまつである。とは言え、やはり私には今目の前で起こっているこの状況を飲み込むことができないでいるのだけれど。


 あぁ、ステージの上で倒れているパトリシアさんが担架たんかで運ばれて行く。余程強い衝撃を受けた為か、腕は垂れ下がって全身が痙攣し、完全に気を失っているようだ。近くに寄り添う試合に出ていなかったメイドさんの様子からも、只事ではないことが伺える。それに、観客たちはエラさんに声援を送りながらも、実際のところ、結構な人数から困惑している空気が伝わってくる。そりゃあそうでしょうとも。一年半もの間、クラスマスターの地位を防衛し続けたパトリシアさんの試合が、こんなにもあっさりと終わってしまったのですから。


 まぁいずれにせよ、こうして、私のパトリシアさんへ挑戦するまでの物語は幕を閉じたのだった。


「えぇぇ~……」


 今の私には、そうとしか言いようがない。だって、試合はあっという間の三人抜きで、どの試合も一瞬と言える程にあっさりと終わってしまったのだから。またエラさんは、観客の声援に応えようと手を振っていながらも、その顔は「物足りないなぁ」という表情をまるで隠そうともしていなかった。


「「「…………」」」

「……クレアさん……」

「えっ⁉ な、なんだ……?」

「今の試合から、一体私は何を学べば良いのでしょうか?」

「それは、その……いや、今のは例外中の例外ってやつで……」

「……シャロ……」

「は、はい……?」

「パトリシアさんに勝って、クラスマスターになるって約束……守れなくて、ごめんね」

「いえ、あの……それは別に……何も、雫が悪い訳では……」

「……バレルさん……」

「なんだよ、俺にも何かあるのかよ……」

「私、これでパトリシアさんとは戦えなくなってしまいましたけど、これじゃあもう、私はリベレーターにはなれないのでしょうか?」

「いや、待て待て! そりゃあ色々あって、パトリシアと戦おうって話にはなっていたが、元々雫はここで十勝するってのが合格の条件だった筈だろ? だから、って訳でもないが、その……い、良いじゃねぇか! 条件はアリーナ戦十勝で合格ってことで!」

「……へっ、そうですよね……へっ……」

「あぁ、雫がふて腐れてしまって……」

「ったく、クソッ……エラのやつ、本当に面倒なことをしやがって……」

「それで、どうするのです?」

「どうするって、お前……そんなの、俺に聞かないでくれよ……」

「とりあえず、どういう意図でこんなことをしたのか、本人に聞くしかありませんわ」

「気が進まねぇなぁ、どうにも……」

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