ザ・ロストシティ ー2022.7.1.

監督:アダム・ニー, アーロン・ニー



「確かに小粒だが良作」


「デンジャラスビューティー」もそうだったが

個性的な女性を演じるサンドラブロックのコメディが好きだ。

そこに「ヒロイン」という飾り立てられ、誇張されることのない自然な女性像を垣間見る。

また、そうあることで説教臭くない

ごく自然体なジェンダーの提案を受け取ってみたり。


本作もインテリ女性と、ベタなロマンス冒険小説を対立させたり、

ヒーローのマッチョは見た目だけで、どこか頼りなかったりと皮肉が効いている。

だからといってヒロインがマッチョ担当というわけでもなく。

どちらかが牽引するわけでもなく、どこかにいそうなごく普通の男女の、

夢のごときステレオタイプな関係とは違った、だからフラットな関係性が印象的だった。

そして、そんな普通の男女でも成り立つロマンスや冒険物語に過剰な過激さが伴うはずもなく、

本作には小学生からでも楽しめる品の良さ、清潔感があった。

だからこそ「理想的」ジェンダーへの提案として受け取れるわけで、

ディズニーっぽいような、とにかくいい仕事してるなと思うしかない。

残念ながら大作とは言い難いが、小粒でも良作、と思える本作だった。


いろいろある中でも女性が脱がずに男性だけがやたら脱ぐというアンチテーゼが、まあ面白い。

ダニエルラドクリフの演技が唯一、作品をサスペンス、

ピリッとしたものに仕上げていたなぁと振り返る。

これまたグッジョブ。



昔は誰も何とも疑問に思わず過ごしてきたジェンダー。

社会における性的役割、だっけか、は近頃よくとりあげられる。

恐らく若い人ほど敏感なのではなかろうか。

テーマに一石投じた書籍や作品も豊富だ。

だからといって一朝一夕に扱えないのがこの手の話題のように感じていて、

これこそ日々、感じている違和感や不満に自覚がないと

思い切り恥ずかしい空振りを披露してしまうのではないかと思うのである。

なにしろただ中の人にとってはとても切実な問題だろうから、

フリだけのニセモノはあっという間に化けの皮が剥がれてしまう、としか想像できない。

証拠に、描かれ方がステレオタイプ、思い込みが屈辱的だということで

LGBTの人々から不満が出たという作品も少なくない。

堪忍袋の緒が切れたから、昨今、上がる声がことと次第を表面化させてきた。

甘い知見で二の舞などと失礼極まりないほどに手強く、

手が出せるのは渦中にいるか、堪忍袋の緒が切れた実感を持つ者でなければうまく裁けない。

それがこのテーマである、と考えるのである。

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