モガディシュ 脱出までの14日間 ー2022.7.22.
監督:リュ・スンワン
「社会派で、ハードアクションなのに人情もの!」
お国柄か、見るたびに「熱いな」と感じていた韓国映画の「熱さ」が
アフリカという舞台においては丁度で違和感なかった。
しかも内戦を舞台に、混乱からの脱出を描いた「ブラックホークダウン」さながらのハードアクションかつ、仇同士であるはずの北朝鮮と韓国大使館員らが協力、共に現地を脱出する人情劇であり、社会派という欲張ったジャンル構成に驚く。
それこそ韓国だから可能なオリジナルブレンドだとしか思えず、
あんばいには近年めざましい韓国映画の勢いをまざまざと見せつけられたような気分だった。
それでいてちょくちょく笑えるところもあり、
とにかくラストが切ない。
期待していたが、期待以上でまさにグッジョブの良作だった。
また、格別に二枚目、美女、というわけでもない、
どこかにいそうな、しかしながら演技力確かな俳優陣の存在感もいい。
(見てきた韓国映画は「家族」がよく登場する。そのありふれたモブ感がいつも絶妙だなぁと思う)
果たして日本映画で他国の紛争など舞台に
物語を展開できるだけの胆力があるのか。
内戦の迫力や、物語のスケール感に差をあけられたなぁと思いつつも
拍手を送りたい上映終了直後だった。
本作はまさに韓国だから描けた作品で、韓国×北朝鮮ものはまさに独自のジャンル、強みで間違いない。
これを個性、ととらえるのはいささか雑なものいいだとしても、環境や経験として分解した時、間違いなく個人の持つ個性に相当するものだと考える。
物語を書く時、どうしても眩しいばかりの他者の作品に惹かれて、影響されて、あんな物語を書きたいなどと追いかけてしまいがちだ。だがそれこそ皆が考えるところで、たとえニーズがあれども競合数多。似たり寄ったりと埋もれる覚悟が必須なレ―スにほかならない。
勝ち抜いてフライングゲットも勇ましいが、時には自分にしか書けないまさに本作のような独自の体験、経験、環境を踏まえたものに挑戦してみてもいいと思っている。
もし確立できたなら、それは自身が二人と存在していないように唯一無二となるだろう。もしその個性が受け入れられたなら、逆に皆がこぞって真似したがる最初のキラ星になるかもしれない。
そんなうまい話はそうそう起こらないとしても、誰ともかぶることのない自分だけの物語としてひっそり暗闇で輝き続けることこそ悪くないと思っている。
我が物語、ここにあり。
間違いなく自分が書いたと言い切れるのだから、それこそモノカキの至福ではなかろうかと思うのである。
輝く遠方を見つめて追いかけるもひとつ。
地味だろうと、ここにしかない足元を見つめるもひとつ。
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