2 Spoil Story.

台無しの始まり

『ダウーンッ‼ 圧倒的ッ‼ 圧倒的だぁッ‼ 俺たちはこいつを待っていたぁ‼ 停止不可能の重機関銃‼ “エラドゥーラ・バルカニコ”をぉぉぉぉッ‼ コートヤードのクラスマスターの地位を一年半に亘って防衛し続けた、チームNoblesseノブリス Gardenガーデンを‼ パトリシア・ハンバートを‼ たった一人で打倒してしまったぁぁぁ‼』


 ………………。


「えぇぇ~……」


 ステージの上、パトリシアさんの目前に立っていたのは私、雨衣咲雫――ではなかった。本来私が立つ筈だったステージの上から、観客席に向かって愛想良く手を振る浅黒い肌にサングラスの女性。そんな彼女に向かって大歓声を送る観客たち。それら全てを、目の前で起こっている光景を、私は咀嚼そしゃくし、飲み込むことができないでいた。


 イルミナスのアリーナコロシアムへ乗り込み、パトリシアさんへの挑戦を決めてから早一ヵ月。参加当時は不安ばかりを募らせ、大勢の前で戦うなんて絶対にできる筈が無いと思っていた。けれど気が付いてみれば、九勝〇敗という自分でも信じられないような快挙を成し遂げていた訳で。だから今日まで私は、バレルさんやシャロとの因縁の相手でもあり、私が目標として、打倒するべき相手でもあったパトリシアさんに挑戦することに、何の疑いも持たなかった訳で。そんな色々な思いをせながら挑もうとしていたパトリシアさんはと言えば、たった一人の女性に、それも僅か数分の内にあっさりと負けてしまった訳で……。


 そんな訳で、私自身まだ目の前の現実を受けれることはできていないのだけれど、いずれにせよ、この状況を説明する為にも、まずは件のパトリシアさんたちを一瞬で倒してしまった目の前の女性について語らなければならないのでしょう。そう、それは今から二日前のこと――。

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